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第四十一話 人さらいたちとの激戦6


「これでやれたでしょ」


「ああ、さすがに致命の一撃だっただろう」


 ウォルトさんと俺のことを売った女のクラスメイトがいきなり現れ、まるでさっきの雷が二人のどちらかが放ったような会話をしていた。

 おっさんモグラがいたところを向くと、力尽きたように倒れている茶色い何かがいるのが見えたことで安堵を覚え、全身の力が抜けて地面に座り込んだ。


「大丈夫かい、セオドア君?」


「……まあ、なんとか。その、ありがとうございます」


 恐らく雷魔法で助けてくれたんだろうからとお礼を言う。


「……あの、さっきの雷魔法はウォルトさんが?」


「いや、こんな強力な魔法は僕には使えないよ。やってくれたのは、エリンくんだ」


 え、そうなんだ。結構凄そうな魔法だったから、変人眼鏡強キャラ枠という感じでウォルトさんが使ったのかと思ったけど……。

 俺のことを売った人、エリンさんって言うのか。……よくよく見るとめちゃくちゃ美人だな。

 顔立ちがきりっとしていて、近寄りがたい雰囲気があるから、可愛いというより綺麗と表現するのが適切な感じだ。

 襟元が開いているシャツを着ていて、下はかなり短めのショートパンツを履いている所とか、片側だけ長い髪形で耳が隠れてない方はピアスをつけている所がギャルっぽい。


「じろじろこっち見て来るけど、なんか言いたいことでもあるの?」


「……いや、あんな魔法を使えて凄いなって」


 そりゃ、俺のことを売ろうとしたんだから言いたいことはあるに決まってるのだが、エリンさんがちょっと怖いから角が立たなそうなことを口にする


「何それ。常人の魔力量をはるかに超えてそうなぐらい魔法を連発したあんたが言うことじゃないでしょ」


「……すみません」


 こわ。なんでこんな口調が強いの……。ただなんか、このクールというか凄く近寄りづらいというか理不尽な感じ、なんか既視感があるな……。


 なんかエリンさんとは一緒にいるのは嫌……、疲れたから解散したいなと思っていたことに、おっさんモグラが分断するように作った土の壁があった方向からドゴーンというどでかい音が鳴り響く。

 音が鳴ったほうから土煙が立ち、少しすると大きな穴が空いているのが見える。そして、その穴から子供サイズの獣人を引きづっているクローディアさんが現れた。

 クローディアさんの服装はいたるところ生地が傷んでほつれ糸くずのようなものが出ているので、おそらく激戦だったのだろうと予想できた。


「終わっているみたいね」


「はい」


「……で、あんたたち二人はなんでここにいるの?」


 クローディアさんがけんかを売っているようにしか見えない形でウォルトさんと、主にエリンさんに向けるようにして問い掛ける。


 ……なんか、すげえ嫌な予感がする。


「は?なんでここにいるのって、何?ここに居ちゃいけないわけ?」


「居ちゃいけないという話じゃなくて、逃げた人質たちがここにいるのかって話。……というか、あんた、セオドアのことを売ろうとした奴じゃないの?」


「別に売ろうとなんかしてないけど。私はただ、あの盗賊たちがそこの男を探していたから親切に教えてあげただけだし」


「それが売ろうとしてるって言ってるのよ!!」


 こわいこわいこわい!!

 俺のことで言い争っているはずなのに、なんで俺のことを蚊帳の外にして言い争ってるんだよ!?

 ……話に参加させられた方が怖いからのけ者にされてる方がいいんだけどね。


「あんた、セオドアに謝りなさいよ」


「は?なんで?だって、この盗賊たちがいるのはこいつが元凶なんでしょ。むしろ私たちはこいつがいるせいで捕まったんだから、謝る義理なんてない」


「はあ!?……あんたは黙っているけど、こいつにこんな好き勝手言われていいの!!」


 クローディアさんが俺にそう話しかけたことによって、エリンさんの視線が俺に向く。


 やめてー!!俺を参加させないでー!!

 エリンさんが言うことは理不尽だとは思うけど、そんな理にかなってないことを言っているわけでもないとは思うから。

 どっちかに偏った意見を言ったらどっちかにとてつもない殺気を向けられそうだし、二人の性格からして当たり障りないことを言って茶を濁すこともできなさそう。

 ……どうすりゃいい!?


 ……というか、いま気づいた。エリンさん、なんか既視感があるなと思ったけど出会ったばかりのクローディアさんと似ているのか。

 ……そんなことをとてもじゃないが口には出来ないけど。


「セオドアさーん、クローディアさーん、大丈夫ですかー!」


 居心地がかなり悪くなってきたところに、変声期の迎えてない時期特有の声が聞こえて来たと思ったら、ポールさんとエリザベスさんと武装した大人たちが現れた。


「大丈夫ですよー!!」


 人生で初めてレベルの声を張り上げた。早くこの空気を変えてほしくて。

 クローディアさんはポールさんやエリザベスさんだけじゃなくて、他の知ら居ない人もいるというのもあってか、鬼の形相をそのままに黙る。

 エリンさんもそんな態度を取るクローディアさんをあおるとかもせず、不愛想な表情で黙った。


 助かったぁー。

 クローディアさんとエリンさんに他人がいるところでは言い争わない理性があってよかった、ほんとに。

 エリンさんはクローディアさんが突っかかってこないから、黙っているだけかもしれないけど。


「セオドアさん、クローディアさん、本当に無事でよかったです!!」


「お二人ともよくやりましたわ」


 心から良かったという表情を浮かべるポールさんと何故か上から目線のエリザベスさん。

 エリザベスさんのこの高慢な感じはイメージ通りではあるが。


「君たち、盗賊というのは床に寝転がっている者たちのことか」


 武装した集団の中から中年の男性が一人、こっらに歩み寄ってきた。


「えっと、はい」


「これを君たちが……」


 当たりを見回す中年の男性は驚きを含んでいるように聞こえた。

 まだ中高生ぐらいの子供が、こんなガラの悪そうな一団を片付けたということを考えると当然の反応と言えるのかもしれない。


「それで、今回襲って来た盗賊というのはここにいるので全部か?」


「ええっと……、そうだと思い――」


「ねえ、あの偉そうにふんぞり返っていた奴がいないように見えるけど」


 エリンさんがぶっきらぼうな言い方で俺の喋りを遮る。

 

 ああ!なんか忘れていたと思っていたけど、そういえばそんな奴いたな。


「えっと、あと一人いると思います」


 そう口にした瞬間、いきなり、部屋の一番奥の壁からドンドンと何かを叩くような音が響き始める。

 クローディアさんは獣人となったチェスターという人の首の裾を離し、音がする壁の方に向かっていく。

 そして、壁に思いっきり殴って穴を開けた。穴が空いて見えた先には、この盗賊団のボスっぽい奴が手を痛そうにぶらぶらさせながら間抜けた顔をこちらに向けている姿があった。


「降参します!!命だけはどうか!」


 盗賊団のボスっぽい奴はおびえた表情で主にクローディアさんと俺を見ながら命乞いをする。

 

 ……クローディアさんならともかく、俺にこういう表情が向くのはなんか違うだろってなるな。いやまあ、やったことを考えると当然な反応だとは思うんだけどね……。

 なんかさ、こんないかつい大人におびえたような表情を向けられると化け物って言われているようで、ちょっと傷つくな……。


お読みいただきありがとうございます。


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