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9/9

9話目

今回は連続2話投稿です。どっちから読んでも話の流れに支障はないです。




あの濃い一日から更に2週間が過ぎた。


あの後戻ってきたブレザーは凌河の強い希望もあり一度クリーニングに出すことにした。まあ実際俺自身も加藤に奪われたのをそのまま着るのは何かキショいと思ってたから出すつもりではあった。


後日加藤からは「ちょっと理性を欠き過ぎてすまなかった」と謝罪があった。どうやらちょっとの定義が俺とは違うらしい。もう少し自重を覚えた方がいいと思うぞ。

クリーニング代も出すと言われたが強く抵抗せずに流していた俺の対応もアレだったので、と丁重にお断りさせてもらった。

ぶっちゃけ本音を言うとそこまでされると後が怖いと思ったからなんだが。



「瑠璃ちゃんガチャの女神騒動」のおかげで瑠璃ちゃんとはそれなりに打ち解けることが出来た。と言っても9割方凌河のおかげだ、俺はビビらせちまっただけだし。

瑠璃ちゃんは最初こそ俺のことを警戒していたが、ソシャゲガチャが絡まないとただの無口コミュ障になると分かると少しずつだが懐いてくれた⋯⋯いや、生暖かい目で見てくるようになった。何そのおめめ。やめて、ちょっとしんどい。

だけど話せる相手が増えたという事は素直に嬉しい。危うく凌河しか友達のいない悲しい青春を送る所だった。それは流石に嫌だわ。


もう女神の前であんな取り乱すような真似はしないようにしよう、と俺は心に固く誓った。ガチャ運が逃げてしまう。何よりクールビューティーな外見してる俺のキャラ崩壊が凄まじいんだ⋯⋯。


依然としてクラスメイトとの距離は遠く、友達の少ない日々を謳歌している。まあ何だかんだ一人の時間が多い方が落ち着くのが俺の性分なので、これでいいのかもしれない。




さて季節は6月後半、俺達はじめじめした蒸し暑さに苛まれていた。

現代日本とさほど変わらない気候のせいで、気持ちの悪い空気に晒され気分が宜しくない。暑さにそこそこ強い俺も梅雨には参るものだ。しかし俺の周りで最も被害を受けているのは凌河である。


この世界の獣人は基本的に所謂ケモナーが夢見るようなガチ獣人ものではなく、単に人間に獣耳と尻尾がついて性格や行動が動物寄りになる程度のものだ。

しかし人によっては身体にそれなりの体毛があったり”血”に流れる御先祖様⋯それぞれの”動物”の苦手な気候・環境による身体の不調が現れることがある。


凌河の祖先の狼族は基本的に暑さにあまり耐性がなく、代わりに寒さに強いことが多い。

その中でも一際暑さに敏感な凌牙は梅雨から夏場にかけてが最も苦手なのだ。

更に言うとこいつは狼の遺伝子が特に強い家系のせいで満月が近づくと毎回体毛が濃くなる「先祖返り」が発生する。「先祖返り」とは簡単に言えばガチ獣人化するってことだ。つまり定期的に毛皮での暑さにも苦しめられるということで。

なんか散々だな、しかし俺には何も出来ない。頑張れよー南無南無。



「んぃ~⋯⋯あづい⋯⋯」

「頑張れよー凌河」

「ん゛ー⋯」


顔を少し赤くさせ早くも軽くダウンする凌河に、俺は伝家の宝刀「下敷きうちわ」を使いゆるゆると扇いで風を送ってやる。

そよそよと優しく頬を撫でる風の感触に若干気持ちよさそうに頬を緩めている。なんて凄まじいわんこ感だ。

こういう時高校生になっても下敷きは欠かせない必須文房具だよな、としみじみ感じる。

クリップと併用すれば簡易的な画板にもなるスグレモノだしな。中学の頃遊びで割ってた馬鹿共は下敷きの神に怒られてしまえばいい。普通に危ないし。



そんなことをしていると、ふと唐突に気になったことがあったのでついでに聞いてみることにした。


「なあ凌河」

「ん~?」

「お前、ヤる時に獣人化してる状態ってどう思う?」

「ンァ゛!!!????」


変な声を出して椅子から転げ落ちやがった。呻いているがまあ丈夫なやつだし大丈夫だろう。



何故こんなことを聞いたかというと、凌河含めこの「ファンビー」というゲームの攻略対象と主人公は皆獣人化できる設定だった気がするのだ。因みに俺もやろうと思えばできる。

18禁BLゲームでルートによったら獣人せくろす⋯⋯こんなアブノーマルなものを日々実兄弟に勧めて来ていた我が姉妹は相当な猛者だと思うんだよな。



⋯⋯なんてことを好物のいちご牛乳を吸いつつそんなことを考えている俺は、獣人化した状態での性行為は上級者によるアブノーマルなプレイの一種であることや、下敷きで扇ぐ前よりも顔が真っ赤になっている凌河の様子には一切気付いていないのだった。

会話の途中にさらっと下ネタ挟むことってあるよね⋯⋯ない?(・ω・`)

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