2-5
ホリデーも最終日。
目覚めると、ユイはいつものように携帯をチェックし、洋服を着替えるとキッチンへ向かった。
リアムも毎朝火をつけられないユイに合わせて部屋から出てくる。
途中で気が付いたユイがお礼を言うとリアムは「気にするな」とだけ言った。
昨日の余りの野菜スープにスクランブルエッグ、ハムを焼いて、スライスしたパンを温める。
5日も同じことをしていると流れるように作業が進み、あっという間に朝ご飯が完成した。
「「いただきます」」
リアムも慣れたように手を合わせ、フォークを手に取る。
静かで落ち着いた、気持ちのいい朝だ。
食事はあまり時間をかけない文化らしく、食事中は静かにさっさと食べる。
食後の紅茶を入れた後、ところで、とリアムが話を切り出した。
「明日の午後、ユイを連れて病院と役場に聞きに行こうと思う」
ユイはうなづいた。いつまでもここでお世話になるわけにいかないが、当てがあるわけでもない。
「わかった。でも病院は大丈夫だよ?」
ユイは自分の手を机上に出した。こまめに保湿クリームを塗っていたためか、クリームの相性が良かったのか、殆ど痛みや腫れもなく、あと数日で治りそうな様子だった。
「いや、念のために行こう。役所に行く前だな」
頑として病院に行くことを譲らないリアムにユイはしぶしぶ承諾することになった。
「病院のあと、シュリーク商店街に行こう」
まだ納得のいってないユイにリアム話題を変えるように明るく言った。
「シュリーク商店街?」
「ハノーファーの中心にある大きな商店街だ。大抵のものはここにあるぐらい大きい」
へぇ、とユイの興味関心が病院から商店街に移るのを見てリアムは続けた。
「もちろんお菓子や食べ物屋もある。その日はそこで夜飯を買って帰るか」
「ほんと? やったぁ!」
リアムとの生活については既に慣れつつあるが、まだハノーファーについては殆どが未知だったユイの心は舞い上がった。
なんせ魔法の使える国だ。自分の知らない世界がたくさん広がっているのだろう。
頭の中であれやこれやと想像し始めるユイを見て、リアムはふっと笑った後、その眉間には軽い皺が寄っていた。
リアムはさして地理に明るい方ではないが、二ホンという国を聞いたことは全くないため、周辺国ではないことは明らかだ。
ましてや、初めて出会った場所は、立ち入る人が限られている「拒みの森」。間違っても迷い込んでしまうような場所ではない。
――ユイ。明日役所に行った後、どうするんだ?
帰れるのか、もしくは―――。




