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9.和也と晴樹-二人一組になって-

60話で終わる予定です。


「カズよ、最近どうなんだ?」


 今は体育の時間である。それもいわゆる[二人一組になって]というやつである。


 実は、和也はこれが一番の苦手である。それは彼が置かれている状況が関係している。彼はクラスの中でもあまり、いや、ほとんど友達と呼べる者がいない。まともに会話するのは達弘と晴樹、たまに久美くらいだろうか。


 だから、


「はーい、二人一組になって」


 と言われるといまだに心臓が高鳴るのだ。


 だが、


「おーいカズよ。一緒にやろうぜ」


 晴樹が必ずと言っていいほど和也に声をかけるのだ。そんな晴樹はクラスでも人気者、といったほうがいいのか、少なくともクラスの中では[中心にいる]そんなタイプだ。


 だから和也はある時、


「どうしてオレの事を気にかけてくれるんだ?」


 と素直に聞いた事がある。確かに保育園からの付き合いだ、それくらい当然だ、と言われてもおかしくはないのだが、


「何言ってるんだよ、親友。きざなセリフになりそうだが[俺とお前の仲]だろ?」


 と笑いながら言われた事がある。


 だから、という訳ではないのだが[最近どうなんだ?]のそのセリフに直ぐに反応出来ないでいた。


「カズ?」


 再度問う。


「ゴメン、ゴメン。聞こえなかったわけじゃあないんだ。ただ答えあぐねていただけで」


「というと?」


 その言葉にまた黙った和也に、


「俺とお前の仲じゃあないか。何でも聞くぜ」


 と続ける。


 和也はしばらく考えていたようだが、


「最近、ちょっと気になっている人がいるんだ」


「それって……」


 直ぐに続けようとする晴樹を遮って、


「そんなんじゃあないんだ。ただ、本当に[気になってる]だけで、色恋沙汰とかじゃあなくて」


「という事は女がらみか?」


「まぁ、当りといえばそうなるんだが」


 そう言われた晴樹がほんの少し黙る。反対を向いていた和也が[どうした?]と聞こうとしてその顔を見た瞬間、ほんの一瞬ではあるがすごい形相になっていたのだ。そう、例えるなら何かに嫉妬している、そんな表情をしたのだ。


 だが、それはほんの一瞬の事で、


「何だ、言ってくれれば。いつでも相談に乗るぜ、親友」


 笑顔に変わっていた。


 ついには和也はその表情の変化について聞けずに体育の時間は終わってしまった。


60話で終わる予定です。

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