第一話 三度の飯より算盤を弾く
丸メガネを掛けた中華マフィア風?の男がヒーローです。
4万字くらいで完結予定です。よろしければ暫くお付き合い下さい。
金鴻商会。それは龍津街の商売を取り仕切っている一家。
主な商売は金貸しと不動産。それ以外に幾つかの商売にも絡んでいる。
金を返せなかったり、家賃が払えない者には仕事を紹介しこき使うという手口が有名だ。
詐欺まがいのことやグレーな商売もやっているという噂で、この辺りでその名を聞かぬものはいない。
現在そこの商会のトップに君臨しているのが周 暁峰だった。
「暁峰様、今月の収入ですが……」
「あぁ、景気悪いねェ。どーしたもんか」
言葉に反してニヤニヤと暁峰する。次の策は考えていると言った風だ。
「ここの土地、買っちゃおうかと思うんだ。上がりそうでねェ。それと造船会社。経営悪化してるけど、買ったらやり方次第で儲かると思うんだよねェ?今の社長センスないとしか思えなくて。これから需要ありそうだし」
ケラケラと笑う暁峰。その様子を見て部下は少し呆れたような笑みをする。
「本当に暁峰様は……追い込まれるとやる気を出すタイプですよね」
「ピンチはチャンス。景気悪い時こそ大胆にやらないとねェ」
暁峰は算盤を肩に担ぎながらケラケラと笑った。
切れ長の目を細めながら。
***
「はァ?結婚?」
中華風の服の襟を緩めながら暁峰は言った。
「叔父さん、今一番楽しい時期なんですよ。そういうのはいいです」
「そうは言うけどね、君。見合いの申し込みがすごいんだ。断る僕の身にも……」
「いいって言ってるでしょ。父さんみたいにクビにされたいですか?」
「……っ」
顔を青くした叔父に「ちょっとやりすぎた」と暁峰は反省する。
この叔父には幼い頃から父親代わりに世話になってきたのだ。
ズレた丸メガネを直しながら、気まずそうに暁峰は言った。
「まァ、一族経営でやってきている金鴻商会としては子供が必要ですから、若い子なら……」
子供を産める女であれば若い方が良いだろう。そう思って言ったことだった。
叔父が喜んで帰るのを見送る。
女より金な暁峰にとって、妻なんて存在は面倒なだけだった。
マネーゲームが楽しくて仕方がないのだ。
「うおっと」
これから外出ということで準備をしようとした時だった、立ちくらみだ。
最近徹夜続きで風邪っぽくもある。
体調が悪いのを10歳年上の側近の梁世安見咎められた。
「暁峰様、お休みになって下さいませ。体を悪くしますよ」
「大丈夫大丈夫。俺身体強いから」
「若い時の無理は元気の前借りです。中年以降が辛くなりますよ」
「説得力あるなァ」
ケラケラとバカにするように笑われた側近だが、慣れているのか何の反応もしなかった。
暁峰も本気で言ったわけではない。彼らのコミュニケーションだ。
「プライベートに私は介入できませんから、奥様でもいれば……」
側近の小言はいつものことなので、暁峰も何の反応も示さない。
「そろそろ行くぞ」
「はい」
胸元に商会のマークが入ったロングコートを羽織りながら、暁峰は打って変わって真面目な顔をする。
空は生憎の雨模様。部下達が黒い傘を差した。
「幸先悪いねェ。これから傘を取り上げるような事しなくちゃならないんだけどねェ」
次回 ヒロインの女の子が出てきます!
※ 子謙→暁峰 に直前に変更したので、未変更の箇所があったらすみません。




