嵌る魔性
一秒後、死んでしまうとしても、僕は君のために尽くしたい。
君の笑顔を見ていると、自分自身のことなど、どうなったって構わないと思え始めてくる。
方便ではなくて、本当に、本当に心から、そう思えるのだ。
神様よりも君の方が偉いような気がして、神様の教えに背くような外道でさえも、君が望むなら今の僕には可能となっていた。
君に対する信仰心が篤くなっていったのだ。
明日も生きていられるだろうか。
以前はそう不安になっていたのだが、君と出会ってからは、今日さえ生き抜けるかどうかと不安になっていた。
それが、最近となっては、一秒後に死ねるというのだ。
時の流れではなくて、僕を動かしたのは、君であるに違いなかった。
同じだけの時間が過ぎていたとしても、もし僕の隣にいるのが君でなかったとしたら、このような変化が起きようはずもない。
変わらずに、僕は死に怯え、必死で逃げながら必死で生きていたのだ。
どうしてこうも短期間で考え方が変わったものかなどと、そういったことも、考えることすら面倒になって来ていた。
何を考えることも、もう面倒だった。
理由なんて必要ないところまで来ているのだ。
わかってくれるだろうか?
心から、君さえいれば何もいらないと思える、その感覚。
悪魔に魂を売ることで、君と永遠を過ごせると言われたなら、喜んで魂でもなんでも捧げられることだろう。
今の僕にとって君が全てであり、他がどうなっても興味はなかった。
日に日に細くなる、僕の体はどうなろうと問題ないのだ。何も。
「もうえぇげ。んだげ、腹も減ったろ。一人ばっかしもらって食ってじゃ悪いけ。せいで死んだっちゃ、殺しだごとになんでがら、んだもん、胸糞悪か。そんでねぐで、死なれちゃ終わりじゃぎ、飯も食えねぐなっがら、こっからも飯ば食わせてくれな」
こういう魔性なところが、堪らなく好きなんだ。
これ以上、僕のことを好きにさせて、夢中にさせて、どうするつもりなのだろう。