君に夢中
慎重に動いていて、確実に仕留められるというのなら、その技術はかなり魅力的なものだろう。
準備体制から慎重さまで含めて、全てまとめて、僕のテクニックが確かなものであると見られることだ。
しかし、慎重に行ってしまったら、外したときのリスクは大きく思えた。
派手な動きもなく、面白味がないだけでなく、獲物さえない。
楽しませられるところが存在しないと言えるじゃないか。
もし外したとしても、大きな動きは見栄えがいいに決まっている。
慣れちゃいないけれど、危険は伴うけれど、仮に死んだとしても構わないとすら思うのだった。
死ぬことで君の中に残れるのなら、僕の死が君にとって何か思うところのあるものになるというだけで、僕は死ぬ意味があるとも感じられる。
ここで、目の前で死んだとして、君の記憶に残るとしたら、それはトラウマだ。
なのだろうけれど、それはそれで構わないと思ったのだ。
なんということか。僕は、なんとも自分勝手だ。
君のことが好きでありながら、君のことなど少しも考えていない。
だとしても、そのとおりなのだろうけれど、君のことが好きだった。
恋心は僕の心よりも大きく、僕自身よりも大きく、全てを呑み込むような大きな想いなのである。
僕は君の何を知るわけでもないのに、だ。
面食いではなく、どちらかといえば外見は気にしないタイプであると、自分では今まで思っていた。
それだのに、こうも一目見て好きになろうはずがあるとは思えなかった。
そのとき、目の前を過ぎたのはウサギ。
ちょうどいいところに現れてくれた、狙いの獲物だった。
「行げっ!」
放り投げた僕の石は見事ウサギに命中し、動きの鈍ったところを、逃げる前に持ちやすく砕いた愛用の石で、殴り付けてやったんだ。
いつもよりも調子よく、完璧に狩りは行えていた。
緊張して、失敗するだろうと思ったけれど、僕が思っている以上に僕は強かったらしい。
失敗するどころか、完全に緊張感を味方にしていた。
「すんげぇんだな。こんなにすぐにウサギってんは、捕まえられるもんが。そのまんまじゃ食べねぇがら、早よ料理さしてぐんねぇだが?」
「わがった、おらに任せてくれ。捕まえたばっかしで、素早く料理ばした方が、肉はうめぇに決まってっペ。料理ができたら、おらはもうちっと捕まえたるから、遠慮せず食べでくれ」