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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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70 討伐の謝礼

キリのいい70話です。この世界で初のバンジージャンプをお披露目したタクミたちは、次の街に向かいます。

 タクミたちが乗る馬車はシェンブルグの街を出て北へ向かっている。


 先程街を出る時に早馬の一群がかなりの速度で門から飛び出していった。おそらく彼らは紛争地帯から兵士を撤収する指示を伝えるために、北に向かうのだろう。


 タクミは門から逃げ出そうとする伯爵を取り押さえて、翌日も同じ目に合わせた。観衆は大喜びしていたが、伯爵は完全に抵抗する意思を無くしてそのまま館に戻って、撤兵の命令書にサインをした。


 力無くうなだれる伯爵にタクミは『俺たちはこれから紛争地帯を見に行く。もしお前の兵士が一人でも残っていたら、再びこの町に戻って同じ目にあわせる』と警告した。


 その脅しがよほど効いたのか、この日朝一番で早馬が出発したという次第だ。





 その姿を見送ってからタクミたちは馬車に乗り込んで、現在は街道を北に進んでいる。


 伯爵の軍勢が撤退することで紛争が下火になっていれば良いが、もしまだ続いているようであればその地域を無事に通過するためには対策を講じなければならない。


 とは言ってもここからでは状況がわからないので、紛争地帯に近づいてその様子を把握してからでないと対策の立てようもなかった。


「遠くの様子がわからないことがこんなに不便だとは思いませんでした」


 春名がポツリとこぼす。元々テクノロジーが進歩した世界で生まれ育った彼女は、何万光年も離れた所の情報が瞬時に手に入る事に慣れ切っており、この世界のように通信も満足にできないというのは想像のつかない出来事だった。


 それでも何とかこの世界に慣れて適応してはいるものの、やはり何事につけても不便さを感じてしまう。


 それは他のメンバーも同様で、その事がこの先がどうなっているかという不安にもつながり、どうしても慎重に進もうという意識が働くのは止むを得ない。


 だがその中で圭子だけは違っていた。彼女は元々の性格もあって『多少の困難があったほうが楽しい!』と公言している、自他共に認める生粋の暴走女だ。


 その圭子が馬車の手綱を取っているのだから、たまたま出くわすゴブリンなど蹴散らす勢いで街道を驀進している。


「次の街まで一気に行くよ!」


 威勢のいい声を出してはいるが馬の方はいい迷惑だ。汗をびっしょりかきながら馬車を引いている。


「圭子、少し飛ばしすぎだぞ。馬が持たなくなる」


 タクミの声で仕方なくペースを緩める圭子は馬の事も考えて次の集落で休憩をとることにする。


 



 馬車が到着したのは70軒ほどの家が寄り集まっている集落で、周囲は森と畑しかない所だった。圭子は村の中に馬車を引き入れて馬を繋ぎ休ませる。


 彼女以外のメンバーも馬車から降りて休憩をとることにする。とは言ってもこの村には飲食店や宿屋がないので、村人の邪魔にならない所にテーブルを広げて昼食をとり始める。


「お前さんたちはもしかして冒険者かい?」


 村人たちはタクミ一行を遠巻きにして見ていたが、その代表者らしい男が意を決して彼らに声を掛けてきた。


「確かに冒険者だが何かあったのか?」


 タクミは彼の様子に何か困った事情が伺えたので、話を聞いてみることにする。


「実はこの村の近くにオークが群れを作っているようで、まだ村人には被害は出ていないんだが作物を盗まれている。何とか退治してもらえないだろうか」


 ほとほと困っている様子の男の話に早速圭子が食いついた。


「どのくらいいるのかわかっているの?」


 だが圭子の問いに男は首を振る。村には武器になりそうな物が殆ど無くて、その上若い男たちが兵士にとられて不在だそうだ。冒険者に依頼を出してはいるが、皆紛争地帯に近づく事を嫌がって来てくれないらしい。


「オークだったらチャチャッと片付けられるわね。よしその依頼受けた!」


 オークならば猫人族の村で戦ったことがあり、たとえ大集落が出来ていようとタクミたちにとっては簡単なお仕事だ。困っている人を見過ごせない圭子の人の良さも手伝って即決された。他のメンバーは『またいつもの悪い癖が始まった』と諦めるしかない。



 村人の案内でオークが目撃された場所に行くと、森の中に数頭ずつその姿を見かける。片っ端から倒しながらさらに進んでいくと、猫人族の森にあったものよりも一回り大きな集落が作られている。


 圭子、美智香、タクミの3人が簡単に制圧して、最後に出た来たオークキングは圭子の一撃で吹き飛ばされて絶命する。


 春名たちと一緒にその様子をシェルターから目撃した案内役の村人は完全に引いていた。素手でオークキングを殴り飛ばすなどという事は、この世界の常識からいって有り得ない事た。口をポカンと開けてその様子を見ているしかない村人、後からタクミたちの戦いぶりは気の小さい彼のトラウマになってしまう事などこの時は知る由も無かった。


 すべてのオークを倒してその死体を回収し、そこにあった粗末な小屋などは美智香が火を放つ。そうしておかないと別の魔物がこの場所に住み着いてしまうための措置だ。


 作業を終わらせて夕方前に村に戻ったタクミたちを先程の男が迎える。案内役からオークが全滅したことを聞いて彼は何度も頭を下げた。


「この村は現金が少ないので、御礼にこれを差し上げます」


 彼が差し出したのは、絹よりももっと滑らかな手触りの見事な反物だった。この反物は村の女性が作る名産で大蜘蛛の糸を使っているので丈夫な上に光沢があり、この辺の地域では最高級の生地として名高いそうだ。


 ありがたくその反物3つを受け取り、すでに夕暮れが迫っているのでこの村で一泊してから翌朝タクミたちは出発する。


 再び街道を進むと昼過ぎには次の街『バルシュタイン』に到着する。


 ギルドでこの先の様子を聞いてみると『ここから先はいつ戦いに巻き込まれてもおかしくない危険地帯』という返事が返ってきた。


 さらに話を聞いていくと、この地域の紛争の様子がわかってくる。


 領内の山岳地帯の鉱山から金鉱を発見したオットベルン伯爵がこれを無許可で開発しようとしていたところに、例のバンジージャンプを敢行させられた伯爵が利権に加えろと横槍を入れて、その対立が大きな紛争に発展した。


 中立の立場を取ろうとした貴族もいたが、彼らには双方から容赦の無い攻撃が加えられて、次第に2つの派閥の大々的な戦いに発展してすでに3年が経過しているそうだ。


 その上次の街の『フォッセン』は厳重な検問が敷かれて、自らの陣営に組する者以外は逮捕されるらしい。


 これらの事情を聞いたタクミたちは、一旦宿に戻り対策を考える事にした。ギルドを出ようとして掲示板を眺めていた空に声を掛けると、彼女は一枚の依頼書を指差す。


 その依頼書にはこのような内容が記されていた。


『婚礼のための衣装に使う大蜘蛛の糸で織った反物が欲しい。謝礼は金貨100枚。ノイマン子爵』


 その依頼書を見る一同の頭に昨日の村でもらったあの反物の事がよぎる。すぐにその依頼書を剥がしてカウンターに持って行き詳しい話を聞くと、ノイマン子爵とは隣街の領主でということが判明する。



「力技で押し通る事も覚悟したが、これで何とか隣の領内に入れそうだな」


 タクミの言葉に一同はうなずいてすぐにこの依頼の手続きをとる。係員は危険なことを理由に渋ったがAランクのギルドカードの前にはそんな抵抗は無力だ。


 この街で一泊して翌朝、フォッセンに向かって出発するタクミたちだった。



 

読んでいただきありがとうございました。次回はフォッセンの街でタクミたちが何か仕出かす事になります。感想、評価、ブックマークお待ちしています。たぶん水曜日に投稿出来ると思います。

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