L.A.合宿
短距離の強化として、藤森と陽菜と七海は米国L.A.に行き、合宿を行った。そこで待っていたのが名指導者のエディ氏で、二人が受けたトレーニングとは。
2023年1月 3人はロサンゼルスの空港に降り立つと、カラっと乾燥して、良く晴れていて、希望が湧いてきた。
藤森「フライトが長くて疲れたな、時差ボケもなおさないと」
七海「本当にアメリカきたんだね、やっほー」
陽菜「来れてよかった。ホント」
早生まれの陽菜はまだ20歳になっておらず、親がいないのでパスポートの取得に苦労した。光が岡園の本橋に頼んで保護者のサインをもらい、なんとか取得できた。
陽菜に限らず3人ともこういった書類が必要になる度に、苦労するのが辛かった。
藤森「さぁ、エディさんのいる練習場にいくぞ」
七海「どうやっていくんですか」
藤森「エディさんのマネージャーが迎えに来てくれるみたいなんだ」
出口でボードを持って待っている人が数名いて、その中に「L.A.にようこそ、七海さん、陽菜さん」というのを持っている男がいた。
「はじめまして、藤森です」
「よくいらっしゃいました」
「七海です、よろしくお願いします」
「陽菜です、よろしくお願いします」
男は流暢な日本語で、聞けば、3年前に大阪に留学していたのだそう。
「これからエディさんのところまでお連れします」
空港から車の乗って、40分ほど行くと、小さなホームスタンドの陸上競技場に着いた。
「Welcome to L.A.!」
小柄で白髪の白人男性が大きな声で3人を迎えてくれた。
「Nice to meet you」
「Nice to glad to see you」
藤森とエディさんは英語であいさつ。それを見た七海と陽菜はビビッて固まってしまった。
そこへエディさんが握手を求めてきた。
七海「あっ、よろしくお願いします」
「Yes」
「陽菜ですよろしくお願いします」
「Yes」
エディさんはニコニコしていた。
マネージャーはロバートといった。ロバートが通訳をしてくれた。
「二人の走りを見てみたい」
「わかりました」
「50mを自分のリズムで8本走ってくれ」
「はい」
七海と陽菜は並んで50mを8本走った。
「Good!」「Beautiful!」
エディさんは褒めていた。
「次は伏せた状態から立ち上がって走ってみて」
「えぇっ」
「はあ」
二人は3本走った
「次は後ろ向きで10m走って、そこから反転して走ってみて」
「は、はい」
「次はここで、ジャンプしなくていいから踏切板の手前まで全力で走ってみて」
走り幅跳びのレーンで二人は順番に走った。
「はい、じゃあ最後もう1本50mやって終わろう」
「はい」
「OK」
「また明日」
「えっ、ああ、ありがとうございました」
3人は宿泊先のホテルに戻り、近くのレストランで夕食をとった。
藤森「今日の練習どうだった?」
七海「残念でした」
藤森「そうか。陽菜は?」
陽菜「よくわかりませんでした」
藤森「まだ初日だからな。明日も頑張れよ!」
七海「はるばるアメリカにきた意味あるのかなぁ」
藤森「いろいろ考えてみなよ」
陽菜「わかりました」
▽翌日
エディ「Good Morning!」
七海「おはようございます」
陽菜「おはよーございます」
「今日は130mを6本走ってもらうよ」
「はい!」
二人は並んで走った。
「次は両手にバトンを持って70mを4本」
「はい!」
「次はつま先の着地を意識して60mを5本」
「はい」
「今度は体を地面に対して垂直な姿勢で80mを3本」
「はい」
「前傾姿勢で40mを7本」
「はい」
「最後に全力で300m1本走ってみようか」
「はい」
「Good! Good!」
この日の練習が終了した。
翌日、練習開始する前に藤森がエディに質問した。
「二人がエディさんの練習にどういう意図があるか知りたいと言ってます。教えてくれませんか?」
「そうか。逆に質問しよう。練習が終わった後、夜に走ることを考えましたか?」
七海「えっ、ちょっとだけかな」
陽菜「私も、寝る前に少しだけ」
「それじゃあトップアスリートになれないな」
藤森「と言いますと」
「トップアスリートは24時間走ることしか考えていない。今日の練習の1本1本を振り返り、イメージを膨らます。いろいろな練習をしただろ。何に役に立つのだろう。明日はどう生かそうって考えるのだ。短期間で速くはならないが、こういうのを積み重ねて、数年続けた者がオリンピックに出れるようになるんだ!」
七海「そうですか。しまった、甘かった」
陽菜「私ももったいないことをした」
「君たちのことはアサクラから聞いている。陸上を始めてまだ2年くらいなら、これからの頑張り次第でオリンピックは目指せるかもしれない。ただ練習が終わった後に、走ることを考えないようでは、何年経っても無理だ」
陽菜「心を入れ替えてやります!」
七海「ここに来れなかったさくらの分も成長しよう」
「君たちははるばる日本から来たのだろう。私に会える機会なんて今回終わったらそうはない。なぜ質問をしないんだ! 怒られるのが怖いのか。私は何人もオリンピックのメダリストを見てきたが、彼らは私が何も言わなくても質問してきた。ゆっくり食事をしたり、くつろいでいる時でさえだ」
七海「はるはる、私たちに足りない部分、わかったね」
陽菜「うん」
「君たちの筋力はアメリカのトップアスリートに比べると弱く、同じトレーニングをしたらケガをする。強度は小さくても美しいフォームで走ればある程度は速く走れる。いろいろなトレーニングをしたのは、スタート、中間疾走、後半やコーナリングなどいろいろな場面を想定してだ。意味のないものはない!」
二人の目の色が変わった。最初は海外で気持ちが浮つき、日本コーチのようにトレーニングの内容の説明をしてくれるものだと受け身だったが、それでは何もわからないし、教えてもらないことにようやく気付いたのだった。
それから二人はエディさんに練習中、後も質問責めをし、夜も頭の中で走るイメージを考えるようになった。
▽そして最終日
「今日はしっかりとウォームアップして、仕上げに100mを1本走ってタイムを測ろう」
手動でストップウォッチで測ることになった。
「オン・ユア・マーク」「セット」 プァァーン!
ダッダッダッダッ
七海が先にゴール。陽菜もほぼ差がなくゴール。
「タイムは、11秒2と3!」
「うそぉ」
「信じられない」
藤森「二人ともパーソナルベストだね」
「そうか。成果が出て良かった。10秒台とオリンピック目指してファイトだ。そういえば日本は男子は400リレーでオリンピックで何度もメダル獲ってたな。君たちは器用だから、そっちを目指してもいいかもな」
「ありがとうございます」
「2028年はL.A.で五輪が開かれる。君たちが出るなら喜んで観にいくよ」
「絶対出ますから、応援しに来てください!」
こうして6日間のアメリカ合宿は終了した。
つづく
◎登場人物紹介
桜井 陽菜/はるはる 175cm 物静かな美人
田原七海/みーなな 166cm 知恵袋
本橋 光が岡園施設長
朝倉宣伸 元五輪リレーメダリスト 陸連
藤森健次郎 滝野川大監督 元世界陸上リレーメンバー
エディ L.A. TCコーチ 五輪金メダリスト複数名育成
五輪のメダリストを何人も育てているエディ氏により、何かをつかんだ陽菜と七海は今後飛躍していくのか。




