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日本中のありとあらゆる人が登録し、利用できるような大手質問サイトは、平均して一般的で常識的な―悪く言えばどこにでもいる―普通の人々が回答者であることが多く、数多くのジャンルの質問が出来る代わりに答えがウェブページのコピペであったりするなど、やや信憑性に欠ける等の特徴がある。
とりわけ、オカルトに分類されるであろう今回のケースは普通の質問サイトにポイッと放り込んでみたところで、よい結果が返ってくるとは思えない。
そこで、今回は俺も未だ足を踏み入れたことのない、オカルトなサイトにレッツサーフィン!することにした。
蛇の道は蛇ということで。
でもまあ、今回は思ったよりさっくりとお目当てのサイトが見つかってしまった。
オカルトページ紹介のリンクの中から、魑魅魍魎溢れかえる妖怪図鑑を素通りし、真偽の判別がつかないような体験談ページには目もくれず、例によって表示される商品PRの広告はさすがにサイズの問題から目には留まるがこれもスクロールしていく。要らない情報を切り捨て踏みわけ、最後に残ったそのサイトこそまさに今日の収穫といっても過言ではないものだった。
「…あったぁ…!」
言うなり、椅子から立ち上がってベッドに顔からボフッと倒れ込んだ俺を見て、美穂がいかにも怪訝そうな顔を浮かべた。
「どうしたの?いきなりこの世には幸せしか存在しないんだみたいな満ち足りた表情を浮かべたままベッドに倒れ込まれても、私としては非常に反応に困るんだけど」
…これが世に言うところの温度差というヤツか。
「何その言い方」
「何よー、君は人がわざわざ親切にリアクションまでとってあげたってのに感謝の一つもないの?」
「リアクションされたら感謝しなきゃいけないのかよ」
「別にそうとは言ってないわよ。さっきの君の行動はリアクションしてあげないと悲しすぎたって言ってるの」
「なんじゃそりゃ。まあいい、とりあえずこれ見てみ」
「?」
尚も何か言いたそうな美穂を制し、パソコンの画面を両者共に見えるように向きを調整して彼女を手招きする。
「お悩み…相談室?」
「そ。蛇の道は蛇ということで、その手の専門家に質問してみようと思う」
「ネーミングセンスからしてやる気皆無なこのサイトに?」
…初見からブった斬ってくるとは。いや、確かにやる気なさげだけどね?お悩み相談室なんて、全国にごまんと使われてるような名前だった時点で、やる気の無さはかなり感じ取れたんだけどね?
「や、だってこれしか良さそうなの無かったし」
「対話も出来ますって怪しくない?」
ぐさり。
「い、いや、タダだし」
「タダほど高いモノはないってよくいうじゃない」
ぐさりぐさり。
「ち、近くに住んでるからすぐいけるし」
「ほんとだ。この近場なら夜中に私たちの寝首をかくことも出来そうね!」
ぐさりぐさりぐさり。
「……………」
「ねぇ、黙ってないでなんか言おうよ」
やべえ。鬼畜っぷりがやべえところまできてる。コイツSか?
「…さすがに言い過ぎた?ねぇ、おーいってば……冗談だっての…」
「大丈夫だって…おま…美穂程度の言葉に傷つくほどヤワなメンタルは持ち合わせてないから」
「大丈夫だったんだ。よかった」
お?なにやら普通に心配されてたっぽい…?
「もうちょっと言葉きつめにしても…」
「あれ!?今何やら幻聴が!?」
…最初っから狙いはこれかよ。
「まあ、冗談はさておくとして、相談するの?しないの?」
「冗談かよ…まあ、しようぜ」
「何そのやる気の無さ。私手伝ってあげないよ?症状の説明とか」
「ごめんなさいお願いします手伝ってください」
「あーなんだかお腹減ってきたなー」
「やめてぇえ!そういうのほんとやめて!やる気を根こそぎ刈り取っていくような発言は控えて!」
「じゃ何か食べてからにしようよ」
「………」
彼女の容赦ない口頭での攻撃に、俺はしばし頭を抱えていたが、結果的に「分かった」と力のない返事を返す以外の選択肢は無かった。
「ふぇ、ふぁふぃふぉふぃふ」
「飲み込んでから話してくれ、何言ってんのか分からない」
もぐもぐごきゅんという効果音まで聞こえてきそうな食べっぷりをみせながら現在3つ目のサンドイッチを咀嚼している幽霊少女に対し、俺が昼食にとったのは焼きそばパン一つだった。
頭の片隅に置いておいた自分はあと約1ヶ月後に死ぬという事実が、先ほどのしょうもない言い合いやインターネットでの検索をしているあいだに、どんどん肥大化してきて思考回路を半ば占領してしまっているせいで、あまり飯も喉を通らなかった。
「で、何を質問すんの?」
「何をって…普通に『幽霊に魂吸われました、余命1ヶ月です、どうしたらいいですか?』みたいな質問すればいいんじゃないの」
「ふーん」
そう反応を返すや否や、美穂はまた食事に戻ってしまった。
彼女は俺が何を質問すると思っていたのだろうか?
それに、このままとんとん拍子に事が進んでいけば、彼女が昨日言っていた『契約』とやらを解除することになるかもしれない。その場合、彼女が向かう先は魂の消滅…なのだろうが、そこまで考えていたのだろうか?
「ねぇ食べ終わったんだけど」
「って早いなオイ」
「まあ、なんか早食いのクセがついててね」
にしても計5つものサンドイッチを平らげてしまうとは…早食い以前に大食いなのでは無かろうか?
「で、質問しないの?」
「そう急くなよ。今から行くんだから」
「じゃ先行くね」
そう言うと彼女は俺の反応を待つことなく二階に上がってしまった。生き急いだやっちゃな…と思うが、まあ放っておいてもとりわけ問題にはなるまい。
むしろ問題なのは、食事の量だった。
「まさかこれ全部俺が食いましたーとか言えないしなぁ…誤魔化せねぇよなあ」
誰もいないリビングで一人ぼやき、悲しくなってはぁーとため息をついた。
どうやら俺は、自分の家にとんでもない食客を招き入れていたらしい。
「ねぇパスワードなに?」
自室のドアを開けた瞬間、俺のパソコンに張り付いた美穂から真っ先に言われたのがそれだった。
「あのなあ、パスワードは教えないからパスワードなんだろうが」
「えー」
尚もぶつくさ文句を垂れる彼女をガン無視し、パスワードを打ち込む。
「…!くそっ、三文字ぐらいしか分からなかったか」
「見るなよ」
ってか見てたんかい。
「でもズルいよ君、ワザと違う文字混ぜたりけしたりして一連のパスワードみたいに打ち込んでるでしょ」
「だから見るなっての。ずるくないしね。まあパスワードに関しては昔ヒドい目にあったからな…」
「おーい、視線が明明後日の方向いてるよ」
「うん、あれはキツい出来事だった…だけど俺は耐えたんだッ…あの…地獄に!!」
「何があったかは知らないけど手が止まってるようなら私がいじっちゃうよ」
「あ、マイドキュメントとか見ても無駄だぜ。そこもパスワードがかかってるから」
「ああ!?ほんとだ…どんだけ頑丈なセキュリティーロックなのよ…」
「少なくともそこらへんの無自覚にパソコン使ってる若者やおっさん達には負けてない自信がある」
「でしょうね…」
何故か若干呆れられてしまったらしい。俺マズいこと言ったか…?
疑問を頭の隅に押しやり、パソコンの前に座る。さっきはロックをかけただけだったので、数回のマウス操作でウェブページが表示された。
「…えーと、このサイトだよねさっき君が見てたのって」
「そうそう」
「あ、あった質問用のメールアドレス。これ使えばいいの?」
「ま、そういうこったな」
しばし、その場にはカタカタというタイピングの音以外は聞こえなかった。
途中から美穂も飽きてまたソリティアに戻ってしまい、あとは時折彼女の歓声が狭い部屋にこだまするのみだった。ちなみに、その歓声が聞こえる度にまたしても俺の集中力が(中略)言うまでもない。
「できたぁ…!」
苦労すること十分。完成した文章を目の前にして、今度は俺が歓声を上げていた。
「あーもー詰んだぁ!君ねー、人が集中してるときにいちいち口を挟む暇があったら文章の一つでも作りなさ…って、出来たのね」
「まーな」
「ちょっと読ませて」
…前科棚上げ?これ怒っていいんだよね、どうみても逆ギレっていうか八つ当たりっていうか、むしろこっちが八つ当たりしてやりたいっていう状況だし、まあこれくらいのことはしても許されるはずだ!
「それはそうとしてだな美穂、お前人の邪魔散々しておきながら人に邪魔された途端に自分の利害得失をいきなり主張しだすのは如何なも」
「作り直しね」
「ああああ!お前人の話を聞」
「まあちょっと落ち着いて君の書いた駄文を自分で読んでみて。きっとあまりの物悲しさに泣けてくるから。大丈夫、私が保証するよ」
「あんまりだ…あんまりだよこのやりとり…」
「ほら早速泣けてきた」
「違ぇよ!!」
とりあえず今日もまた連投。
眠いぜ(。-ω-)zzz
そんな感じでアキです。
だんだんここに書くことが投げやりになってきてるような…
キノセイデスネ、ウン
今日は5、6個連投しますん。




