第5話 隻眼の排気音
人質の少女が惨殺されてから…ゆっくりと立ち上がるレイコ。
「さ…茶番はソコまでよ。」
「バ、バレたかぁ〜」
切り落とされた女の子の首は、喋りながらゴロゴロ回転し…隠れている3人の足下へ。
ピカッ!
巨大な一つ目が光る。
「コイツ、ベムやで。バブ」
「いや、ただの一つ目小僧…てか、幼女ね。」
レイコは冷静に、その頭を足で踏みつけ…腰の斧を取り出す。
「姉さん、危ない!」
「えっ?」
ドガ〜ンッ!
爆発する、一つ目の頭部…ゼノの警告虚しく、片足を吹き飛ばされるレイコ。切断面から大量の血を流し、ひざまずく。
「コラッ!ウチのレイコちゃんに何すんねん!」
バイカーの集団に立ち向かうリカ…彼等が一斉にヘルメットを外すと、一つ目の怪人が並んでいた。
シュルルルルル〜!
手をタコの脚の様に伸ばし、リカを動け無くする。
「こないだのムカデと、かぶってんやん…バブバブ。」
走り出したバイクに乗った奴等は、その腕を刃物に変形させ…動けないレイコとリカを切刻む。
バスバスッ!プシャ〜!
レイコから飛び散った血が、ゼノにかかる。
ピカン…
彼の胸元に、敵とは比べ物にならない…もっと大きな一つ目が光る。
傷付きながら、テレパシーでリカと会話するレイコ。
(コイツら、兄さんの手下かしら?)
(せやな、死霊…エビルの気配感じるわ。)
(残忍は、こんな数の亡霊をどうやって死霊化したのかしら?)
(多分、バイク音やな…それを媒介にして、この大人数を邪悪化したんやと思うわ、バブ。)
(確かに、この民度の低い街には…)
(簡単に操れる、事故死した暴走族の低級霊が溢れてんねん。)
「リカさんを、離せ…」
グォ゙ォ゙ォ゙〜!ゴロゴロ…ビリビリビリッ!
ゼノを中心とし、台風が起きる。頭の上に雷雲…電流が次々と一つ目バイカーを感電死させてゆく。
「ベアードか…」
リーダーの男が手に持った、最初の子供の胴体を機関銃に変形させて、ゼノを銃撃する…
ズダダダダダッ!!
風圧力で、弾丸を跳ね返しながら…前へと進むゼノ。
「ハッちゃん、お願い。」
意志を持った斧が飛んで来て、触手を切断し…リカを拘束から解放する。
ドサッ…地面に落ちるリカ。
「レイコちゃん、おおきに。愛してるで」
「助けたの、ボクだよ。」
「バブ〜、ウチのお師匠様だ。」
語りかける斧に感動する、おしゃぶり女。
「ほな、いこかバブ…レイコちゃん。」
「まかしときぃ。」
拳精と化したレイコは、五獣を召喚し…瞬時に炎の塊と化したリカを、体内に取り込む。その傷は消え、脚も生えてくる…
「クレインショック…」
大地から現れた巨大な無数の鶴の頭が、バイクごと怪魔達を飲み込んでゆく。リーダーの男、ひとりだけ残して…
「兄さんは何処にいる?」
悪鬼の様なゼノは、男の首を掴み持ち上げると、奇妙な捨て台詞を聞かされる…
「花火始まるぞ〜」
ギュ〜ン!ドッカ〜ン!!
何処からともなく、七色の花火が打ち上がり、その炎が大地を焼き尽くし…証拠を隠滅(生き残りの部下達を殲滅)する。最後の男も自らその攻撃を受け、黒焦げとなる。
「ふせろ…バカ。」
アイデンティティを持たない傀儡を、憐れむゼノ。
「金、た〜まやぁ〜!バブバブ」
「リカ…金はいらんて。」
呑気に花火を楽しむふたり…
ヴルルルル〜!
遠くの方で、また別のバイク音が鳴り響く。
「耳障りね…」
「ほな、また殺りに行こか。バブ…ところでレイコちゃん、さっき人質になってた女の子、もしホンマに一般人やったら…どうしてたん?」
「さて、どうかしら…」
「ま…どうでもええわ、バブバブ。」
(サイド:残忍)
俺達が産み出されたのは、薄暗いコンクリートの暗室…何の愛情も無く、機械のパーツの様に生産された借り物の存在。
ゴッドと言うフザケた異名の男、天才科学者いや…魔術師は地下研究室でまず俺、残忍と次に妹のレイコ…最後に弟のゼノを次々と産み出した。(正確には作り出したか…)
「お前達は、新人類だ…生殖によって産み出された、汚れた人類とは違うのだよ。」By:父
(愛の無い存在の間違いだろ…)
俺は、父の実験を次々とクリアし…どんどん何の疑問も無く、強くなってゆくレイコが疎ましかった。
「兄さんには、どんな能力があるの?」
まだ幼かったゼノは、自分の優れた潜在能力にまだ気づいていない…
(今のうちに、潰しておかなければ)
「魔術医療さ…親父と同じな。」
(俺は、ふと思う…愛とは何だ?メディアは、恋愛を基盤としたプロパガンダに溢れている。だが、俺には到底理解出来ない…)
「残忍…おいで〜」
ギュ〜!
助手であり、ゴッドと共にいる…ドリームと呼ばれる聖女が、俺達の母親代わりだった。
「あなた達は神の子ですよ…ボクが、永遠の愛を授けます。」
彼女は、男女の性を越えた存在で…抱きしめられたその胸は、ネットで見るような突起した柔らかい物体では無かったが、何故か安心出来た。
(だからこの感情を越えて、まずはここにいる全員を殺さなきゃ…最期の戦いに勝利する為に。)
「残忍様、思考が破綻してますわ。」
現在時空…俺は、廃墟の中で使役している死霊達に囲まれて、王として君臨していた。その中のひとり…幹部の死霊使い(俺の臓器を分け与えた妖奇)ララが、回想を読み取ってたしなめる。
「ナデナデして…」
彼女に甘えてみたところ…
ボクッ!バキバキッ!
俺の頭頂部を拳で打ち砕き、血まみれの手で首を掴み、その骨を折る…
「ララ…もっと。」




