第八十二話 蜘蛛たちとの戦い2
「そろそろか?」
デカ蜘蛛達の増援が多いのでまだまだ全滅とは程遠いが、着実に数を減らしていくと、予想通り巨大蜘蛛が上から降ってきた。
糸を使って上から降ってくるのは予想外だけど……。相変わらず、巨体の癖に動きが俊敏なやつだ。
巨大蜘蛛の厄介さを改めて再確認しながら、計画通り現れてきてくれたことによる高揚感と少しの不安が渦巻く。
「引いてください!ソフティンソイル!」
フィリスさんが宙に跳び退くのを確認し、一応師匠である白髪のおっさんから教わった農業とかで使われるらしい、土を柔らかくする魔法を使う。
魔法を唱えた後、蜘蛛たちが立っていた地面が崩れた。
「上手くいきましたね」
「うん」
魔法で川の上に滅多なことでは崩れないような地面で覆い、フィリスさんにその場所まで誘導してもらって、地面を柔らかくして川に落とす。
川があった場所にいきなり地面があって違和感を持たれないだろうかとか、いくら強固な地面にしたからと言ってデカ蜘蛛たちの体重に耐え切れずに巨大蜘蛛をはめられるんだろうか、みたいな不安があったからこそ、上手くいったことの達成感は大きい。
だけど、巨大蜘蛛が川から飛び出てくるのが見えて、
「まあ、そんな簡単にはいかせてくれないよね」
「しかし、陸地に上がってくる蜘蛛たちは数えるほどしかいませんよ」
ここで暮らしていた前任者のノートに、デカ蜘蛛達には二種類いて、地上で活動するタイプと泳ぎが得意なタイプがいると書かれていた。
だから、泳げないデカ蜘蛛を振るい落とすための作戦ではあったのだが、もしかしたら巨大蜘蛛にも通用するんじゃないかと期待もあったんだけど……。
巨大蜘蛛が怒りを表すかのように咆哮を上げた。
「逆に怒らせちゃったか」
「いえ、上々です。これならやりやすい」
再び突っ込んでいくフィリスさんは剣を片手に巨大蜘蛛を斬りかかる。
俺はそのすぐ後、四匹いるデカ蜘蛛達へ魔弾を放った。
フィリスさんに気を取られていたのか、デカ蜘蛛達は防ぐこともせず起き上がってこない。
倒したのを確認して、フィリスさんと巨大蜘蛛の戦いに目を向ける。
フィリスさんが巨大蜘蛛に斬りつけるのだが、防御魔法で防がれてしまい届かない。巨大蜘蛛の踏みつけに対してはフィリスさんもしっかり避ける。
このままだと体力勝負か、ミスをした方が負けという戦いになりそうだけど。
「プロテクト!」
巨大蜘蛛が攻めてくるタイミングで、フィリスさんに援護をすることを伝えるという意味も込め詠唱して防御魔法を張った。
巨大蜘蛛は防御魔法に阻まれ、フィリスさんがそんな隙を見逃すはずもなく、足を一気に三本も斬り落とす。
巨大蜘蛛は足がなくなりバランスが取れなくなったことで、悲痛な声を上げながら地面に倒れ込んだ。
最大火力の魔法ならぎりぎりフィリスさんの一撃を超えられるかもしれないけど、使うのに時間が掛かる上にフィリスさんの一撃にちょっと威力が上乗せしたものが使えるだけ。
だったら、フィリスさんに攻めてもらって俺が防ぐ方がいいっていう話になったんだけど……、上手くいったな。
流石に足がなくなって自由には動けなさそうだからもう勝ちだろうと思っていたら、巨大蜘蛛はおしりから糸を吐き出して壁に貼り付け、宙に跳ぶ。
逃げられる!そう思った瞬間、俺たちに向かって包囲する形状の糸を吐いてきた。
「ウィンドスライス」
風の刃を生み出す魔法を放ち、巨大蜘蛛が吐いてきた糸を切り裂く。
これもノートに書いてある通りだったな。
蜘蛛の糸は熱に強く、強度もあり、刃物で切ろうとしても粘着して上手くいかないといった特性を持っているのだが、風魔法には弱いと記述されていた。
強風が吹いたら蜘蛛の巣を張ることは難しいだろうが、このダンジョンの特性上、風がないため機能するとも。
俺は巨大蜘蛛が移動するために使っている糸を風魔法で断ち切る。
切ってもどうせ、糸を別の壁に貼り付けて飛び回るつもりなんだろうと思っていたら、
「ちょ!?」
巨大蜘蛛は全身に防御魔法を張ってこっちに向かって落ちてくる。
思いっきり足に力を入れて地面を蹴った後、ドシーンという地面に隕石でも落ちたんじゃないかと思わせる振動と風圧が押し寄せた。
ちらりとフィリスさんを確認すると、しっかり避けている。自分が無事だったんだから当然ではあるのだが。
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