第十三章 ハッピーバースデー
5月18日 ハスナの誕生日
「さてと。準備は終わったかな」
部屋を見渡すとパーティでも開くのかってぐらいの飾りつけがされている。
部屋の中央にはでかいテーブルに二つの椅子。
そして、テーブルの中央に16本のロウソクがたった誕生日ケーキ。
主役は今はいない。
本当ならいるはずの存在が今は天村の知らない場所に行っているいる。
天村は自分の力で元に戻した左腕をさすりながら時計を見る。
9時40分
「草野も来ればハスナも喜んだのに」
愚痴りながら冷蔵庫で冷やしているメロンを取り出し、食べやすいサイズに切っていく。、
「どこ行ってたんだ?ハスナ」
「ちょっとした買い物だよ」
袋から取り出したのは二着の服。
「昨日海斗の服と私の服敗れたから同じの買ってきた」
のんきに喋るハスナを見て天村はため息をつく。
今こうしてハスナと会話していること自体本当に奇跡だった。
ハスナが死んだ世界からこの世界から戻ってきた後、天村はハスナに力を使い、生き返らせたらせた。
その時、腕も元通りになりこうして過ごしている。
ただ変わったことは、天村の力が時を戻す力だったとわかったことと、力をつかえなくなったことだ。
ファットメン曰く、初めて会ったとき神力に似た力を感じていたようだが、今は魔力のかけらも感じないようだ。
「その金は俺のだよな」
「海斗のお金は私のお金・・・・・・・嘘だから睨まないで」
「お前の人の金を勝手に使うのはここに来てからだからな。俺以外の金は使ってないだろ?」
「当たり前だよ」
胸を張ってそう断言したものだから「小さいものは張らないほうがいいぞ」というと服が入った袋を顔にたたきつけられた。
「由美はこないの?」
部屋を見渡していない人物の名前をハスナはつぶやく。
「あいつは、今日用事があるんだ。長い用事みたいだから当分は会えないと思う」
本当の理由は別だ。
昨日の一見が影響で草野はハスナと天村に恐怖心が芽生えた。
最後に去る時には、ハスナにももう会いたくない。あんな目にはもう二度と会いたくないと叫ばれていた。
それを言えばハスナが傷つくのは目に見えている。
言うとしても明日からだ。
とにかく今日はハスナに楽しんでもらいたい。
「用事なら仕方ないね。ちょっと寂しいけど、海斗一人でも十分すぎるほどうれしいよ」
笑いながら嬉しそうにしているハスナを見ていると知らないうちに天村も笑っていた。
「じゃあ、始めるか」
「うん!」
ハスナはメロン、天村はクラッカーを持ちあげ、
「誕生日おめでとう。ハスナ」
嬉しそうに笑うハスナ。
目元に浮かぶ涙はうれしさなのか、それとも別の何かなのだろうか・・・・・・




