サンドニの奇跡
ミニマム松村に誘われ、モデルの仕事の一環でパリコレの視察に行った陽菜だが、某有名ブランドのデザインマネージャーに声をかけられ、思わぬ展開に。
2029年秋
ミニマム松村からモデルとして本場のショーであるパリコレを視察しに行くのを誘われた陽菜は乗り気ではなく、しぶしぶ行くことにした。
実際に会場に行くと、噂以上に日本のファッションショーとすべてにおいて次元が違っていた。
陽菜はあまりの緊張感とレベルの高さに圧倒され吐きそうになっていた。
ショーが終わった後、ロビーで休んでいた。その間どこかに行っていたミニマムが走って戻ってきた。
「おーい陽菜! 大変だ。Diorのデザイン部門マネージャーが呼んでるから行くぞ、さぁ!」
「えっ、私ショーに出てないですよ。なんでー?」
「わからん。会いたいと言ってるから、早くいかないと帰っちゃうから急いで」
「えっ?はっ、はい」
会場内のある控室に着くと、老紳士が座っていた。
「ボンジュール。君か、スプリンターのモデルは?」
「えっ、はい」
「種目は何をやっているんだ?」
「えっ、あっ、100mです」
「そうか。ワシは昔サンドニ(パリ郊外)に住んでてな。20年以上前だったか、世界陸上大会が開かれてスタジアムに観に行ったんだよ」
「へぇ、そうなんですか。陸上を?」
「その時に男子の200mの決勝がやっていたんじゃが、驚いたことに黒人選手の中に一人日本人選手がいるではないか」
「えー、本当ですか?」
「スエヒロ、だったかな。身長も筋肉も黒人に比べたらだいぶ細くて小さかった」
『スエヒロ? 知らないわ』
「そしてレース。何回もスタートやり直ししたが、なんとスエヒロは銅メダルをとってしまった!」
「えええ、本当ですか?」
「そうじゃ、小さな日本人がスプリントでメダルを獲ったんじゃ。あの走り方はまるでニンジャのようじゃった」
「え?ニンジャ?」『ってあの忍者のことかな?』
「君も頑張って世界でメダルを獲るんだよ。それじゃあ、メルシー!」
「ありがとうございました」
会話を見ていたミニマムが話しかけてきた。
「陽菜、すごいな。ピエールさんとあんなに話すなんて。オレクラスでもほとんど相手にされないのに」
「いえ、それほどでも。あっ、ミニマムさんすいません。今からちょっと用事があるので、ホテルに戻っていいですか?」
「はぁ? これからパリ市内の夜を楽しもうと思ったのにぃ。しょうがないなぁ」
陽菜は急いで滞在先のホテルに戻った。そして部屋から国際電話をかけた。
プルルル
「....も、しもし」
「あっ、朝倉さんですか。あの、陽菜です」
「...えっ? ああ、陽菜ちゃんか。どうしたの?」
「すいません。今電話大丈夫ですか?」
「うーん。大丈夫だけど、夜中の2時だよ。フワァ」
「あー、すいません。今私パリにいまして」
「パリ?そうか、試合あったっけ?」
「いえ、モデルの仕事の関係で」
「あ、そう。それでどんな用事だい?」
「朝倉さん、スエヒロさんってご存知ですか?」
「ん? 末広? 短距離の?」
「はい、200でメダル獲った方」
「ああ、知ってるも何も、オリンピックのリレーでメダルを獲った時のメンバーだからね。戦友だよ」
「こちらのDiorのマネージャーさんが昔世界陸上でレースを見て、感動したって話をされたんです!まるで忍者が走っているみたいだったって」
「忍者? すごいなぁ。欧米人らしい表現だね」
「私、末広さんに走り方教わりたいんですけど、連絡先ご存知ですか?」
「ああ、最近は連絡とってないけど、田舎に帰って高校生とかに教えてるんじゃないかな」
「是非紹介してください!! お願いします」
「わ、わかったよ。それじゃあ連絡が取れるまで待っててね」
つづく
◎登場人物
桜井 陽菜/はるはる 175cm 物静かな美人
ミニマム松村 芸能事務所 シャイベックス代表
朝倉宣伸 元五輪リレーメダリスト 陸連理事
ジャン・ピエール・ロッサム Dior デザイン部門マネージャー
伝説のスプリンターの存在を知った陽菜は朝倉に紹介を頼むが果たして。




