「回転の矢」
ロイスはゆっくりと目を覚ました。頭を強く打った衝撃で人格はまるで別人のように変わっていた。穏やかだった少年の面影はなくなり、乱暴な口調で話す新しい人格が目を覚ます。
「いてぇ……。」
ロイスは頭を押さえながら立ち上がった。
「ここどこだよ。」
見渡す限り森だった。屋敷も炎も何もない。
「俺の名前は……ロイス。」
名前だけは思い出せる。しかしそれ以外の記憶がひどく曖昧だった。自分がどこの家の人間なのかも、さっきまで何をしていたのかも思い出せない。
「まぁいいか。」
ロイスは歩き始めた。森を進んでいると突然胸の奥が熱くなる。
ドクン。
右手が勝手に光った。
「何だ?」
一本の矢が現れる。その矢は高速で回転していた。
「へぇ、面白ぇじゃねぇか。」
試しに木へ向かって放つ。
ギュォォォォン!!
矢は凄まじい勢いで飛び、木を貫通した。
「俺は…この力で勝ってみせる」
ロイスは何故かはわからないがバトルロワイヤルの事、能力の事を理解していた。
それから数日間、ロイスは森で生活した。木の実を食べ、川の水を飲み、生き延びた。その間にも何人もの参加者が襲ってきた。
「死ね!」
「悪ぃな。」
ロイスは笑いながら回転する矢を放つ。
矢は相手の武器ごと吹き飛ばし、相手は逃げ出していく。
「弱ぇな。」
そんな生活を続けていたある日だった。
森の奥で一人の少年を見つける。
その少年は美しい顔立ちをした十歳くらいの子供だった。その隣には十七歳くらいの少女がいる。
「新人か。」
ロイスは木の上へ飛び乗った。
「ちょっと遊んでみるか。」
弓を構える。
能力を発動する。
回転する矢が生まれた。
「当たれ!」
ギュォォォォン!!
矢は一直線に少年へ向かう。
しかし。
カキィィン!!
矢は弾かれた。
「……は?」
ロイスは目を見開く。
「俺の矢を弾いただと?」
少年もこちらへ視線を向ける。
その目は驚くほど冷静だった。
ロイスは思わず笑う。
「面白ぇ奴じゃねぇか。」
もう一本の矢を番える。
「今度はどうだ!」
ギュォォォォン!!
二本目の矢も放たれる。
だがその矢も少年によって弾き返された。
ロイスの口元が自然と緩む。
「最高だぜ。」
そう呟くと、ロイスは木から飛び降りた。
少年の前へ姿を現す。
これがサナージュとの最初の出会いだった。
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