24バッハ バハムートちゃんはじめてのパンケーキ
今日もバハムートちゃんと麒麟ちゃんの2人でおでかけである。 昨日も結局商店街だけで夕方になってしまったので他を回れなかったけど、麒麟ちゃんもすっかり商店街の人達と仲良しになったので嬉しい事である。 さて、今日の予定はどうなることか───
……今日は麒麟を喫茶店に連れて行ってやろうと思ったのだが、そういえば魔道士もあの日商店街だけで終わってしまって連れて行けてないのぅ……。 むぅ、共に行こうと誘うべきか……いや、彼奴のことだから『行かねーよ』の一言であしらわれる可能性もあるからな……どうしたものか……むむぅ
チラチラと魔道士を見ながらモジモジ唸っている横で、それをキョトンと麒麟ちゃんが見ていると、ぴこんと豆電球がひらめく。
「……魔道士の事スキなの?」
ド直球の率直な意見に、ブ─────ッ!!と3人が吹き出す。 バハムートちゃんと、テーブルでコーヒーを飲んでいたイフリートとフェンリルである。
「ぬなっ……、何を言っておるのだ、お主は!!」
ちらと目の端で魔道士を見るとこちらに気も留めず新聞を見ている。少しムッとした。
「誰が此奴など! すっ、す、すす〜〜すきなわけ、あるでなかろうもん!!」
カッとしながらあからさまに動揺を見せつつ、麒麟ちゃんの手を掴んでドアを勢いよく開けて出て行く。うんうんとフェンリルが深く頷いていた。
家から少し離れた場所で手を振り解く。
「お主なぁ!……あ、ああいう事は、──────!!」
「すきじゃないの?」
麒麟ちゃんの純真な眼に一瞬狼狽えたが、先程の魔道士の光景が脳裏に浮かぶ。
……彼奴はいつでもそうだ、出会った頃からずっと、今も─── 胸がキュッと締め付けられた。
「…キラいだ、あんな奴……」
か細く言い放つと麒麟ちゃんがきゅっと手を握り直してきた。
「ボクはすきだよ…みんな大好き。 魔導士は……まだ、ちょっと怖いけど」 麒麟ちゃんはふふっと笑う。
……ホントに此奴は、わかってるんだかわかってないんだか……
バハムートちゃんは苦笑しながら、そうだな…と言葉を返し目的の場所に歩き出した。
喫茶店の前、少し重めの扉を両手で引いてカランカランとドアについてる低めの鈴が鳴るとカウンターにいる店主がそちらに気づく。
「店長、我がきたぞ───!!」 元気に店内に入って行くと店長は和かに対応してくれる。
「いらっしゃいバッハちゃん」
それにつられて数人いる他の常連客たちもバッハちゃんに声をかけてくれると、それに応えてまわる。
「皆のもの、此奴はリィンだ、我の妹分だ。よろしく頼むぞ」
麒麟ちゃんはほっぺをぽんぽんにしながらみんなに挨拶する。みんなも快く返してくれた。
「ここの者たちはみな我の友だからな、お主も安心して友になるといい」
バハムートちゃんが笑顔で言うとみんな嬉しそうにしている。 バハムートはすごいな……と麒麟ちゃんは誇らしく思った。
座る席はいつもの場所。今やもはやバッハちゃんの指定席にすらなっている窓際の席だ。そこに2人は向かい合ってちょこんと座る。 その光景が微笑ましくて店にいる全員が笑顔である。
「さて、何を頼むかの? ここのモノは何でも美味いぞ! 特にパフェはいいぞ!お薦めだ!!」
「ぱふぇ?」
ご満悦のバッハちゃんを見て麒麟ちゃんは小首を傾げる。
「パフェは甘くて蕩けて美味いぞ! しかし偶には新しいものを発掘するのも悪くないな……」
そう言うとしばらく2人してメニューと睨めっこして長考にはいる。
「パンケーキ! パンケーキはある?」
「ぱんけーき?」
「前イフリートがボクに作ってくれた。 果物たくさんあって、ボクを描いてくれた!」
「かく? ふむ?よくわからんな」
「うちには普通のパンケーキしかないけど、よかったら任せてもらってもいいかな?」
伝票をもった店長が傍で立っていた。
「よし!今日は店長おまかせパンケーキにしよう。き…リィンもよいな?」
麒麟ちゃんは嬉しそうに頷く。
少しして運ばれたパンケーキはなんとも豪華なモノだった。 プレートには色とりどりのフルーツにアイスとプリンも乗っている。 そしてメインのパンケーキにはカラフルなチョコペンを使ってそれぞれバハムートちゃんと麒麟ちゃんがかわいく描かれていた。
「───────────────────っっ!!!」
2人は言葉ににならない感嘆の声をあげて、大きな瞳をキラッキラにさせた。 それを見た店長も達成感に高揚した。
喫茶店の外に出ると空はもう夕刻である。 あの後店長や常連の人達と賑やかな時間を過ごした。 そこはもう元精獣達の会談場所ではなく、友の集う場所となった。
「ふむぅ〜〜満足したな」 背伸びしながらバハムートちゃんはご満悦である。
「ありがとう、バハムート」 麒麟ちゃんが頬を染めて言うとバハムートちゃんはうむと頷く。
「今度は魔道士も連れてこようね♪」
気恥ずかしいのをごまかすかの様に、悪戯っぽく言い放って駆け出す。
「──な……っ?!」
不意打ちにバハムートちゃんのほっぺが赤くなる。夕刻であってよかったと思いながら走っていく麒麟ちゃんを見つめる。
「全く……わかってるんだかそうでないんだか……」
またしても苦笑させられ、そう呟くと麒麟ちゃんを追いかけて茜色の街並みを駆けていった。




