第六十三話 城の中
城に入った時のエントランスは石造づくりの雰囲気がある感じだったに、少し歩くと雰囲気がガラリと様子が変わって、床が大理石になり、壁は肌色の木で出来たおしゃれな現代オフィスのような通路に様変わりしていた。
なんかなぁ……。
「ここが会議室となります」
案内人が会議室とやらの扉を開くと、長方形の木製テーブルとその質素だけど丈夫そうな木製の椅子、明かりはシャンデリアといったような豪華なものではなく、最近普及されてきた魔電球が吊るされていた。
王国の王宮は無駄に天井が高かったのだが、この会議室は目算で五メートルほどしかない。
中世とかの王宮みたいなところは、色々と無駄に豪華にするイメージがあるのに、この部屋はただ利便性を求めた現代の会議室という印象を受けた。
「お入りください」
俺たちはお邪魔しますと言いながら部屋に入ると、ブルーな肌色をしたイケメンが椅子の前で立っていた。
皇帝陛下がここにいるって言っていたけど、この人がそうなの?
……いや、そんなわけないよな。
耳が魚のひれみたいになっているから、そもそも人族じゃないだろうし。
だって、人族以外が皇帝になっているのだとしたら、革命を起こして成功させたとかそういうレベルのことが起きているってことだからね。
「皆様、お越しいただきありがとうございます」
ブルーな肌色をしたイケメンは、いくら礼儀正しい皇帝だとしても、ここまで腰が低いのはありえないだろうってレベルの丁寧なお辞儀をした。
俺はそのお辞儀になるべく答えられるようにと深く頭を下げる。
「貴殿が皇帝陛下なのでしょうか?」
「いえ……そういうわけでは……」
ブルーな肌色をしたイケメンはフィリス様の問いに目が泳いでいた。
なんとなしに案内人を見ると、何かをこらえるようにして口元を押させえている。
「……陛下、そろそろ悪ふざけはやめてください」
「くく。分かったよ。分かったら、そう睨むなって」
案内人はブルーな肌色をしたイケメンにそう言うといきなりスーツを脱ぎだし、金色の振袖が現れる。
「我が皇帝である」
案内人だったものは、腕を組みながらそれっぽい渋めな声色で自分が皇帝陛下だと言い出した。
まあ、ただの案内人ではないんだろうなとは思っていたけど……。
あと、この部屋に入った瞬間にはうすうす気づいていたし。だって、皇帝がいないんだもん。
……他の人はどう思っていたんだろうな。
そう思って見まわしてみると、ポールさんはまさか!といった感じの驚きの表情を、クローディアさんはぽかんと口を開け、フィリス様は若干ショックを受けたような様子だった。
「ええっと、本当にレイ・ラトクリフ皇帝陛下なのでしょうか?」
「うむ、いかにも」
胸を張る豪華な衣装を着た案内人だった者を見て、クローディアさんは右手で頭を抑えた。
こんなのが皇帝陛下なんて、夢あってくれとでも言わんばかりに。
「いやー、みんないい反応をしてくれるねぇ。特にそこの純朴そうな少年とかいい顔してくれたし」
「ぼ、僕ですか?」
「そうそう、きみ」
皇帝は渋い声を作るといった皇帝陛下ロールプレイをもう辞めて、いたずらを成功させた少年のような表情をしながら俺たちの反応を楽しんでいた。
……大丈夫か?この国?
「皆様、本当に申し訳ありません!お詫びというわけではないのですが、こちらのお菓子を差し上げますので!」
ブルーな肌色をしたイケメンがそれはもう本当に申し訳なさそうに謝る。そして、かなり美味しそうなチョコケーキみたいなお菓子をくれた。
こうなることを見越して、事前にこのお菓子を用意していたのか……。
なんとなく、この国が成り立っている理由が垣間見えた気がしたな。
「ありがとうございます。もし、差し支えなければ、お名前をお教えいただけないでしょうか?」
フィリス様がブルーな肌色をしたイケメンにした質問で、確かに名前を聞いていないなと思った。
「そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。私はキース・リンスコット、この国では大臣を務めております」
「キース様……。もしかして、六天将の一柱であるキース様でございますか?」
「一応そういうことにはなっていますけど、私は陛下と長い付き合いがあるだけなので……」
……マジか。
帝国に行くってことで主要人物を覚えさせられていた時に聞いた名前だ。この人が帝国を支えている六天将の一人なのか。
強そうには見えないけどな……。まあ、計略とかみたいな頭を使うことに長けているって聞いているし、戦うのは苦手なのかな?
いやでもなんか、有名人に会えた感があってテンションが上がるな。
しかも、遠慮深いところから常識人感が出ていて、絡みやすそうなのもいいわ。
もうさあ、帝国にきて会ったさっきの美女とか皇帝陛下が軒並み濃すぎるから、常識人枠がいてくれるのはありがたい。
「一つお聞きしたいのですが、王子殿下はどこに?」
「ええっと、それは……」
フィリス様は言いづらそうに口ごもる。
そりゃ、なんていえばいいか分からないわな。
ナンパしたらうまくいかなく、不貞腐れてどっかに行っちゃったなんて。
「あのガキはモイラにからかわれて、どっかに行っちゃったんだよ」
「……は?どういうことですか……?もしかして、あの吸血鬼がまたやらかしたんですか!?しかもよりによって、他国からの来賓である第二王子様に!?」
「……あ、ああ」
皇帝陛下はリンスコット様に肩を揺さぶられながら気圧されているように頷く。
「いやでもどうせ、あのガキ、ただの女好きのわがままだったからいてもしょうがなかったし、問題ねぇよ」
「問題ないわけないでしょ!それと来賓の方をガキ呼ばわりするなんてしないでください!それも第二王子様に!」
「いいだろ別に、あんな奴をどう呼ぼうと……。まあ、どうとでもなるって」
「……ああもう!」
リンスコット様はなんでこんなことになっているんだという感じで頭を抱える。
可哀そうだな……。
何よりも、今の状況を深刻にとらえるべき皇帝陛下が能天気そうにしているのが、なんかもうって感じだわ。
「本っ当に申し訳ありません!なんとお詫びすれば!」
「いえ、お気になさらずに……。その……こちらも、そのモイラ様に第二王子殿下がナンパまがいのことをした結果なので……」
「ナ、ナンパ!?噂には聞いていましたが……。そこまで……」
リンスコット様はもはや絶句していた。
問題児ばっかりでどこから手を付けていいのかと言わんばかりに。
俺とかはぽけーっと行く末を見ているだけでいいけど、リンスコット様は他国の王族に失礼な態度を取ってしまいどうしようとか、重要な会議でいるべき人間がいないとか、注意しづらい相手国の王子様も問題児だとかで、頭の中がてんやわんやしてそう。
……ほんと可哀そうだな。
「……カーディス・シャムロック様は?」
「殿下を一人にしておくことは出来ないと、席を外しております」
「…………そうですか。……過ぎたことを考えても仕方ありませんし、私達だけでも話を進めましょうか」
……強いな。
なんかもう、すぐに立ち直れているという事実が今まで苦労してきたんだろうということがひしひしと感じさせられるな。
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