1 薬局
伯爵令嬢マリエールは母親の都合で薬局で暮らすことになった。数々の魔法の適性があり回復魔法は患者の治療に役立った。
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マリエールの身の上は結構複雑だ。父親は大きな勢力を持つ辺境伯、母親は薬師、父親と恋に落ちて結婚してマリエールを身籠ったが貴族の生活に慣れる事ができず屋敷を出た。伯爵は母親に王都に大きな薬局とマリエールに伯爵家の紋章の入った短剣を与えた。身辺警護の女性も2人つけた。結構多額な生活費も支払われている。マリエールには伯爵令嬢としての自覚はない。
薬師の娘として、薬学、医学を学んできた。生まれ持って魔法が使えた。回復魔法とアイテムボックス、複製魔法だ。攻撃魔法や防御魔法も使える。物心がついた頃から回復魔法は使っていた。怪我
人を治している娘の姿を見て母親は、
「人を癒したいというあなたの優しい気持ちに応えて神様がお与えになった魔法よ。大切になさい。」
この言葉はマリエールの心を捉えた。マリエールは回復魔法を使って怪我人を癒したり、薬学、医学の勉強をしたり、他の薬局に行って薬を複製したりして過ごした。
時には母親と妊婦の所に向かった。母親は産婆も兼務しているのだ。出産も佳境に入った。
「マリエール、回復魔法をかけて。」
初産の年若い産婦だ。痛みが酷いのだろう。
「マリエール、産道を軟らかくする魔法かけて。」
回復魔法の応用のような魔法だ。肩こりを和らげるように産道を軟らかくする。
「陣痛が始まっわ。マリエール赤ちゃんを押し出すようにお腹を押して上げて。」
意外とするりと出産した。産婦と赤ちゃんの世話をして産婆の仕事が完了した。
「マリエールのお陰で無事出産できたわ。」
最高の誉め言葉だった。出産時の母子の死亡率の高さは目を覆いたくなるものがある。それだからこそ母はマリエールに産婆の技術を教えたのだろう。こうして体験させるのもそのためだ。何時か回復魔法の使える産婆になって母子を助ける事ができればいいと。
マリエールは抗生物質の製造に取り組んだ。母に抗生物質が何で何ができるか説明した。母は奇異な物を見るようにマリエールを見た。それでも反対はしなかった。抗生物質の製造は青カビを繁殖させる所から始まった。マリエールには解析鑑定の魔法がある。青カビを遠心分離させたり、浮力で分離して解析鑑定を繰り返すのだ。青カビの毒性をなくし抗生物質としての効果が高まるまでそれを繰り返す。ようやくものになる物ができた。動物実験した。効果はてきめんだ。抗生物質の使い方を検討した。注射器、スプレー、塗り薬などを作った。ようやく実用化の目途がついた時、マリエールの目の前で母が汚れたナイフで母自身の腕を切った。マリエールは素早く止血して傷口を洗浄して抗生物質を注射した。傷口を縫い、塗り薬を塗って包帯を巻いた。母は、
「随分用意周到ね。始めから判っていたようじゃない。」
落ち着いた口調でマリエールに語った。
「お母様は動物実験だけでは納得しないでしょう。」
母親は笑った。
「でも不思議な技法を使うのね。傷口を縫いつけるなんて始めてみたわ。」
母親は満足そうにマリエールを見た。
マリエールは抗生物質の製造に取り組んだ。分離と鑑定を繰り返して完成に辿り着いた。母親が汚れなナイフで腕を傷つけた。マリエールは抗生物質を用いて治療した。




