2 治療薬
母上が突然汚いナイフで自分の腕を傷つけた。マリエールは素早く手当てした。抗生物質の人体実験になった。
2 治療薬
母親の怪我は炎症を起こす事もなく治癒した。傷跡は当然残った。母親は、
「抗生物質とあの治療法は凄いわね。抗生物質の効果は信じていたけど数ヶ月は仕事出来ないと思っていたわ。それがこんなに早く復帰できるとは思っても見なかったわ。我が子だとは判っているはずなのにあなたって時々飛んでもない不思議な事するわよね。抗生物質といいあの治療法といいいったいどうやって知ったのかしら。」
マリエールは沈痛な思いで話し出した。
「私にはどうもこの世界ではない別の世界の記憶があるようなのです。前世の記憶というのでしょうか。具体的な個人の記憶があるわけではないのです。ほとんど医療に関する知識です。この世界よりも遥かに進んだ医療の知識です。抗生物質もそうですが様々な治療薬、治療法の知識があります。しかし製薬方法や医療器具、検査器具がないですので再現が難しいですね。ただ鎮痛解熱剤の今この世界で使われているものよりいい物は欲しいですね。このままでは病気でも怪我でも我慢が出来ませんよ。」
母親は複雑な心境のようだ。
「思ってもみませんでした。前世の記憶ですか。あなたは昔から賢かったので不思議には思っていましたがまさか転生者とは思ってもみませんでした。解析鑑定の魔法もあると聞きました。いい薬を見つけて下さい。」
急に他人行儀になったのは仕方ないだろう。抗生物質については図らずも人体実験も終わった。十分な実証がされた。これから実用化するにしてどうしていけばいいだろう。怪我に限定するにしても母に塗ったのはただの塗り薬だ。薬効はほとんどない。消毒薬が必要だ。それから鎮痛解熱剤も必要だ。後医師の資格が欲しい。医師の推薦と国家試験に通れば資格が得られる。
一つの閃きがあった。冒険者になる事だ。薬の大部分は薬草だ。魔獣の素材薬になる事は先ずない。調べる価値がある。それに冒険者の怪我や病気は自己責任だ。安く請け負う薬師頼る可能性ある。それに高ランク冒険者専用の医師がいると聞いた。冒険者の治療をすれば必ず縁ができる。冒険者に成ろう。母上に相談すると。
「ご自分の判断でお決め下さい。外見は10歳でも中身は大人なんでしょう。あなたはいつ転生したのですか。本物のマリエールは死んだのですか。」
もっともの話しだ。娘が転生者なんて信じようがない。
「マリエールは死んでませんよ。生まれ付きです。私はあなたの子どもです。前世はありますが医療関係だけです。思い出して下さい。私は突然変わりましたか。」
母上はまだ納得してないようだが、
「判りました。あなたは私の子どものようです。マリエールの偽物ではないのですね。」
偽物と判断する材料がない。
「偽物ではありません。私は昔からマリエールです。なにも変わりませんよ。私が本物のマリエールです。」
母上は納得してくれたようだ。抱き締めてくれた。自分で言うのはなんだけど。マリエールは可愛い美少女だ。みんなに愛される。母上も勿論だ。今も愛してくれているはずだ。前世があると言ってもそれは変わらないはずだ。
母上にマリエールの偽物と疑われた。マリエールは生まれた時から変わらない。自分が本物のマリエールだと言うと母上も納得してくれたようだ。




