第八十三話 蜘蛛たちとの戦い3
「手負いのくせになんでこんなに厄介なんだよ!」
味を占めたのか、それとも俺の悲鳴で有効だと気づかれたのかは分からないが、巨大蜘蛛は俺のすぐ横に糸を吐き出して、さっきと同じようにものすごい勢いで突進してくる。
ここで狙ってもいなされるフィリスさんじゃなくて、後衛で糸を無効化させる俺を狙うあたり、やっぱこいつは頭が回る!
「チッ!これ、さっきよりも面倒になったんじゃないか!」
なんとか避けて、次もどうせ俺のことを狙うのは考えるまでもなく分かりきっているから広めに防御魔法を張る。
そして、向こうが糸を吐いてほんの一秒もないようなタイミングで防御魔法を解除した。途中で移動するための壁がなくなった巨大蜘蛛は、勢いに乗り切れず地面に滑りながら倒れ込んだ。
追撃を入れようとしたら、フィリスさんが上空から現れて脳天に剣を突き刺す。
頭を貫かれたはずの巨大蜘蛛は頭上にいるフィリスさんを振り払う。致命傷のはずなのに、いや瀕死で命が消えかかっているからこそか、骨の芯まで響くような咆哮を上げた。
「頭を刺されても死なないとか不死身かよ!あれ!」
空から落ちてきたフィリスさんが着地して、
「いえ、硬すぎて手ごたえがなかったので、致命打とはならなかっただけだと思います」
「本当に厄介な奴だ……」
それこそ今まで出会ってきた魔物の中でもダントツで、と心の中で呟いたら、大量の足音が聞こえてきて、百匹以上はいそうなデカ蜘蛛の群れが、さらに上の方からも糸を張って続々と現れる。
多すぎだろ!……時間を掛けすぎたか。
逃げるくらいなら出来るだろうけど……。ここまで弱らせたんだったら、
「一番大きいのをここで仕留めておきたいですね」
「うん。逃がさないように目を光らせておくから、フィリスさんは雑魚の方をお願い」
デカ蜘蛛の処理はフィリスさんが安定していて、狩る速度も速い。それに対して俺は勝てなくはないって程度だから、糸に対して対抗策がある分、巨大蜘蛛を逃がさない役割を担った方が良さそうだからそう提案した。
「分かりました」
返答を聞いた俺は、足止めするのは大前提としてどうやって仕留めようかと頭の中で組み立てる。
いくらフィリスさんとはいえ一匹もこっちに通さないのは難しいだろうから、デカ蜘蛛を対処しながら巨大蜘蛛を相手する場合厳しそうだと思っていたら、前に蜘蛛と出くわしたときに囮になってくれた黒い巨鳥が上空からデカ蜘蛛達の群れに突っ込んだ。
黒い巨鳥はあの時と同じようにこちらの味方をしてくれるみたいだ。蜘蛛たちと敵対しているという方が正しいのかもしれないが。
黒い巨鳥とフィリスさんでどんどん数を増やして現れてくるデカ蜘蛛達を倒していって、増えるペースよりも減るペースの方が若干早いように見える。
ならばと、巨大蜘蛛を探すことに専念し、糸を使って逃げようとしているところを見つける。風魔法を使って糸を切り地面に落とすと、起き上がってこっちを向く。きょろきょろと辺りを見回し、改めてこっちを向いた巨大蜘蛛は魔法陣を大量に発動させ、そこから糸を吐き出してきた。
「ウィンドスライス」
視界を覆いつくすような糸を風魔法で切り裂くと、巨大蜘蛛が目の前にまで迫っていた。
驚く暇さえなく巨大蜘蛛の防御魔法と自分の防御壁がぶつかり合い、向こうの突進に抗いきれなくて突き飛ばされてしまう。
逃げるために糸を吐いたと思ったのに突っ込んでくるとか……。周りの様子を確認してからの行動だったし、邪魔が入らないと踏んで攻めてきたのか?
だとしたら、俺一人だったら仕留められるって考えられているってことか。……舐めてんな。
でも、防御魔法を突破できないのも事実だから……。
「本当に良く頭が回る奴だ」
巨大蜘蛛は再度同じことをしてくるのだが、こっちとしては何とか対処することしかできない。
突っ込んでくるための糸を切ろうにも、まず目の前に迫ってくる糸を対処しなきゃいけないからだ。
「このままだとフィリスさんが助けにくるまで耐えるしかないけど!」
魔力の余裕はあるのだが、防ぐときにくる衝撃が体に負荷がかかる。だから、助けがあるまで凌ぐものつらそうだと考えていると、目の前にある川が視界に入った。
もしかして、この場所って……。
俺はまた巨大蜘蛛の突進を防ぎ跳んで、
「ソフティンソイル!」
巨大蜘蛛の着地した地面が崩れ落ちる。
ただ、巨大蜘蛛が川に落ちたぐらいでやられてくれるような奴じゃないことは分かっているから、
「イグニッションバレット!」
川から飛び出てきた巨大蜘蛛に魔弾を放つ。
ただ、しっかりと防御魔法が張られていて、でも、そんなことは織り込み済みだったから、
「イグニッションバレット!!」
さらに魔弾を同じところに連発して、巨大蜘蛛の防御魔法を割った。
止めの一撃を入れようと思っていたら、巨大蜘蛛の頭に剣で刺されたような穴があって、
「おわれぇぇぇえ!!!」
穴のある部分に向けて、魔弾をぶち込んだ。
巨大蜘蛛は頭から赤色が混じった透明の液体が噴き出し、しばらくの間足をジタバタさせるがどんどんそれも鈍くなり、動かなくなった。
「セオドアさん、やりましたね」
「はぁ、はぁ……。うん」
肩で息をしながら、顔にかかった液体を腕で拭った後に頷いた。
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