第二十章 南蛮勢力の反撃
安土城の政庁に、長崎からの急使が駆け込んできた。
「殿――南蛮船が、長崎沖に集結しております!
その数、十隻以上……!」
柴田勝家が目を見開いた。
「十隻……!?
交易船ではなく、武装船か」
使者は震える声で続けた。
「はい……大砲を備えた“カラック船”が複数……
さらに、スペインの“ガレオン船”まで……
まるで、戦の準備をしているように……!」
政庁の空気が一気に張り詰めた。
丹羽長秀が低く言う。
「殿……南蛮世界が本気で日本を屈服させに来ております」
信忠は静かに立ち上がった。
「……ついに動いたか」
■南蛮世界の会議
その頃、ルソンのスペイン商館では、
ポルトガル商人・スペイン総督・イエズス会宣教師が集まっていた。
「日本は危険だ。
鉄砲を自国で作り、硝石を秘匿し、
アジア諸国と同盟を結ぶとは……」
「日本がアジアの中心になれば、
我らの交易網は崩壊する」
「織田信忠は、信長以上に厄介だ。
このままでは、日本が南蛮世界を支配する側になる」
「日本を従わせねばならぬ。
武力で圧力をかけるしかない」
彼らはついに“武力による威圧”を決断した。
■安土城の軍議
安土城の政庁では、重臣たちが集まり軍議が開かれていた。
勝家が言う。
「殿、南蛮船は大砲を備えております。
日本の船では太刀打ちできませぬ」
利家が続けた。
「陸戦なら勝てますが、海戦は……」
信忠は首を振った。
「海で戦う必要はない。
南蛮世界は日本を脅すために船を集めた。
だが、上陸する気はない。
彼らは日本の陸軍力を恐れている」
長秀が頷いた。
「殿……では、どうされます」
信忠は静かに言った。
「南蛮世界は“武力で脅せば日本は屈する”と思っている。
ならば、屈しないことを示すだけでよい」
勝家が息を呑む。
「殿……まさか……」
信忠は地図を指差した。
「長崎に軍を送る。
ただし、戦わぬ。
港に堂々と布陣し、
『日本は脅しに屈しない』と示す」
利家が驚いた。
「殿……それは、戦より難しい策にございます」
信忠は微笑んだ。
「だからこそ、我らがやる」
■長崎の対峙
数日後、長崎の港には織田軍一万が整然と布陣した。
槍隊、鉄砲隊、騎馬隊――
陸戦なら南蛮軍を圧倒できる精鋭だ。
港の向こうには、
大砲を備えた南蛮船十数隻が並んでいた。
南蛮人たちは驚いた。
「日本軍が……逃げない……?」
「大砲を向けているのに、怯えていない……?」
「これは……脅しが通じぬということか……?」
織田軍は一歩も動かず、
ただ静かに港を守っていた。
その姿は、南蛮世界にとって“恐怖”だった。
■信忠の言葉
信忠は長崎の丘に立ち、南蛮船を見下ろした。
「南蛮世界は日本を脅しに来た。
だが、日本は屈しない。
日本は日本の国だ。
アジアの中心だ。
南蛮の植民地にはならぬ」
その言葉は、長崎の風に乗って港へ広がった。
南蛮船の代表が叫んだ。
「信忠殿!
日本は南蛮の保護下にある!
従わぬなら、砲撃するぞ!」
信忠は静かに言った。
「撃てばいい。
撃てば、南蛮世界はアジア全土を敵に回す。
琉球も、シャムも、ルソンも、朝鮮も、明も――
日本の同盟国だ」
南蛮人たちは息を呑んだ。
「……アジア全土を敵に回す……?」
信忠は続けた。
「日本は孤立していない。
南蛮世界こそ孤立している。
それを理解するなら、交易を続けよう。
対等な国として」
南蛮船は沈黙した。
そして――
一隻、また一隻と帆を上げ、長崎沖から離れていった。
南蛮世界は、日本を脅すことができなかった。
■信忠の決意
長崎の港を見下ろしながら、信忠は静かに呟いた。
「父上……日本はもう、南蛮に怯える国ではありません。
日本は世界と対等に渡り合う国です。
これが、私の天下です」
波が静かに寄せ、
長崎の港は新しい時代の始まりを告げていた。
南蛮勢力の反撃――
それは、日本が“世界の中心へ進む”ための試練だった。




