「止めろ」
ゼルクルスが一直線に飛ぶ。
空間を裂きながら。
誰よりも速く。
誰よりも強く。
「ゼルクロノス!!」
叫び声が響く。
だがゼルクロノスは笑っていた。
「来るのか」
その声は異様なほど落ち着いていた。
ゼルクルスは拳を握る。
「目を覚ませ!!」
能力が発動する。
吹き飛ばし。
どこにいようと。
どれだけ強かろうと。
相手を吹き飛ばす力。
ドゴォォォォン!!
衝撃が直撃した。
空間が捻じれる。
次元が軋む。
戦場全体が震える。
ゼルクロノスの身体が後方へ弾かれる。
だが。
それだけだった。
「なに」
ゼルクルスの顔が固まる。
吹き飛んだはずのゼルクロノスが。
その場で止まった。
ゆっくりと顔を上げる。
「効いたぞ」
そう言った。
本当に効いていた。
だが。
傷はない。
何一つ。
「でも」
ゼルクロノスが笑う。
「それだけか」
次の瞬間。
姿が消えた。
ゼルクルスの目が見開く。
速い。
そう思った時にはもう遅かった。
ゴン!!
腹部に衝撃。
ゼルクルスの身体が折れ曲がる。
「がっ!!」
吹き飛ぶ。
何億キロ。
何兆キロ。
距離など意味を失うほど。
彼方まで。
だがゼルクルスも強者だった。
無理やり身体を止める。
「クソッ!!」
血を吐く。
その時だった。
戦場全体から攻撃が飛ぶ。
無数のゼルクロノス。
誰も諦めていなかった。
光線。
重力。
次元断裂。
空間圧縮。
ブラックホール。
あらゆる能力が殺到する。
ゼルクロノスは振り返った。
「邪魔だ」
片手を上げる。
その瞬間だった。
全ての攻撃が止まる。
空中で。
まるで時間が停止したように。
「は?」
誰かが呟く。
そして。
握る。
グシャァァァ!!
攻撃そのものが圧縮される。
空間ごと。
能力ごと。
まとめて。
消滅。
戦場が静まる。
誰も理解できなかった。
ゼルクロノス自身も理解していなかった。
ただ。
できた。
それだけだった。
身体の中から力が溢れる。
無限に。
どこまでも。
「はは」
笑い声が漏れる。
「ははは」
止まらない。
「すごいな」
ゼルクロノスは空を見る。
宇宙を見る。
全てが小さく見えた。
自分より。
弱く見えた。
ゼルクルスが戻ってくる。
傷だらけで。
それでも立っていた。
「ゼルクロノス」
低い声。
「もうやめろ」
ゼルクロノスは答えない。
「その力はお前を壊す」
答えない。
「聞いてるのか」
沈黙。
そして。
ゼルクロノスが口を開いた。
「力が欲しかった」
ゼルクルスの動きが止まる。
「俺はずっと」
ゼルクロノスの拳が震えている。
「力が欲しかったんだ」
被害者たちの顔が浮かぶ。
自分が殺した者たち。
失ったもの。
救えなかったもの。
全部。
全部。
全部。
「だから」
瞳が揺れる。
「もう誰にも負けたくない」
ゴゴゴゴゴゴゴ。
エネルギーが噴き上がる。
宇宙が震える。
次元が軋む。
周囲のゼルクロノスたちの顔色が変わる。
「まずい」
「エネルギーが増えている」
「まだ上がるのか」
ゼルクルスも察した。
嫌な予感だった。
本能が叫んでいる。
逃げろと。
だが。
もう遅かった。
ゼルクロノスの身体から無数の光が伸びる。
それは光ではなかった。
触手のような。
エネルギーの奔流。
そして。
最も近くにいた一人へ触れた。
「な」
そのゼルクロノスの身体が崩れる。
粒子になる。
エネルギーになる。
そして。
ゼルクロノスへ流れ込んだ。
静寂。
誰も動けなかった。
ゼルクロノス自身ですら。
「今」
呟く。
「何をした?」
だが答えは分かっていた。
身体が理解していた。
吸収。
それだった。
そして次の瞬間。
周囲のゼルクロノスたちが一斉に後退した。
恐怖していた。
初めて。
戦場にいる全員が。
同じ感情を抱いていた。
目の前にいるのは。
もはや仲間ではない。
敵でもない。
怪物だった。
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