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20.だらだらとーく

《1546年》天文15年──土佐・大津城



大津城は天竺花氏の城だった。

長宗我部が総力を挙げて天竺花氏から奪って、長宗我部の占領下にある。


天竺花氏の一族のところ、本家の細川に天竺残党が頼ったのを切っ掛けに、一条が調停に出てくる。


ようは、細川は一条に事態の収拾を任せた、というわけなのです。


大津城の一室。小昼の目の前にはその一条がいます。

部屋には二人きり。もちろん、隣の部屋には爺もいるし一条の殿衆の主従もいます。


今の小昼の格好は普段のそれとは違ってですね、緋色の水干など着ています。


で、もうひとりの方に目線を向けますとこちらは見事な衣冠に烏帽子。


大名行列にいそうなんですが、なんといったって一条ですからね。公家ですよ、公家。


公家装束らしくどこか質が良さげです。


ま、京都の祇園祭の装束の方が高そうに見えるまでには思うので、絹もぴんきりだなぁと思えるのですが。


二人の話すトークは、隣にまず聞かれないように隅に一条房基を追いやって壁沿いに座って仕切り直し。


「で、何が聞きたい?」


「ふむー俺の子、万千代はどうなる?」


「一緒よ。にーさまに破れて逃げた先で刺客に襲われ、その後も生き残ったけど。代償として左手がなくなったから長くはいきれなかったでしょうね……大体今から三十年後ってとこかしら」


「よし、国親殺してやる。長宗我部めを滅ぼさん!」


「待て待て。それも全ては蓋であり、封が出来たカリスマ!が居なくなったからでしょー。あっさり、自殺しちゃうんだもん房基」


「な、俺が?自殺……だ、と?ありえぬ」


「ま、歴史の歪みかも知れないし。勝者の改編かも知れないし。深くは知らないけど、度重なる戦に疲れて自殺したんだって。人生の絶頂のはずなのにね、官位だって正三位を受領してるんだから……謎だわね?」


「んんー不思議であるな」


「だから、にーさまに滅ぼされないために。自殺なんてすんなよ」


「するか、本家も俺が居なきゃ飢えるような有り様なのだぞ!俺がやらなきゃ誰に頼るのだ、弟らも甥や姪たちもあまねく全て俺が食わせてやってんだからな」


「はいはい。でも、死んじゃうんだから。死ぬ気が無いから死なないって事もないでしょーに──」


「謀殺。……か?しかし、いずれの誰が何ゆえ俺を?」


「さあねー……でも。大内、大友もこれから大変なのよ。ひっくり返るクーデターが待ってるからね」


「くーでぃたー……何であるか?それは、知らぬ」


「謀反、こう言えば判る?」


「謀反……、ありえぬ。大内氏は十ヶ国を束ねる太守であるし、大友氏は九州の支柱。いかほどの謀反などで揺らぎはせぬ!無礼ではないか!」


「しぃっ!声荒げないで。信じなくていいけどそうしたら、にーさまに滅ぼされる未来が待ってるだけだけどね!」


「うぬ。……大内、大友との縁故を持つ一条を謀反の前に無力化する、か。……読めぬ謀ではない。……のか?うぬぬ、それは尼子の仕掛けであるならば得心もあろうな。して、いかなる仕掛けなのだ?俺は、津野を討ち。大平を従え、目の前にあるのは本山と大平の属内勢力どもくらいなのだが」


「例えば……。例えばよ?謀聖・尼子経久から、西国を切り崩す策を与えられていた弟子がいたとしたら?」


「謀聖の考えを真似出来るものが居ないから尼子経久は謀聖と呼ばれたのだ。有り得ぬ」


「けど、さぁ……房基ォ!

大内も!大友だって!

尼子経久の下に着いてた、たった一人の策に操られてボン!と、燃え上がって爆ぜたんだなぁー。たった一人によ?」


「まこと凄いことよ、誰ぞ?」


「そいつ……は──毛利元就!」


「毛利と言うと、有田城下の戦いで武田元繁を討ったという。あの──」


有田城下の戦い。有田城外の戦いとも、有田中井手の戦いともいうこれは言ってみれば隣国の太守だった大内義興から『お前のとこだらしないな。やられてばっかりでみっともない。ちょっと厳島で調子に乗ってるお前んとこの部下を黙らせてこいよ(異訳)』て檄文を貰って後に引けなくなった安芸の守護だった、いうなれば守護ってゆーのは知事みたいなものかな。

権力がその地域一帯で一番強い。

その安芸国守護だった武田元繁が上司である大内義興に謀反。

大内義興の支配からこの機に逃げようと大内義興から嫁入りしていた娘とも離縁。

大内義興の敵である尼子経久と手を組んで奪われた土地を回復しようと画策。

まず手始めに、一昨年に毛利元興(元就の長兄ですでに死亡。大内義興の影響下)に奪われた領地である有田城を取り返すために、有田城と有田城下の町を包囲したことを発端とした合戦。


毛利元就は初陣でもあるこの戦いで、武田方の有力武将だった熊谷元直を首ちょんぱして名を上げた。


その熊谷元直くらいの有力武将を失ったからか、総大将武田元繁も毛利元就に破れました。


そんなこんなで、数で圧倒していた武田軍が毛利軍の強襲に倒れたこの有田城下の戦いは西の桶狭間(諸説あり)と呼ばれています。


武田軍五千、に対して毛利軍千二百。

戦争までの経緯は軽く説明しましたが──もっと複雑でごちゃごちゃしたもので、毛利軍の内三百は吉川軍だったり。

武田元繁は猪武者よろしく毛利元就の挑発のすえに、渡川途中に弓矢の一斉射撃に倒れたそうですよ。


「その毛利元就に唆された陶隆晴が大内義興を殺しちゃうのよ。それで、その陶隆晴を毛利元就がおいしく戴きましたってわけ」


「陶といえば。稚子の頃より大内殿に仕えし忠義の者。まさか、そのような……」


「あと数年。天文20年の夏に大内義隆は死ぬ、これは今のままなら確定」


「にわかには信じがたい。大内、大友、一条を謀だけで蹂躙できるものか……?」


「房基ォ……あんたのは確定してない。だって、これは例えば、例えばの話。あんた、自殺しちゃうんだから謀ごと関係ないもんね。暗殺の線も消せないけどさ。あーあと、娘を伊東に嫁がせると伊東に引き摺られて、連座して大友が滅んだんだったわ。そこも、頭にいれとくといい」


「伊東……伊東と言えば義祐か?」


「祐益だっけ?そんな名無しのマイナー君の嫁入りですよ」


「確かに、一条と伊東は縁がある。信じれない話ではない。しかし、伊東の連座で大友が滅びるとはいかに?」


「島津を相手に伊東、相良、阿蘇、大友。あの辺りはまるごと負けっぱなしになるのよ。そうそう、竜造寺や有馬も負けるわ」


「それだけが組めば、どのような敵にも負けぬと思う、ぞ」


「組めば?組めば……うーん。組んでない。各個撃破。大友なんて他所から援軍を十万も引き連れて来たのに負けるのよ。……あ、十万は言い過ぎかな。でもそれくらいの援軍を全国各地から集めて負けたんだから!」


「島津、それほどの者か。大隅の港は使っておるから少しは話せる縁がある」


「その島津じゃなくて。島津忠良の方の島津だから」


「分家の方か。分家同士でゴタゴタしているとは聞いていたが。ふむ」


「鉄砲も使い方が旨いし─」


「鉄砲?とは、何のことじゃ?」


「種子島って言えば判る?」


「種子島、とな。……ふははは。あれは鳥撃ちに使うものよ、近寄れば当たるだろうし強いのは認めよう。……弓でそれより距離を取り皆殺しに出来ると聞くぞ」


「情報が遅い。鳥撃ちって……。あれは数揃えて使うものよ。弓矢だって万は備えるでしょう?」


「我が家にはそこまでの戦力が無い。ゆえに、弓矢は数千もあれば十分な数だな」


「それだって数千。そうでしょう?」


「な、う……うむ。弓が千なれば種子島を千。……か。しかし、種子島は一挺で武将が一人雇える。値が張るものなのだぞ?」


「作れば。作れば部品代で作れるのよ、良かったわね。安上がりで」


「作る?その技術……秘中の秘と思うが」


「未来にはいくらでも開示されてて読み放題。ネットにだって上がってたわよ」


「読み放題とは凄いの。して、その、ねっとぉとは?」


「外国……南蛮だって、明帝国だって蒙古だって高砂、天竺の国々だってネットで繋がって情報がやりとりされたり、話したりできるのよ」


「話せる?天竺とな、南蛮とな、明帝国となぁ!?」


「落ち着け。房基ぉ、そうなの、話せるよ。未来には。何時だって、どこの誰とだって。まー厳密にゆーと電話で、TEL番号必要になっちゃうんだけど」


「それは……」


「ん?それは……?」


「貿易が捗るの。船の心配なく荷を渡せるようになるわけか」


「船の上とだって繋がるわよ、もちろん」


「未来とは恐ろしくも思え、素晴らしいとも思え。魂が抜けてまた戻ってくるようになるとは」


「違う、違う。違うから。房基、あんたの思ってるのと違うよ。きっと。繋がる、話せるってゆーのは電波を通じてであって……」


「電波?とは、……なんだろうか?」



房基とはその後も理解させるのに大変な、平成にある当たり前の文化レベルの話をした。

その結果、房基の養女になることになったんです。

あれ?どーしたらそうなるの。


「俺の嫁にしてやる」


「嫌よ」


「望みの物は手に入らぬ物は無いぞ。ギヤマンの湯飲みなどどうであろうか」


「コップが嫁入りの切っ掛けでした。……なんて、心揺れるはずないでしょーよ!」


「では、船ひとつ。安宅などどうじゃ」



「末次船が出して貰えたとしても嫌」


「船でもダメか?では、城をやる。武士に憧れていたというそなたにぴったりではないか。決まりだな!」


「城か。父上は喜ぶかもだけど、まだダメね」


「俺が嫌いか?」


「そもそも、会えればいいなレベルの奴だし」


「レベル?なんぞそれは」


「英語。大英帝国の言葉。そもそも、大友の嫁がいて側室になれって?」


「では、裔子はどうじゃろう。俺の子になれ。俺はお前の頭の中身が欲しい」



一条房基……官位左近衛大将。一条房冬の長男。土佐一条氏4代目当主。妻は大友義鑑の女。房冬の死により4代を継いだ房基を土佐の国人衆は侮っていた。 まず謀反の動きを見せた津野氏を三年ほど伊予と行ったり来たりしながら降伏させる。その勢いのまま大平氏・波川氏・片岡氏・能津氏を降し高岡郡全土を手中に収めた。房基が死ぬと、高岡郡は一条の勢力下から外れてしまう。一条家が戦国武将の真似事を始めたと一条本家はこれを嫌ったという。権威を多額の寄附で買い、武力で伊予の一部、土佐西部を制圧した半武家と公家のハイブリット。

作中では自殺しないし、津野氏しか制圧出来てない。



ここまで読んでくれてありがとう!

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