2026年 誕生日スペシャル 瞬崎カルマ編「もう一度だけ、高校生」
誕生日という日は、人によって特別だったり、何気ない一日だったりする。誰かと過ごす人もいれば、一人静かに迎える人もいる。
けれど、何気なく始まったその一日が、思いがけない再会や、懐かしい記憶へ繋がることもある。
七月七日。
これは、一人の教師が少しだけ昔へ戻る、そんな一日。
朝の光が、カーテンの隙間から静かに差し込む。
七月七日。窓の外では蝉が鳴き始め、夏の訪れを知らせていた。
ベッドサイドに置かれた時計へ視線を向ける。
「……六時か」
ゆっくりと体を起こし、大きく伸びをする。
今日は休日。学校へ向かう必要もなく、朝練の時間を気にすることもない。
だからといって寝坊する性格でもない。
長年の習慣というものは、休日になったくらいでは変わらなかった。
洗面所で顔を洗い、冷たい水で眠気を追い払う。鏡に映る自分を一瞥すると、小さく息を吐いた。
「また一つ歳を取ったか」
そう呟いた声には、どこか穏やかな響きがあった。
誕生日。
若い頃ほど特別視することはない。
それでも、嫌な日では決してない。
むしろ、少しだけ嬉しい。
そんな感情を胸の奥へしまい込みながら、瞬崎はキッチンへ向かった。
棚の奥から取り出したのは、一つのガラス瓶。中には数種類のコーヒー豆が保管されている。
だが、それは市販のブレンドではない。すべて、自分自身で選び、配合を何度も調整して辿り着いた、瞬崎カルマだけのブレンドだった。
「今日は……少し深めにするか」
独り言を漏らしながら、豆を量る。電子制御のコーヒーマシンも、ボタン一つで淹れられる便利な器具も、この家にはない。
カルマが好むのは、最初から最後まで自分の手で仕上げる一杯だった。
豆をミルへ入れる。ハンドルをゆっくりと回すたび、ザリ……ザリ……と心地よい音が部屋に響く。
挽きたての香りが少しずつ広がり、まだ静かな室内を満たしていく。
「……やっぱり、この香りだな」
自然と口元が緩む。
お湯を沸かす。勢いよく沸騰させるのではなく、温度を見ながら火加減を調整する。
ドリッパーへフィルターをセットし、挽き終えた粉を静かに入れる。
表面を軽くならし、ケトルを持ち上げた。
一投目。
ほんの少しだけお湯を落とす。粉全体がゆっくりと湿り、ぷくり、と小さく膨らんだ。
そのまま数十秒、豆が静かに息をするのを待つ。
焦る必要はない。急いで淹れたコーヒーは、急いだ味になるから。
カルマは昔から、そう考えていた。
二投目。
細く、細く、円を描くようにお湯を注ぎ続ける。
一定の速度。
一定の高さ。
一定の量。
吹奏楽の指揮にも似た、ぶれないリズムで、琥珀色の雫がサーバーへ落ちる。
ぽたり。
ぽたり。
静かな朝に、その音だけが優しく響いていた。
やがてカップへ注がれたコーヒーから、柔らかな湯気が立ち上る。カルマは香りを確かめるように目を閉じ、一口だけ口へ運んだ。
「……うん」
苦味のあとに広がる、ほんのわずかな甘み。
何度も試行錯誤を重ね、自分だけの配合へ辿り着いた一杯。誕生日だから特別なことをするわけではない。
いつもと同じ朝。
いつもと同じ一杯。
その「いつも」があることこそ、瞬崎にとっては何より贅沢な時間だった。
コーヒーカップを静かにソーサーへ戻す。
窓の外では、相変わらず蝉の鳴き声が響いていた。
静かな朝。
せっかくの休日だ。何か番組でも見ようか。
そう思い、テーブルの上に置かれたリモコンへ手を伸ばす。
――その時だった。
「……ん?」
カウンターの端に置かれた一通の封筒が、ふと目に入る。
見慣れた茶色の封筒。何気なく置いたままにしていたはずなのに、なぜか今日は妙に気になった。
手を止め、その封筒を手に取る。
宛名には、自分の名前。
裏返すまでもなく、誰から届いたものなのか思い出した。
「そういえば……」
数日前。
学校から帰宅した日の夕方、ポストに入っていた一通の手紙だった。
その時は封筒だけ確認し、テーブルへ置いたままになっていたのだ。
ゆっくりと封を開き、便箋を広げる。そこには、どこか昔と変わらない、懐かしい字が並んでいた。
瞬崎へ
久しぶり!
元気にしてるか?
突然だけど、高校の同窓会を開くことになった。
卒業してから何年も経つし、「そろそろみんなで集まろうぜ!」って話になってさ。
お前、仕事が忙しいのは分かってるけど、今年だけは何とか顔を出してくれないか?
当時のメンバーも結構集まる予定だ。
もちろん、あの頃一緒にバンドをやってた連中も来る。
もし楽器をまだ触ってるなら……久しぶりに一曲くらいやるか?なんて話まで出てるぞ。
日時は七月七日、午後一時。
場所は長野市民会館 多目的ホール。
返事はなくてもいい。
来られそうなら、ふらっと来てくれ。
お前とまた音を合わせられる日を、みんな楽しみにしてる。
─悪友・紀久
午後十二時。
結局、行くことにした。
朝、あの手紙を読んでから、ずっと考えていた。
行くべきか。
それとも、このまま断るべきか。
高校時代の仲間と会うのは、何年ぶりになるのだろう。
懐かしい顔ぶれを思い浮かべるたび、自然と足は止まってしまっていた。
「……考え過ぎたな」
小さく苦笑する。
気付けば時計の針は正午を回っていた。悩んでいた時間が長かったせいか、なんだか少しだけ時間を無駄にしてしまったような気分になる。
玄関で靴を履き、鍵を閉める。
車へ乗り込むと、エンジンをかけた。
同窓会の会場へ向かう――その前に。瞬崎には、どうしても立ち寄りたい場所があった。
しばらく車を走らせる。見慣れた街並みを抜けた先で、ゆっくりと車が止まる。
フロントガラスの向こうに掲げられていたのは、一枚の案内板。
**都幾川第一病院。**
瞬崎は静かに車のドアを開けた。
そうして車を降りた瞬崎は、迷うことなく病院の中へ入っていく。
受付の前を通り過ぎ、静かな廊下を歩く。
この道は、もう何度歩いたか分からない。
案内板を見る必要もない。
足は自然と目的地へ向かっていた。
やがて、一つの病室の前で立ち止まる。扉の横に掛けられたネームプレート。
そこには、静かにこう記されていた。
**瞬崎**
小さく息を吐き、ゆっくりと扉を開ける。病室の中は、昼間とは思えないほど静かだった。
窓から差し込む柔らかな陽射しが、白いカーテンを揺らしている。
その中央。
一つのベッドの上で、一人の少女が静かに眠っていた。
まるで、少し長い昼寝をしているだけのようだった。
その姿を見た瞬間、瞬崎の表情がわずかに崩れる。
「……音色」
思わず、その名前が口をついて出た。
ゆっくりとベッドのそばまで歩み寄る。
眠る少女の手を、そっと握る。
温もりはある。
けれど、その瞳が開くことはない。
瞬崎は静かに目を閉じた。
一筋の涙が、頬を伝う。
「音色……もう、あれから七年ぐらい経つのか」
七年前の事故。
あの日から、娘の時間だけが止まってしまった。
それでも瞬崎は、こうして時間を見つけては病室を訪れ続けている。
「今日はな、俺の誕生日なんだ。」
少し照れくさそうに笑う。
「もう祝われる歳でもないと思ってたんだが……実は結構嬉しいもんなんだよ」
返事はない。
それでもカルマは、いつものように話し続ける。
「学校も相変わらずだ。部員たちは元気だよ。毎日騒がしくてな。俺の言うことなんて、聞いてるんだか聞いてないんだか」
ふっと笑みがこぼれる。
「でも、いい子たちばかりだ。大会も近い。みんな、本当によく頑張ってる」
少しだけ言葉を切る。
「それと……響。あの子は、やっぱり特別だ。天性の才能っていうのは、ああいうののことを言うんだろうな」
静かな病室に、瞬崎の声だけが響く。
「お前にも、一度聴かせてやりたかった」
その言葉は、どこか震えていた。瞬崎は音色の寝顔を見つめる。まるで今にも「お父さん」と笑ってくれそうな、変わらない表情。
「……また、一緒に音楽がしたいな。」
ぽつりと漏れた本音は、誰にも届かない。
しばらく無言の時間が流れた。瞬崎はゆっくりと立ち上がる。
ふと、病室の奥へ視線を向けた。
そこには、大切に立て掛けられたユーフォニアムのケース。そして、そのすぐ隣に置かれた一本のスティックケース。
瞬崎は静かに歩み寄る。
ケースを見つめたまま、小さく深呼吸した。
「……音色。今日だけは、許してくれ。」
そう呟き、ゆっくりと手を伸ばす。ケースから取り出したのは、一組のドラムスティック。
大学時代、何度も握った相棒だった。
しばらくその重みを確かめるように見つめると、瞬崎は静かにスティックを握り直す。
「行ってきます」
最後にもう一度だけ音色へ微笑みかける。
そして病室の扉を静かに閉めると、ドラムスティックを手にしたまま、同窓会の会場へ向かった。
午後一時。
車は長野市民会館の駐車場へゆっくりと滑り込んだ。
エンジンを切り、ドラムスティックの入ったケースを持って瞬崎は車を降りた。
会場の入口には、すでに多くの人が集まっている。
「あ、久しぶり!」
「全然変わってないじゃん!」
あちこちで再会を喜ぶ声が飛び交っていた。
瞬崎は静かに会場へ足を踏み入れる。視線を巡らせると、懐かしい顔が次々と目に入った。
「……あの人も来てるのか。あれは、確か……」
名前も顔も、不思議なほど覚えていた。高校を卒業して何年も経つというのに、一人ひとりの面影は記憶の中に残っている。
だが――。
「……えっと。すみません、どちら様で……?」
一人が恐る恐る声を掛ける。
それをきっかけに、周囲の視線が一斉に瞬崎へ集まった。
「誰……?」
「先生?」
「いや、違うよな……。」
困惑した空気が広がる。瞬崎は小さく苦笑した。
「瞬崎カルマですが」
その一言で、会場の時間が止まる。
「…………え?」
「しゅ、瞬崎!?」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
驚きの声が会場中へ響き渡った。
「やーっ!まさか本当に来てくれるとは思わなかったわ!!」
瞬崎の肩をバンバンと叩きながら、大声で笑う。
「久しぶりですね、紀久さん」
「久しぶりだな、じゃねぇよ!」
「何年ぶりだと思ってんだ!」
「てかなんでそんな敬語?」
頭の先から足元までじろじろと見回されている。
「変わりすぎじゃね!?高校ん時より何倍もかっこよくなってんだけど!」
「お前、芸能人でも始めたのか!?」
周囲からも笑い声が上がる。
「それな!」
「私も誰か分かんなかった!」
「ほんとに瞬崎君なの!?」
「めっちゃイケメンになってる!」
「キャー!」
「高校の頃もモテてたけど、今もっとヤバいじゃん!」
紀久は腕を組みながら、うんうんと大きく頷く。
「いやぁ、これは反則だわ。」
「俺なんか普通のおっさんになったのによ!同じ年月過ごしてこれかよ!」
「いや、まだ三十年程しか経ってませんけど」
瞬崎は苦笑しながら肩をすくめる。
「あと、同じクラスメートなんだから、もっと気楽で行こうぜ」
ひとしきり再会を喜び合った、その時だった。
「なぁ!」
一人のクラスメートが待ちきれないといった様子で手を挙げる。
「せっかくカルマが来てくれたんだから、もうやっちゃおうぜ!」
「おっ、それだ!」
「賛成!」
「俺もそれ待ってた!」
「まさか……」
瞬崎が何かを察したように眉をひそめる。しかし、その予感は見事に的中した。
「ほらほら!」
「逃がさねぇぞ!」
「今日は主役なんだから!」
あっという間に両腕を掴まれる。
「ちょ、待てって」
「早速見せてくれよ!」
周囲が満面の笑みを浮かべる。
「高校時代の、あのバンドを!」
「もう準備は済んでるからさ!」
「ドラムも全部セッティングしてある!」
「お前が来るって信じて、朝から準備したんだぞ!」
「……最初からそのつもりだったのか。」
「当たり前だろ!」
会場中から笑い声が上がる。
「カルマのドラムなんて、卒業以来聴いてねぇんだ!」
「今日しかない!」
「頼む!」
「一曲だけ!...いや、二曲!」
「俺らの思い出だろ?」
その言葉に、瞬崎は一瞬だけ黙り込む。
やがて、小さく息を吐いた。
「……まったく。」
苦笑しながら肩の力を抜く。
「本当、みんなには敵わないな。」
「よっしゃー!」
「決まり!」
そのまま背中を押されるようにステージへ連れて行かれる。
そこには、すでにドラムセットが組まれていた。
高校時代と変わらない配置。まるで、この日のためだけに時間が止まっていたかのようだった。
譜面台には二枚の楽譜が乗っていた。
瞬崎は受け取り、目を通す。
一枚の楽譜の曲名に目が止まった。
「……これって」
「覚えてるだろ?」
紀久がにやりと笑う。
「俺らの思い出だ」
瞬崎は楽譜を閉じると、小さくため息をついた。
「……仕方ない」
そう呟き、静かにドラムチェアへ腰を下ろした。
ステージ中央。
一人の男がマイクを握ると、勢いよく腕を突き上げた。
「みんなぁぁぁぁぁ!!」
会場中の視線が集まる。
「盛り上がってるかぁぁぁぁぁ!!」
「おおおおおぉぉぉーーーっ!!!」
大きな歓声が響き渡る。
「声が小さいぞーー!!盛り上がってるかぁぁぁぁぁ!!!」
「イェェェェェーーーイッ!!!」
手拍子が鳴り響き、会場の熱気は一気に高まっていく。
「よぉーーし!!今日はただの同窓会じゃねぇ!!この日のために集まった伝説のバンド、Blue Pulseが――」
一度言葉を切る。
そして、大きく息を吸い込んだ。
「十年ぶりに復活だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「キャーーーーー!!」
「待ってましたーー!!」
「うおおおお!!」
「それじゃあ紹介するぜ!!ギター!! 紀久ーーー!!」
「イェーーーイ!!」
「ベース!! 淳宏ーーー!!」
「うぉぉぉ!!」
「キーボード!! 誠一郎ーーー!!」
「待ってましたぁ!!」
「そしてぇぇぇぇ!!!」
会場の期待が一気に高まる。
「この男が帰ってきたぁぁぁぁぁ!!!」
ステージ後方、ドラムセットへスポットライトが当たる。
「ドラム!! カルマァァァァァァァ!!!!」
「うおおおおおおおおおお!!!」
「キャーーーーーー!!!」
「カルマーーーー!!!」
「待ってたぞーーーー!!」
「最高ーーー!!!」
瞬崎は照れくさそうに小さく頭を下げる。その姿だけで歓声はさらに大きくなった。
「よぉぉぉし!!」
「それじゃあ復活ライブ一曲目ぇぇぇ!!!まずは、この曲からいってみようぜぇぇぇぇぇ!!!」
会場の照明が少し落ちる。
ステージ上の全員が楽器を構えた。
瞬崎はドラムスティックを静かに握り直す。そして、懐かしい仲間たちと視線を交わした。
あの頃と同じだった。
ワン、ツー、スリー、フォー!
軽快なドラムが会場へ弾ける。それを合図に、ギターが、ベースが、キーボードが一斉に重なった。
一曲目。
『青空ブラスビート』。
高校時代、文化祭やライブハウスで何度も演奏した、思い出の一曲だった。
「うおおおお!!」
「懐かしい!!」
「このイントロだぁぁぁ!!」
会場から歓声が上がる。
瞬崎のスティックが、リズムを力強く刻む。
ブランクなど感じさせない。むしろ、教師として、指揮者として、そして数え切れないほど音楽と向き合ってきた年月が、その一打一打に深みを与えていた。
紀久が笑う。
「あぁ、やっぱこれだよ!カルマのドラムが入ると違う!」
全員が自然と笑顔になる。
昔と変わらない音。
昔とは少し違う自分たち。
それでも、音を重ねた瞬間だけは、あの日の高校生に戻っていた。
曲がクライマックスへ向かう。
最後のフィルイン。瞬崎のスティックが鮮やかに駆け抜け――
ジャーンッ!!
演奏が終わる。
一拍の静寂。
そして次の瞬間。
「うおおおおおおおおお!!」
「最高ぉぉぉぉ!!」
「帰ってきた!!」
「カルマーーー!!」
割れんばかりの拍手と歓声が、会場いっぱいに響き渡った。
紀久は肩で息をしながらマイクを握り、大きく笑った。
「いやぁー!まだまだこんなもんじゃ終われねぇよなぁ!?」
「おおおおおーーーっ!!!」
「それじゃあ、次で最後の曲だ!」
会場から「えぇーー!?」という声が飛ぶ。
「安心しろ!最後だからこそ、とっておきだ!」
紀久は後ろにいるメンバーを振り返り、にやりと笑う。
「俺たちが高校時代、一番演奏した曲。文化祭でも、ライブでも、何度も何度もやった思い出の一曲。カルマのドラムが、一番輝く曲でもある。」
瞬崎は苦笑しながら首を横に振る。
「そんなに持ち上げないでください」
「ははっ!謙遜すんなって!」
紀久はマイクを高く掲げた。
「それじゃあ、ラスト!!思いっきり楽しんでいこうぜぇぇぇぇぇ!!!」
「うおぉぉぉぉぉ!!!」
会場の歓声が再び響き渡る。
ステージの上では、それぞれが静かに楽器を構えた。
静寂。
ほんの一瞬だけ会場から音が消える。
瞬崎はスティックを軽く回し、仲間たちへ目配せした。
紀久が大きく頷く。
「──いくぞ!」
その合図と同時に、瞬崎が勢いよくスティックを振り下ろした。
ダンッ!!
鋭い一打が会場中へ響き渡る。
続けざまに刻まれるビート。ギターが唸り、ベースが低音を支え、キーボードが力強く重なる。
二曲目。
『イナズマ』。
一曲目とはまるで違う。
攻め続けるリズム。
疾走感あふれるフレーズ。
まさに、曲名の通り稲妻が駆け抜けるような勢いだった。
「うおおおお!!」
「これこれ!!」
「やっぱカルマのドラム最高!!」
観客も自然と手拍子を打ち、体を揺らす。
瞬崎のスティックは一切迷わない。
長い年月が空いていたとは思えないほど、身体はリズムを覚えていた。
いや――。
あの日よりも、もっと自由に、もっと力強く。一打一打に、積み重ねてきた人生そのものが乗っていた。
仲間たちも笑っている。
目が合うたびに笑い合い、音を交わす。
言葉などいらない。音だけで通じ合える時間が、そこにはあった。
そして──。
最後の一音が、力強く鳴り響く。
ジャァァァンッ!!
一瞬の静寂。
次の瞬間、会場は今日一番の歓声に包まれた。
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
「最高ーーー!!!」
「カルマーーー!!!」
割れんばかりの拍手が鳴り響く中、瞬崎はスティックをゆっくりと下ろした。
その表情には、教師でも顧問でもない。
高校時代の仲間と音を重ねる、一人のドラマーとしての笑顔が浮かんでいた。
・瞬崎カルマキャラクター解説完全版
基本情報
♫ 名前:瞬崎 カルマ
♫ 性別:男
♫ 所属:長野県東縁高等学校 吹奏楽部主顧問
♫ 誕生日:7月7日(蟹座)
♫ 身長:191cm
♫ 血液型:AB型
パーソナル
♫ 性格:面倒見が良く、絶対に誰かを見捨てない
♫ 好きなもの:数学、音楽、コーヒー
♫ 嫌いなもの:国語、鰹節
♫ 趣味:コーヒーの自家ブレンド作り
♫ 特技:ドラム
♫ 無意識の癖:知りませんね
内面・関係
♫ 音楽へのスタンス:音楽に対しては一音も妥協したくない
♫ 響への印象:天性の才能
♫ 誕生日に対する感覚:実は結構嬉しい
その後も、Blue Pulseの演奏は続いた。
高校時代に何度も奏でた懐かしい曲から、当時のライブでは定番だった人気曲まで――。
演奏が始まるたびに歓声と手拍子が湧き起こり、会場は笑顔と熱気に包まれていく。
十年という歳月を感じさせない音の重なりは、あの日の青春を鮮やかによみがえらせていた。
こうして、Blue Pulseの復活ライブは、同窓会の会場を最後まで大いに盛り上げた。
※今回登場した「青空ブラスビート」のBlue PulseバージョンをYouTubeに投稿してます。是非ご覧ください。
改めて瞬崎先生、誕生日おめでとうございます!!
感想、評価是非お願いします。
次回、誕生日スペシャル 月本響編 7月17日公開。お楽しみに!!




