碌話 サワグキョウシツ
駅前のカフェに着いたが...洒落てるな。
木造の小屋風におもきを置いた外装。温かみと自然をこの都会の中に感じた。
中に入るとカップルが多いい様に見えた。一つの飲み物やパンケーキを二人で共有していた。
店内を見回していると、お店の人がやってくる。
「お二人様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「では、お席に案内いたします」
案内されたのは、二人掛けのテーブル席だった。
少しすると、水とメニュー表を持ってきた。
俺はそれを受け取ると、二人で見やすいように置いて一枚一枚ゆっくりめくっていった。
すると、鈴音が声を上げる。
「ねぇ、これ頼んで一緒に食べない?」
そう言って指を刺したのは、大きなパンケーキだった。大きなパンケーキでメガパンケーキ。
これを一緒に食べるなんて恋人みたいだな。でも、鈴音はこれが食べたくて来たのかもしれないしなぁ。
「あぁ、いいよ」
ペラリペラリとめくっていくと、ドリンクをまとめているページがあった。
そこには二人用の飲み物しかなかった。
「パンケーキ食べたら喉乾くだろうし、なんか頼む?」
「そうだねぇ、これとかどう?」
指さしたのは、紅葉に染まるカフェラテというものだ。
こういうところはこのような何なのかが分からない名前の飲み物が多い。隣だって、真夏の夜の夢サイダーだ。
だが、紅葉に染まるカフェラテは、紅葉が乗せられているか芋味かそんなところだろう。
「あぁ、ならそれを頼もうか」
「よし決まり、他に何か頼む?」
「今は別にいいかな」
「なら注文するね、店員さーん」
鈴音は厨房の方に向けて、元気そうに店員を呼ぶ。
店員さんは「はーい」と言って、小走りでやってくる。
「ご注文は?」
「このメガパンケーキと紅葉に染まるカフェラテをお願いします」
「はい、以上二点だけでしょうか」
「はい、大丈夫です」
「少々お待ちください」
そう言うと店員さんは厨房の方へと向かっていく。
鈴音は本当に楽しみだったのか、にこにことしながら語りかけてくる。
「楽しみだね、メガパンケーキどんくらい大きいかなぁ?」
「人の顔ぐらいの大きさがあったりするかもなぁ」
そう冗談を返した。
うん、冗談のつもりだった。だって、だって...
「お待たせしましたー」
本当に、人の顔と同じくらいの大きさのパンケーキが出てくるとは思わないだろう。
「...ほ、本当に顔ぐらいの大きさだね」
「あ、あぁ」
流石に大きすぎたために、俺ら二人とも軽く引いた。
さて、食べきれるだろうか。
ちなみに、紅葉に染まるカフェラテは二人用で、一つの飲み物にストローが二つ付いている。
とりあえず、パンケーキを皿に切り分ける。
そして他愛のない話をずっと続けながら、パンケーキをむさぼり続ける。
だが、パンケーキをずっと食べていためか喉が渇いた。
そう思い、ジュースのストローに口を近づける。
すると、鈴音も同じ考えだったのか顔が至近距離に来る。
鈴音は頬を少し赤らめて「えへへ」と笑う。
このままだと決断が揺らいでしまいそうな気がしてきた。だから今、言うことにした。
「鈴音、俺らの歪んだ関係を終わらせよう」
「それって...」
鈴音は悲しそうな、それでいて分かっていたような。
「あんなことまでしたっていうのに...」
「嗚呼、あんなことしてしまったからだ。酷いというのは分かってる。でも、この関係をずっと続けていたらお互いに悪いと思うから」
「...うん、そうだね。そうかも」
鈴音は私と目を合わせもせずに俯いて、掠れて震える声で小さく言う。
「でも、嫌だ」
鈴音はすねた子供のようにきっぱりと言った。
「...それって」
「ごめん」
それだけ言って鈴音は外へと駆け出た。
悪いことをしたかもしれない。でも、こうするしかなかったんだ。
こうしなければ俺たちは前に進めない。何も変わらない。
それから、残すのも悪いかとパンケーキを食べる。どうも味はなかった。
代金を払って店を後にした。
あぁ、明日学校でどんな顔して合えばいいかな。きっともう、前までの関係は壊れてしまっただろう。
そのまま家に帰って気づけば夜になって、布団に潜った。
朝、教室に行くとガヤガヤと騒ぎ立てていて、俺が着た瞬間に全員がこちらを見た。
その目には、不審感や怪訝の情が見て取れた。
どうしたのだろうか?
すると、香苗が俺のところにやってきてスマホを見せて来た。
そこには俺と鈴音が一緒に一つの飲み物を飲んでいる写真だった。
昨日のを誰かに取られて出回ったのだろうか?
「ねぇ、これってどういうこと?」
その言葉が俺の心に深く深く突き刺さった。
周囲からの目も痛い。何を言えばいいのか?俺はどうすればいいのか?
教室の入り口で固まっていると後ろから鈴音がやってくる。
それによって教室の視線は更に冷たく痛いぐらいに刺さった。




