表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/52

アヤカにエルが嫌癒される(イヤイヤやされる?)



 ようやく泣き止んで布団の中でぼーっとしていると明人が帰ってきた。あとエルの知らない女の子が一緒だった。


「明人さん、だ、大丈夫!?」


 明人はボロボロだった。全身傷だらけだったが、特に右腕の傷が酷かった。


「というか、千切れかかってるじゃない!? うわぁ、気持ちワルぅ」


 アヤカが顔をしかめてそう言った。その言い方はどうかと想いエルはアヤカを睨んだ。


 シャツを破って止血しているらしく血はあまり流れていないし、明人が平気そうな顔をしているがかなり重傷のようだった。元通り治るとはとても思えないくらいひどい。


 明人は死神と戦って危うく逃げ帰ってきたらしい。


 本町以外で死神と戦う事の無謀さを聞いた。明人が死神と遭遇したのは実は自分が明人の運気を吸った為ではないか。そうエルは思った。


 やはりこのままでは明人の運気を吸い尽くしてしまい、明人を殺してしまうに違いなかった。


「ごめんなさい」


「ん?」


 エルにいきなり謝られた明人がキョトンとする。エルのせいで死にかけたかも知れないとは明人は思ってはいない様子だ。エルは胸が痛んだ。


 明人と一緒にいたいが、明人を死なせたくない。もし自分がいなくなれば明人が死ななくてもすむなら、自分は明人から離れたるべきだとエルは思った。


 エルは決心した。


「明人を見てやってくれ」


 小さな女の子は機嫌悪そうにアヤカにそう言って出て行った。


「えー、やだよ。ちょ、ちょっと待ってよ」


 アヤカが呼び止めても女の子は無視して出て行った。


「弟くん、鬼姫を怒らせた?」


「からかった」


「いまの、もしかして鬼姫さん……なの?」


「そうだよ。あっそうか、エルは気を失ってたから分からなかったんだ……」


 鬼姫が復活した時にエルは気を失っていたから、言われるまで今の小さな女の子が鬼姫だとは気づかなかった。


 あの姿をからかったら鬼姫なら本気で怒りそうだった。


「まあいいわ。こっち来て」


 アヤカは明人の腕を掴んで口元に近づけていき、千切れないように気を付けながら咬んだ。そして止血しているシャツの切れ端をほどくと、アヤカの口の中に血が流れ出す。アヤカはそれを飲んだ。


 アヤカがちょっと涙目になりながら明人の血を飲むのを、エルは呆然と眺めた。


「あっーまず。このお礼はもう、弟くんのはじめてをもらうしかないよ。それか疫病神のはじめてでもいいけど、どっちくれる? もちろん両方でもオーケーだよ」


「姉さま、ぼくはどう答えればいいの?」


「どちらもどうぞって応えればいいんだよ。あのねぁ、傷を治すのって結構大変なんだよ。その対価は当然の権利だと思うんだけどね。あっ、それじゃはじめて同士のエッチを間近で干渉するってのはどう?」


 アヤカが明人を見て、エルを見てにやりといやらしく笑った。


「い、や、で、す」


 明人は少し赤くなりながらハッキリ拒絶した。


「素直な弟くんの方がかわいいよ」


 明人の頭をかるく撫でてから、明人の服を全て脱がせた。近くの椅子に明人を座らせるとアヤカは自分の服を脱いで裸になる。


「ちょっと、一体何をするつもりなの?」


 エルはビックリしてアヤカに向かってそう言った。するとアヤカが近づいてきてそのまま抱き締められた。


「疫病神さん、弟くんのケガを治すためにこれからちょっとエッチいことするけど、我慢してね。でも心配しないで大丈夫、私が好きなのは疫病神さんだけだよ。これはあくまで治療だから。あっ、でも……、嫉妬した疫病神が私の事を責めるってのも、ちょっとよいかも。でへへ」


「姉さま、エルはべつに姉さまに嫉妬しないから」


「そうなの? 疫病神さん私のこと、きらい?」


 いままでの明るい表情がみるみるきえていく。アヤカは両肩をガクッと落とし沈んだ顔をしてエルの方を見つめてきた。エルはアヤカの目に涙が浮かんでいるのを見てびっくりしてしまった。


「いえ、嫌いじゃありません」


 ニヤリ。


「ありがとう。あとでじっくり愛して、あ、げ、る」


 アヤカはノリノリだった。エルに方に満面の黒い笑みを見せてから明人の膝の上にまたがっていく。そのまま明人の胸に自分の胸を密着させて明人を抱き締めて、キスをする。


「!?」


 エルの胸がドクンと鳴った。


 思わず駆け寄ってふたりを離そうとするが、その拍子に明人がよろめいてバランスを崩して椅子が倒れた。それでもアヤカは明人を抱き締める手を離さずに、ふたりは密着したまま床に落ちた。


 その状態でもアヤカは明人に覆い被さりながら明人の唇を貪り続けている。


「ちょっとアヤカさん、止めてください」


 しかしアヤカの体が光り始めて、エルは動きを止めた。その光に当たった明人の傷がどんどん治っていくのが分かった。その光はゆっくりと大きく広がっていき、やがて明人を覆っていった。


「あーぁ。何か力が抜けていく感じが気持ちいいわ。……ねえ、このまま弟くんの童貞を奪っても良い?」


「ダメです」


 明人が即答する。まさか意識があるとは思っていなかったのかアヤカが舌打ちした。


「別に血は繋がっていなし、明人の事は大好きだから私的には別にオーケーなんだけど」


「……」


 まぶしくて明人の表情が分からないが、なんとなく呆れているような気がする。あと少し怒っている感じだった。


「あ、でも勘違いしないでね? 別に弟くんの事を好きなんじゃないんだから。んっ?、そんなことないか、私は弟くんの事は大好きだよ。でもね、私は女の子の方がもっと大好だよ。ただ男の人とエッチするんだったら弟くんと決めているけどね、どうお姉さんの処女、弟くんにだったら、いつでもあげるよ」


「……姉さま、いりません」


 明人の溜息が聞こえた。


「ひどい。私が癒すのは女の子限定なのに、弟くんだから特別に治して上げているのに。……もしかして弟くんは男の子が好きなヒトなの?」


 明人が、ばかばかしいと首を振った。エルはアヤカのエロさ加減にあきれた。やはりついて行けない。


 ……。


 でも、これでいいのかも知れないとエルは思った。


 本町の人達はこんなノリでないと、やっていけないのだろう。少なくとも本町を救う為に矢継ぎ早に試練が降り掛かってくる状態を十歳から続けていたら自分だったら心が折れてしまう。だから陰陰滅滅しているより、あからさまに明るく振るまった方が遙かにいい。自分みたいに陰々滅々していたら、いつか心が挫けてしまうだろう。


 若干羨ましそうに、嫌そうに微妙な顔で見ていると、突然腕を掴まれた。


 エルに引っ張られて光の中に入ってしまう。


「やっぱりエルも一緒に楽しみましょう」


 アヤカだった。抱き締められる。


「やめてください!!、あたしは遠慮します」


 エルは悲鳴をあげたが、心がとても暖かくなっていった。


 ……あぁ。みんなとても仲がよい。


 エルは少し力をもらった気がした。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ