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あの日の風の、その続き 〜戦う公爵令嬢と、王女が選んだ未来〜   作者: 凛花


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第二話 幼なじみ





「遅いぞ、リゼ。」


城の大きな演習場には、すでに近衛騎士団の隊員たちが並んでいた。


その中で、黒髪の男--クロードが、遅れてやってきたリゼを見て眉を顰める。


「お客様が来てたのよ。でも団長の挨拶には間に合ったでしょう。」


リゼが面倒そうにそう返すと、クロードはさらに不機嫌そうに顔をしかめた。



「私語は慎め。団長の挨拶が始まるぞ。」



その声に、空気が一段引き締まる。


中央に立つ団長が、一歩前に出た。



「本日の演習は、2ヶ月後に控えた王女エリシア様の17歳の誕生日式典を想定した警護訓練だ。配置の最終確認も兼ねる。各自、気を抜くな。」


その言葉に隊員たちの表情が変わる。


リゼもまた、身を引き締めた。




--その時、空気が震えた。



周囲のざわつきが、一瞬で消える。


現れた男に、全員の敬礼が遅れなく揃う。





「みな、ご苦労様。」


その短い一言で、隊員たちの背がこれでもかというほどピシッと伸びた。



近衛騎士団を含む、王国の複数部隊を統括する存在。

宮廷護衛隊総長、--ゼン・クラウディア。



リゼの、兄。



ゼンは一度だけ視線を巡らせ、リゼで止めた。



「リゼ、少しいいか?」



その声に、周囲の視線がわずかに揺れた。



「……エリシア様が、至急会いたいそうだ。」









「リゼ!ドレスが決まらないの!」


部屋に入ると、泣きそうな顔で飛びついてきたのはエリシアだった。


ロザリア王国第三王女であり、リゼの幼馴染。



「ドレスなんてなんでもいいじゃない。動きやすいのが1番よ。」



「お前の価値観と一緒にするな。」


背後から冷たい声。


振り返るとクロードが立っていた。



「ちょ、あんたなんでついてきてるの?」


「俺は総長に呼ばれた。」



「兄様ならここにはいないわよ。執務室じゃない?レディが着替えるんだから男は出てって。」



リゼはそう言ってクロードの背中を部屋の外に押し出す。



「あら、別にいいわよ、クロードだもの。子供の頃から私たち、着替えなんて同じ部屋で何度もしてきたじゃない。」


エリシアの発言に、クロードはチラリとリゼを見る。


そして、その瞳を僅かに揺らすと、すぐに視線を逸らした。



「女の着替えを除く趣味はない。リゼ、早く戻れよ。」


そしてそれだけ言い残すと、バタンと扉が閉まった。



「なにあいつ。」


リゼの深底怪訝そうな顔を見て、クスクスと笑うエリシア。


「クロードったら。ああいうところ昔と変わらないわね。」


懐かしそうに笑うエリシアに、つられてリゼの頬も緩む。




ふ、と、思い浮かぶ光景。


城の庭を駆け回る子供たち。


身分も立場も何もわからない頃、

ただ無邪気に笑って、一緒の時間を過ごした、あの頃。


あの頃は、


ずっとこのまま続くものだと思っていた。


――誰も、何も失わずにいられると。


けれど。


(そんなわけ、ないのに)



リゼは、静かに目を伏せた。














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