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第四十三話 突然の誘い


 三×二の答えは何でしょうかといった前世なら小学生で習う退屈すぎた授業を終え、空に浮かんでいた日はほぼ沈みかけていた。

 なんでこんな簡単すぎることをやるんだと思いはするが、文字の読み書きをする授業があるレベルであると考えると、このクラスメイトでの教養的に適正な授業なのだろう。


「あんた、一緒に帰るわよ」


「え?あ、はい。分かりました」


 いつもだったら話しかけられることすらないのに、なんて思いながら返事をした。


 一緒に帰りたいからといった親睦を深めるためという理由ではないことだけは分かるけど……。最近あった重大な出来事と言えば人さらいたちと戦ったことだから、それ関連なのかな?


 教室を出ても特にクローディアさんと会話をすることもなく、何の用事なんだろうと推察しながら廊下を歩く。

 結局、人さらい関連だろうと結論づけたころには校舎をとっくに出ており、なんとなく見覚えはあるような気がするが……、という感覚になる場所にいた。

 もう少し先にいくと、学園と街の境目となる校門が見えてくる。

 校門まで行くことなんて、ここ最近だと人さらいに出会った時の校外演習ぐらいしか機会がなかったから、見覚えがあるけどといった感想を抱いたことに納得がいった。


「外出許可カードはありますか?」


 クローディアさんは前世の高校とか大学にいた用務員のような恰好をした人に話しかけれ、おそらく外出許可さしてくれるのであろうカードを見せた。


「はい、確かに。ではどうぞ」


「後ろにいるのも一緒に通してください」


 用務員のような人はこちらを見てきたので、俺はどうも、とつぶやき頭を下げて小走りをしながら出入り口を抜けていく。


 それにしても、校外まで行って何をするつもりなんだろうか。

 おしゃれなレストランで一緒に食事を取るというわけでもないだろうし……。明日が休日であることを考えると、けっこう遠出だったりするのかな。


 そんなことを考えるぐらいにどこに出向くのかを気になってきていたが、どうせ聞いたところで自分のやれることは変わらないだろうからと、何も言わずにクローディアさんの後をついて行く。


「ついたわよ」


 考え事をしているというのと授業終わりで疲れているのもあって斜め下を向けていた頭を上げると、まもの、と彫られている木の看板が目に入る。


 高そうなレストランって雰囲気の店ではないけど、本当に食事をしに来たの?

 確かにちょうどお腹が空いてくる頃合いではあるけど……。


 店に入ると受付カウンター奥の壁に何の生き物かは分からないが毛皮が飾ってあった。

 クローディアさんは受付に話しかけると、事前に予約をしていたみたいで店員さんに案内をしてもらえることになった。

 案内してもらっている中で店内を見回した限りでは、男性客を多く見かけ、混雑しているわけではないがガラガラでもないといった印象だ。


「こちらになります」


 これまでは長いテーブルの所で並んで食事を取るという形式だったが、店員さんに案内されたのは四つ並んでいる個室の中の一つだった。


「どうぞ、ごゆっくり」


 案内してくれた人はそう言い去っていき、クローディアさんが横にスライドするタイプの扉を開ける。


「お久しぶりですね、セオドアさん」

 

「あ、はい。お久しぶりです」


 絶世の美少女、そんな枕詞をつけても何ら違和感のない銀髪の少女が話しかけられる。


 ……この人の破壊力、久しぶりに見ると凄いな。

 学園に通っている人達って、貴族だったりクラスメイト達とかもお金持ちが多いらしいから結構顔立ちが整っているんだけど、フィリス様はモノが違うわ。


「吾輩たちも久しぶりですな、セオドア殿」


「そうですね、久しぶりですね」


 本来ならば人生に関わり合いになるはずもない美少女の隣には、がっちりとした体格の大男がいた。

 普通であればフィリス様の前では周りにいる人達は霞んでしまうはずなのに、軍人なのではないかと思わせるモーガンさんの存在感の前ではそんなことにはならない。


 ……クローディアさんも美人メイドだし、なんか俺だけキャラが薄くて場違い感が凄いな。


「座ってください、二人とも」


 俺とクローディアさんはフィリス様に言われるがまま、席に着く。

 フィリス様がいたことで今日はクローディアさんが俺に用事があるわけじゃないということになんとなく察しがつき、主人から直接的に話をしなければいけないほどの何かがもしかしてあるのではないかと勘ぐる。


「まずは食事にしましょうか。メニューは私がおすすめの奴があるので、それを頼みますね」


 食事、自分で選ばせてもらえないのか……。


 美味しくなくてもいいからせめて食べられる奴がいいなと考えていると、扉が開いて案内してくれた人が入ってきた。


「ご注文は決まりましたか?」


「はい。アカメジュウノジゴライヤスを四人前、お願いします」


 アカメジュウノジゴライヤス?

 アカメ、ジュウノジ、ゴライヤスってことか?いや、ゴライヤスって何?


 フィリス様が聞いたことのない料理名を注文すると、俺と同じ感想を抱いたのかクローディアさんと目が合う。

 

「かしこまりました」


 本当に存在するメニューなようで、店員さんは聞き返すなんてことをせずに去っていく。


「あ、セオドアさんって好き嫌いってありますか?」


「そうですね……。あるにはあるって感じですね」


 あるにはあるどころか好き嫌いが激しいのだが。

 ……注文したやつがヤバそうだったら、食べられませんってしっかり言おう。


「食べられなさそうだと思ったら、残してもらっても構いませんからね」


「なら、そうさせてもらいます」


 ああよかったぁ、なんて思っていると店員さんが来て注文の品が各人の目の前に並べられていく。

 

 ゴライヤスとか言うごつそうな名前をしたメニューの割には、ただの焼いてある肉だな……。


「ちなみになんですが、アカメジュウノジゴライヤスというのはカエルに似た魔物だそうですよ」


「え、魔物……」


「ええ、それも体長が二メートル程ある背中がイボイボしたカエルらしいですよ」


「イボイボガエル……」


 クローディアさんはものすごく険しい顔をしながら皿の上に載っている肉を見つめる。


 フィリス様、食べる前に満面の笑みでわざわざ元の生物の説明してくれるなんて、凄い親切だなぁー。

 その親切のおかげか、フィリス様とモーガンさんが食事をし始めている中、クローディアさんはナイフとフォークを持ったままにらめっこしている。

 俺も赤い目をしたでかいガマガエルを想像して、食う気が失せているし。

 というか、フィリス様よく食うな。いたずらとして俺たちだけに食わせるだけだったら分かるんだけど、この人、自分で美味しそうに率先して食べるから文句が言いづらい。


「食べながらでいいので、本題に入ってもいいですか?」


「えっと、はい」


 意を決してカエル肉を口に運び、鶏肉みたいだなと思っていたところに、俺に向けてフィリス様がしゃべりかけてきたので返事をする。


 今回集められたのって、この魔物料理を食べたい、食べさせたいというだけじゃなかったのね。

 これはいたずら心だけで人を集めるような人ではないことを安心するべきなのか、それとも別の何かがまだ控えているということを嘆くべきなのか。


「最近、セオドアさんとディアの二人は賊に襲われましたよね。その賊の構成員に獣人と喋るモグラがいることは知っていると思うのですが、ディアの話だとその二人は元人間で薬を飲んだことでそのような姿になったと聞きました。まず、その情報はあっていますか?」


「はい」


「そのことが今、本当なのかどうかということが問題になっていまして。捕らえられた賊たちとその人ではなくなった二人が人間であったという主張をしていて、国はどういう扱いをするべきか困っているようです。それに人間が獣人や魔物もどきになったということ自体がかなり大きな問題ですから、国から直接事情を聴きたいと通達が来ました」


「なるほど……。ちなみになんですけど、どういう形で説明すればいいんですか」


「王都に来てもらいたいとしか聞いてないので詳しいことは分かりませんが、おそらく王城まで行って事情を話すことになると思います」


「……なるほど」


 うえぇぇぇ、めんどくさそう。

 王城ってことは王様と対面しなきゃいけないってことでしょ。

 気づかないうちに不敬なことをしちゃったら怖いし、そこで働いている人とかも偉かったりエリートだったりするだろうから、凄く居心地が悪そう。

 学園で貴族が自分たちのような身分をどういう目で見ているか分かっちゃっているのに、そのさらにやばそうな巣窟とか行きたくない。

 

「行ってくれますか?」


「……はい」


 いくら考えても国からの勅命を断れるわけがないという結論が出てしまうので、全くもって王都には行きたくないが仕方ない。

 

「ちなみに王都には自分だけで行くんですかね?」


「いえ、ここにいる四人で行く予定ですよ」


 流石に俺一人で説明するなんてことをやるなんて話になったら、逃げるかどうか考えるレベルだったからよかった。

 ……というか、クローディアさんは当事者だからついてくるのは当たり前か。

 

「皆さん、食べ終わったみたいですね。どうです、おいしかったですか?」


 扉からガラガラという音が鳴ったと思ったら、店員さんが話しかけてきたみたいだ。


「とても美味しかったです」


「うむ、美味であった」


「あ、はい」


「……おいしかったです」


 フィリス様とモーガンさんはとても満足そうだ。クローディアさんは悔しそうな顔をしているが。

 クローディアさんの心境としては、カエル――さらに言えば魔物の肉だから思うところがあったんだろうけど、全部食べ切ってしまっただけに文句も言えないんだろう。


「お客さんはネムレス学園の学生さんですよね」


「はい、そうです」


「なら、解毒魔法が使えたりするんですか?」


「私は使えますよ」


 解毒できるかを聞いてくるなんて、なんかあったのかなと思いながら、フィリス様の同意に続くようにして俺も頷いた。


「なら、このポイズンスネークの野菜炒めがおすすめですよ!これ、本当に病みつきになるぐらい美味しいんです。ただ、毒があるので解毒魔法や毒に耐性がある方でないとちょっと食べづらいという難点があるんですけどね。まあ、死ぬような毒ではないので大丈夫ではあるんですけど、いかがですか?」


「いらないです!」


 俺とクローディアさんで見事にはハモった。


 妙な心配して損したわ!死なないからって毒のあるものを食おうという発想はイカれてるだろが!

 ……少なくともさ、客にそんなものを進めるなよ。


 心の中でそんなツッコミをしながら、モーガンさんとフィリス様がなんかちょっと残念そうな表情をしていることに、マジかこいつら、と思った。

お読みいただきありがとうございます。


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