ラプンツェルと内政回避
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「……この街の運営や収益の管理に、私が関わるつもりはないわ。私と私の周囲の者に危害を加えない、不利益になるような行動を取らなければ……だけど」
連れてこられたギルドマスターの部屋で、ドキドキしながらソファに腰掛け偉ぶる私。居並ぶ見知らぬ亜人たちの前で告げた内容を聞いて、トトやユユは不満顔をしているのが視界の端に見えた。対してマーちゃんとポルルはやっぱり、みたいな納得の表情を浮かべている。
「だって、これまでギルドと街の亜人で協力して上手くやってきたのでしょう?ならわざわざ介入するべきではないと思うの」
言い訳じゃないけど、一応そう付け足しておく。
それに、私の外見はどうあれ実際中身は一般人だから急に領主の真似事なんか押しつけられても出来るわけがないじゃない?第一、せっかくだから冒険したいし。
「年に一度、土地の所有者としてどの様に管理されているのか確認はさせてもらうつもりよ。不正があればそれなりの方法で報復させてもらう。それからこれまで街から入っていた貸料も、契約内容は見直した上で継続して収めて貰うわ。その外細々とした内容は後日つめていきましょう」
「ふーむ、儂のとこの者は鍛冶仕事を主として居るのだが、鉱山からの輸送なんかは守って貰えるんじゃろうか?勿論金は払う!命には代えられんからな」
「ん?……あー!あなたゴル君じゃない?」
妙に厳ついお爺さんが混じってるなと思ったら、ドワーフ族だったのか。いや確かによく見ればもじゃもじゃでずんぐりむっくりのむきむきではあるけどさ、身体が大きすぎないか?
「おおっ!思い出してくれたかっ」
いや、ポルルガン―ぽちゃの時も思ったけどさ。画面上と実物じゃあ面影も何もあったものじゃない子が多すぎな気がするんだけど。
「……」
身体は巨人、表情は嬉しい事を隠せない子供のようなドワーフのゴルゴガン。
画面上では、ラプンツェルと大して変わらない大きさだったのになぁ。
「…何だか見ない間に随分大きくなったのねぇ」
しみじみと息を吐き出しながらそう返すと、ゴルゴガンは豪快に涙の滲む目元を拭って笑いかけてくれた。
「ぐぉー!思い出してくれたかっ。そうか、ワハハハハァ」
「もうっ。嬉しいのは分かるけど、声が大きいのよね!」
「……マール。今くらい許してあげよう。僕らだって同じなんだから」
同じ室内に、私とブーちゃんの子供たちが五人。
マールもポルルも、ゴルゴガンもトトもユユもみーんな変わらずに私やブーちゃんを想ってくれている。私も、同じ想いを返すことが出来るだろうか?
「ゴル君、今はどうしているの?」
「あ?あぁ、今はドワーフ族を束ねる族長を任されとる!嫁も子もいるが、母ちゃんに挨拶させてねーのが心残りでなぁ。やっと会わせられるってもんだ!」
結婚、嫁、子供……?え?マーちゃんに引き続き、孫ですか?
二百年って、結構長いんだなぁ…なんて当たり前の事をしみじみと感じ入る次第です。いや、マジで!
「……それは、楽しみね」
内心、寂しいような、悲しいような、嬉しいような、複雑な想いを抱きながら、優しい微笑みを浮かべる私は……ちゃんとゴル君が胸を張って家族に紹介できるお母さんになれているだろうか?あーぁ。ほんと、この歳でお婆ちゃんかぁ。何だかなぁ……。
「母ちゃんが戻ったんなら、俺達の山と街との距離もあってないようなもんだしな!人間が居なくなりゃ、街に住みたがる身内もでてくるだろぅぜ」
「街の事に一々口を挟むつもりはないわ。移り住みたいなら、マーちゃんなり、街の住人に話を通してからにしなさいね?」
「おう!わかってらぁ」
豪快に笑うゴル君に、私も自然と笑顔が浮かぶ。
ふぅー。それにしても、これで取り敢えず内政についてはわざわざ介入しなくて良くなったけど、まだまだ話し合わなきゃならないことが山積みだわ。
目ざとく私の疲れを察知したマーちゃんが、そぅっと差し出してくれた紅茶を一口飲んで一休み。
「次は、今避難してる街の人をどうするか、ね?」




