ラプンツェルのテント
お気に入り152件!ありがとうございます。
種族の違う子供たちが、真剣な表情をして顔を付き合わせ、ギルド内に避難している領民たちへの支援について話し合っている。
「森の主さまがお気持ちを静められるまでは、流石に危険すぎてこのギルド内から彼らを出すわけにはいきません」
「それに、今日の夕方にならないと、人間たちも居なくならないのよね」
「あー、それと……」
話し合いを輪の外側から眺めつつ、伝えるべきことを思い出した。
「そういえば、これだけは頭に入れておいてほしいんだけど、これから街の規模はかなり小さくなると思う。リルケが解放された以上、森の守りも万全だし、森の規模を元に戻すためにも必要ない外壁は全て崩さないといけないしね」
「外壁を、全て……ですか」
「そうしたら、また森の主さまが木を植えるわけね」
「人間が退去した後、街の4分の3は空き家になりますから、なんとかなるでしょう」
改めてギルド長の部屋を出て見ると、一階のフロアにも足の踏み場がないほど避難した亜人が座り込んでいた。
「部屋を用意している途中なのよね。とにかく、部屋が足りなくて、男は皆廊下や一階のフロアに雑魚寝よ!まぁ、天気もいいことだし、体力のある冒険者は屋上に放り出して見張りをさせといたら良いのよね!」
「女性や子供は優先的に会議室や小部屋など、仕切りのある部屋に泊まれるよう職員が走り回っているのですが、何分人数が多いもので時間がかかっているのです」
先頭を歩きながら、私へ向かい現状報告を行う二人に相づちを打ちながら周囲を観察していた。どうやら避難途中怪我を負った人は居なさそうで、皆不安そうな表情をしているものの体調が悪そうな人も見られなかった。
「明日には自宅へ帰してあげられると良いわね。まぁ、状況が落ち着いていればだけど」
「森の主様との話し合いが上手く行けば良いのよね!」
「どうでしょう?我々をどう思っていらっしゃるか分かりませんし」
リルケは一度交わした約束を破るような相手ではない。人見知りで、小難しい性格をしてるし、森の奥なんかに住んでいるから仲良くなるまでの難易度が高いだけで、一度親しくした相手には義理堅い性格をしているのだ。まぁ、それもリルケが冷静であればのお話しだけれど。
「……大丈夫。リルケは私を攻撃しなかったし、何より敵とそうでないものをちゃんと選り分けていたもの。それよりも、ここの溢れ返ってる人達、魔法のテントがあれば便利よね?確か、私の塔か、店の倉庫に余ってるのがあったと思うんだけど」
平均より低い私よりも、幾分か低いところにあるトトの頭に向けて問う。
「あぁ、店の倉庫に埃を被った物が幾つかありましたね」
流石トト、と言ったところか。店の在庫に留まらず、私が何となく使うかもと思って結局買って使わなかったアイテムも覚えててくれてた。
そして、その答えを聞いて喜びの声を上げたのはマーちゃんで、嬉しそうに尻尾をゆらゆらさせながら、「あらぁ!それは助かるのよねっ」なんて、早速お店まで取りに行く気でいるから、私も「仕方ないなぁ」なんて呟いてにこりと笑う。
「でも、今となってはなかなか手に入りにくい品ですが……使用しても良いのですか?」
ポルルは、小さな白い耳をへにょりと曲げて聞いてくる。壊したときに弁償できない事を懸念している様子。
「いいのよ。あれは古い型で、新しいテント持っているから」
ま、新しいって言っても、二百年前のお品だけどね。
▲
あれから、トトが森の中にある小屋まで飛び、鏡を使って店へ戻って十数個ほどの古いテントを運んできた。
「……あらぁ~まぁ」
思わずマーちゃんみたいな反応をしてしまった。本当に、改めてみると、やっぱり汚い。トトやユユがお掃除をしてくれていたとはいえ、布製のテントだから白い色が所々黄ばんでいる。その
黄ばみが、品物の古さを一層引き立てていた。
「中は無事?」
「えーと、一応一つ設置して確認した方が良さそうですね」
ブーちゃんやポルル達は、忙しそうにギルド内の揉め事や相談に対応する為に部屋を出て行き、ゴル君はどうやってか知らないけど現状を山に住む仲間に連絡するとかでどすどすと足音を立てながら行ってしまった。そうして残された私とトトとユユは積み上げられた黄ばんだテントを前に、これ、本当に貸し出すの?と頭を悩ませていた。
「せんせー。これ、どうやって組み立てるんですか?」
ユユは余り一人でお使いに出したことがなかったから、きっと使ったこたもなさそう。それに比べてトトは……いつもいつも、無理ばっかり言って、辺境に生えてる薬草とか取りに行ってもらってたからもう手慣れたもので。黄ばんだテントも何のその。
「これは古いとはいえ、魔法のテントですからね。魔法の使える者なら魔力を通すだけで開くようになっているんですよ」
布に手を当てて、パッと簡単に小さなテントを完成させてしまった。
「あ」
「あぁ、そうでした」
「あちゃー」
そして、完成したテントを改めて見て、気づいたこと。それは……どうみても、入り口が小さいな。
「これ、」
……あ、これ、妖精用のテントだった。




