10バッハ バハムートちゃん根っこの深さと新たな仲間
さて、前回の引きからどうなったかは、聡いリーダ諸君はすでにお気付きであろう。 どこぞの世界でならこう言われる事だろう。───君の様な勘のいいガ────ゲフンゲフン!! ………さて、続きのはじまりはじまり───
精獣と魔道士が出会えば、もはや行き着く先は1つである。 自分を含め3回目を目の当たりにするバハムートちゃんにとってはすでに様式美である。
まぁ自分以上の精獣でもいない限り結果が覆る事はないとわかってしまってるだけに、推理小説をラストから読む如く結果はわかりきっているのだ。 そんな達観したバハムートちゃんの横で、食い入る様に魔導士とフェンリルの戦いを見るイフリートがいた。
───うん、うん、我にもあったぞ、こんな時が……と温かい眼差しを向けながら頷くのであった。 つい1つ前の戦いである。
──まぁ、確かに……と、ついと戦いに目を戻す。 全く、圧倒的な力というものはこうも見惚れずにはいられないモノなのだな───とバハムートちゃんはそっと俯いて唇を噛みながら、きゅっと拳を握った。
───フェンリルが光に包まれて暫く経つ───達観していたバハムートちゃんも次第に気持ちが昂ぶってきていた。
「フェンリルの奴どんな姿になるんすかね〜〜嫌なヤツだったから、それが絶対容姿にでてるっすよ。 嫌味ったらしい脂ぎった腹出た薄毛のおっさんが出てきたら大笑いしてやるっすわ!」
その姿を想像してか、嬉しそうにキシシと嘲弄している。 同担拒否はかなり根が深い様だ。
……浅いな、小僧よ……とバハムートちゃんはフッと笑ったのち、カッと鋭くフェンリルに視線を向ける。
──見た目なんぞど〜〜〜〜〜〜〜〜〜でもいいのだ!!我より幼児!!これしか認めぬわ!!!
こっちも相当闇の根っこが深かった。
魔導士はいつものルーティンの様に手頃な岩の上に腰をかけて黙している。 ───側から見れば何かを考えているかの様にも見えるが、その心の内はわからない────そう、今はね。
フェンリルの取り巻く光が薄れてきた。間も無くである。 否が応でもオーディエンスは盛り上がる。
「さぁ、くるっすよ〜〜〜腹タプタプしてやんよ!!」
イフリートは首をコキコキ指をポキポキさせて準備万全と獲物を待ち構える。
幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・幼児・お・さ・な・ご───────────
祈る様にバッハちゃんは心の中で呪文の様に呟く。 必死である。
光が弾け、キラキラと粒子が舞う中、中から声が聞こえてきた。
「───? なんだコレは?」
視線が一斉に注がれる。 ─────清楚でお嬢様風の美少女がいた。 しかも巨乳である。
人の齢で18歳位であろう。透き通る様な白い肌に、吸い込まれそうな金色の大きな瞳。 毛先をキッチリ切り揃えられた髪はサラサラであり、一見華奢な手足には似つかわしいEカップのお胸である。 どこぞの世界でなら、インスタにうっかり写真でも載せようモノなら、千年に一人の美少女とトレンド1位待ったなしである。
「───やべぇ、旦那…… まじ、タイプ………」
頬を染めてポワポワと見惚れてるイフリートの言葉は、すでに魂を抜かれたかのように茫然と白目で青ざめてるバハムートちゃんには届かなかった。
周りに困惑の空気が流れている中、真っ先に動いたのはヤツである─────
「やぁやぁやぁ、オレオレ!!」
「?! ──あの……どなた、ですか?」
フェンリルは困惑して、恐々と身体を萎縮させてる。 魔道士にフルボッコされ失意の先に姿まで変えられ、訳が分からず現状を飲み込めてないとこに畳み掛けるかの様に謎のチャラ男に詰め寄られているのだ。無理もない。
「オレだよオレ! イフリート!!」
「てめえか──失せろ!」
名前を聞いた途端表情がガラッと一変した。 元フェンリルの本能を垣間見るような、何モノも寄せ付けない鋭くも殺意に満ちた凍て尽く眼差しをお見舞いした。 こっちの根もとことん深かった。
「うわ〜〜〜いいね、いいね──。 そういうのもっとちょうだい!」
全く動じていないどころかむしろ喜んでいる。 そんなイフリートに対し足蹴を繰り返しながら距離を牽制して、キモい!くんな!!と憤怒している。
「───まぁまぁ、フェンリル。 気持ち悪いが我慢してやってくれ」
いつの間にか2人の近くにバハムートちゃんがきていた。 抜け出た魂はなんとか戻ったようだが、その精神的ダメージはまだ回復していなくてフラフラしていた。
キョトン───とフェンリルは大きい目を皿の様にしてバハムートちゃんを見る。
「うけるだろ───コレだん……」
イフリートの言葉が終わらぬうちに、目が妖しく光り、物凄い疾さでバハムートちゃんに飛び掛かる───高速仕掛けはフェンリルの最も得意とするところだった。 戦場では獲物が気づいた時にはすでにその喉笛は掻き切られているのがルーティンであった。
「ま──────」
イフリートはマズいと慌てて腕を伸ばす───が、すでにバハムートちゃんはフェンリルにガッチリと捕まっていた。 ゴクリと静寂に包まれた最中────
「バハムート様!バハムート様ですね?!」
バハムートちゃんはフェンリルの胸の中にすっぽり顔を埋められる形で抱き締められ、モゴモゴもがいていた。 ───なんとも、うらやまけしからんである。
白目のイフリートを他所にフェンリルは嬉しそうに、それはそれは愛おしそうに頬擦りするのであった。 ───その行為はバハムートちゃんが窒息でもう一度魂が抜けかけるまで続けられた。
───こうしてまた1人?、新たに仲間に加わったのである。




