第十六章 四国・九州の制圧
山崎合戦から一年。
織田幕府の支配は畿内・東海・北陸・西国へと広がり、
日本はかつてないほど安定した姿を見せ始めていた。
だが――
四国の長宗我部元親、九州の島津義久。
この二つの巨大勢力が、なお独立を保っていた。
信忠は安土城の政庁で地図を広げ、静かに言った。
「四国と九州を治めねば、日本は一つにならぬ。
だが、戦で従えるつもりはない。
戦国の終わりは、戦で作るものではない」
柴田勝家が頷いた。
「殿……長宗我部も島津も、戦えば強敵にございます」
信忠は微笑んだ。
「だからこそ、戦わずして従える」
■四国:長宗我部元親への一手
長宗我部元親は、四国統一を成し遂げた稀代の名将。
信長も一目置いた男だ。
信忠はまず、堺の豪商・今井宗久を使者として四国へ送った。
宗久は元親の前で、織田幕府の政策を丁寧に説明した。
「元親殿。
織田幕府は湊を整え、街道を繋ぎ、日本を一つの市場にしようとしております。
四国が織田幕府に従えば、瀬戸内の物流は倍増し、
南蛮貿易の利益も大きく増えるでしょう」
元親は静かに宗久を見つめた。
「宗久殿……信忠殿は、信長殿とは違うな。
戦ではなく、国を動かすお方だ」
宗久は深く頷いた。
「元親殿。
四国が独立を保つより、織田幕府と共に歩む方が民のためになります」
元親はしばらく沈黙し、やがて静かに言った。
「……信忠殿に従おう。
四国の民のためだ」
四国は戦わずして織田幕府の支配下に入った。
■九州:島津義久への一手
島津家は九州最強の軍事力を誇る。
信忠は軍を動かす前に、まず“経済”を動かした。
「宗久、九州へ鉄砲を売れ。
ただし、火薬と硝石は売るな。
島津家が鉄砲を使うほど、織田幕府への依存が増える」
宗久は驚いた。
「殿……島津家を経済で従えるおつもりか」
信忠は頷いた。
「戦で島津を倒せば九州は荒れる。
だが、経済で島津を従えれば、九州は安定する」
宗久は九州へ渡り、島津家に鉄砲を売り込んだ。
島津家はその精度に驚き、織田幕府への依存を深めていった。
その頃、信忠は九州へ向けて軍を動かした。
だが、城を攻めず、村を荒らさず、ただ整然と街道を進むだけだった。
島津家は驚いた。
「織田軍が来たのに、戦わぬ……?」
「これは……脅しではなく、示威か……?」
「信忠殿は、戦を望んでおらぬ……?」
島津義久は静かに言った。
「……信忠殿は、信長殿とは違う。
戦ではなく、国を治めるお方だ。
島津家は織田幕府に従おう」
九州もまた、戦わずして織田幕府の支配下に入った。
■日本統一
数ヶ月後、安土城に全国の大名が集まった。
信忠は政庁の中央に立ち、静かに宣言した。
「四国・九州は織田幕府に従った。
これにより、日本は一つとなった。
戦国の世は終わる。
これからは、天下を治める時代だ」
大名たちは深く頭を下げた。
「信忠様こそ、天下人にございます!」
「織田幕府こそ、日本を治める政権にございます!」
信忠は静かに頷いた。
「父上……私は日本を一つにしました。
これからは、日本を世界へ進ませます」
安土城の天守から見える琵琶湖は、
まるで新しい時代の始まりを祝福するように輝いていた。




