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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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58 岬の運命

年末に入って色々と忙しく投稿が大幅に遅れて申し訳ございません。ようやく時間を見つけて何とか1話だけ投稿します。


このままでいくと悲劇的な運命が待ち受けている岬は一体どうなってしまうのか・・・・・・

 翌朝、夜明けとともに目を覚ました岬は隣でまだ眠っているタクミを見つめる。


 初めてその腕に抱かれて、身も心も捧げた最愛の人。その寝顔を見ながら、一体いつまでこの幸せが続くのかと不安になる。


 そんな思いに囚われた彼女だが大きく頭を振って思い直す。


『たとえ自分が破壊しかもたらさない怪物に成り果てても、ほんの一時のこの幸せな気持ちとタクミに対する想いだけは絶対に忘れない』


 そう心に固く誓うのだった。そして最後の一瞬は必ずタクミの手にかかって幸せなままで死んでいこうと決心する。


 改めてタクミを見つめながら、その手でそっとタクミの頬に触れてみる。その温もりが手の平に伝わると同時に改めて昨夜のことが彼女の脳裏をよぎる。あれほど大切に優しくしてもらって心の底から感じた幸せを一分でも一秒でも手放さないように、それだけが今の彼女に出来る事だった。


「岬、もう起きていたのか?」


 タクミがうっすらと目を開いて、彼女の姿を認めて声をかける。岬はついタクミに触れたことで彼を起こしてしまったのかと、申し訳ない気持ちになった。


「ご主人様、起こしてしまって申し訳ありません」


 言葉ではそう言うものの、頬に当てた手はそのままにそっとタクミに口付ける岬、その表情は不安を隠したままではあるが昨夜この部屋に入って来た時よりもずいぶんと穏やかなものになっている。


「気にしないでいい、もう起きる時間だ。」


 彼女の口付けに応えてからタクミはその髪を撫でる。岬の髪は肩の長さに切り揃えたストレートの黒髪で、窓から差し込む朝日に美しく輝く。


 その後もう一度この朝最後の口づけをしてから、二人は起き上がる決心をした。


 甘い時間を済ませた二人はベッドから起き上がって身支度を整えてから1階に降りていく。すでに圭子と春名以外はテーブルについて朝食を待っていた。


 圭子は外で鍛錬を始めており、先に食べていてよいとのことだった。そしていつものように春名はまだ夢の中で、何度起こしても反応がないのでそのまま放置されている。


 女子たちは昨夜岬がタクミに自分の秘密を打ち明けたのだろうとうすうす察してはいるが、その事を敢えて口に出したりはしない。二人の話し合いの結果を自分たちから切り出すのを待っている。


 

 朝食が終わる頃、まずはタクミが切り出す。


「昨夜岬から色々聞いたから、その事について後でみんなの意見を聞きたい」


 その言葉に一同は頷くが、話の内容については周囲で何人か別のグループの者が食事を取っていることもあり、部屋に戻ってから具体的な話をしようという事になった。


 そのうちに鍛錬をしていた圭子も加わって朝食が終わり、岬が春名の分の食事が乗ったお盆を受け取ってから部屋に戻る。


 春名はまだ熟睡中だったが、顔の近くにスープが入った皿を近づけると鼻がヒクヒクと動く。そのうちうっすらと目を開いて、寝惚けまなこで着替えようとするのを岬が抱えて洗面所まで運んだ。


 春名はまだ半分寝ているので放っておくとズボンが後ろ前だったり、シャツのボタンを掛け違えていたりするので目が離せない。


 岬の手を焼いてようやく着替えを済ませて、顔を洗ったところで意識がはっきりとした春名は皆が待っている所に戻ってくる。


「皆さん、おはようございます」


『朝は礼儀正しい挨拶から』と決めている春名がようやくシャキッとした顔で頭を下げる。だがそれを見ている一同は『何時だと思っているんだ!』という表情だ。


「私の朝ごはんが用意してありますね。どうもありがとうございます」


 確かに礼儀正しい事は間違いない。礼儀だけは・・・・・・


 そんな皆の視線を気にすることも無く食事をパクつく春名、これから大事な話をしなければいけないのにこのマイペースぶりはどうなんだろう。


 だが揃って心が広いこのパーティーは、そんな春名の事を生暖かい眼で見ている。もうすでに諦められていると言った方が正しいかもしれない。


 その間に岬はシロに餌を与えて、美智香は端末をいじり始めている。そして空に至ってはガチムチの男性が絡み合っている怪しげな本を広げてその世界に入り込んでいた。


 そんないつもと変わらない日常だったが、岬の言葉でそのマッタリとした時間は終わりを告げる。


「昨夜ご主人様に全てをお話しました」


 自分に起こりうるこれからの事を受け入れる決心をしたかのような表情の岬、それに続いてタクミが話し出す。


「岬から聞いて俺も驚いたが、昨日彼女の事は絶対に俺の手で守ると約束した。だからこの場で皆の意見も聞かせてほしい」


 タクミの話に全員が頷く。普段はとぼけている春名でさえも事の重大さが理解できているようで真剣な表情だ。


「まずは空に聞きたい。岬はこの先一体どうなるんだ?」


 タクミは空が未来からやって来ている事を最大限に利用しようと考えていた。現在はまだ解決不可能な事でも未来の世界では解決できる可能性がある。


「個人の将来に関することを教えるのは禁則事項に抵触する」


 空は教えたいのは山々だがといった表情でタクミを見ている。だが彼女の反応はタクミとしては想定内の事だった。彼の中にはすでに次の問いが用意されている。


「わかった、では禁則事項に抵触しない範囲で構わない。現時点までで岬のような問題を抱えた者がどのくらいいて、その人たちはどうなったか詳細に教えてほしい」


 タクミの質問に空はしばし考え込む。どこまでの範囲ならばこの場で話せるのか色々判断をしているのだろう。


「質問は理解した。現時点までの話ならばこの場で伝えることは可能と判断する」


 空の答えに頷くタクミ、岬を含めた他のメンバーはそのやり取りに口を挟まずに注視している。


「では頼む」


 タクミの短いフリで空が話を始める。彼女の時代に存在するデーターベースにあるこの件に関することはおよそ次の通り。


 岬たちの惑星が滅亡してから今までに、危険因子を持っているとして隔離された者は2417人。そのほとんどは隔離されてから行方がわからなくなっている。


 岬を除けば最も新しい危険因子保持者の発生が報告されたのは今から約300年前で、その後は全く発生例が無い。


 現在は連邦法の改正によって、万一危険因子保持者が発見された場合は惑星政府が対応することになっており、連邦政府は関わらない。


 一応ここまで話をしたところで空は何か質問が無いか皆を見渡す。


「ということは連邦政府に報告する義務は無いということなのか」


 タクミは空に確認を求めた。この部分は昨夜岬から聞いた話と食い違っているからだ。


「その通り、まだ連邦の科学技術がそれほど発展していなかった時代は、危険因子保持者のもたらす破壊は大きな脅威だったが、現在の技術ならばそれ程の脅威には当たらないと認定されている」


 空の言う事が正しければ、タクミが所持している装備で鎮圧が可能ということになる。


 この話を聞いて一番胸を撫で下ろしたのは岬本人だった。彼女の種族の古い言い伝えと現代の技術の進歩に齟齬が生じていることがわかったのだ。


「私が暴れてもご主人様が何とかしてくれるということなんですね」


 彼女はタクミの手にかかって死ぬ事を念頭において質問をすると、空は『その通り』と頷く。


 だがタクミは岬の望む最終的な解決方法を選びたくは無かった。何とか彼女を助ける手立てはないかと頭をフル回転させる。そして念のために聞いてみようと思っていたことがあるのを思い出す。


「今までその危険因子を持っていた者は全員が暴力的な破壊衝動に駆られたのか?」


 タクミの問いに対して空はしばらく何かを考える様子をする。恐らくデーターベースにアクセスして質問に対する回答を探しているのだろう。


「2417人中13人が危険因子を保持していても暴力的な衝動を発現する事無く普通に社会生活を営んでいる。何れも女性でその共通点は子供を産んでいる事。これは後の研究対象となっている」


 空の答えにタクミは光明を見出す。もしその研究の成果がわかれば、岬を救う手立てが見つかるかもしれないと確信に近い物を得ていた。


「その研究の成果を教えてほしい」


 タクミの言葉で再び空は考え込むような様子になる。


「その研究の結果は極めて曖昧でとりとめの無い内容。はっきりとした事はわかっていないが、死と破壊の衝動に対しては生と創造の衝動がその抑止につながる」


 空の言っている意味がもう一つ何の事やらわからない一同は顔を見合わせる。


「ぶっちゃけて言うと、暴力衝動を抑えるにはエッチをいっぱいして子供を作れということ。子供が出来ると女性は母性に目覚めて、暴力に対する衝動が無くなるらしい」


 また、ずいぶんすごい解決策が出てきたぞと再び一同が顔を見合わせる。


「あの、それでしたら昨夜ご主人様にちゃんとし・・・・・・」


 岬が何か言いかけたところで隣にいたタクミが慌ててその口を塞ごうとする。


 しかし、圭子はその動きを見逃さなかった。気配を消してタクミの後ろに回ると、背後からチョークスリーパーをがっちりと決める。


 普段のタクミならば防ぐことは可能だったが、岬を止めることに気がいって圭子の事まで注意が回らなかった。


『グエッ!』


 声にならない音声を上げて圭子の腕をタップするが、そんな事で圭子が拘束を外すわけが無い。


「さあタレちゃん、話の続きをちゃんとしなさい。もしかしたらあなたを救う大事なことだから包み隠さずに全てを打ち明けなさい!」


 ほとんど命令のような圭子の勢いの押されて、岬は昨夜のことを全て白状した。


「なんだってーーー!!!」


 いきなり大人の階段を駆け上がった岬の告白に驚きの声をあげる女子たち。


「びっくりした!」(紀絵)


「このケダモノ!」(美智香)


「タクミ、グッドジョブ!」(空)


「コイツついに遣りやがったか! 成敗!」(圭子)


「タクミ君、私の分も残しておいてください!」(春名)


 春名の言う『私の分』とは一体何を指しているのか不明だが、概ね彼の行動に対する評価は真っ二つに分かれている。


「あの、でも今朝はとっても幸せな気分で、ぜんぜん危ない考えが頭に浮かんでこないんです。空ちゃんが言う通りなのかも知れません」


 岬の言葉に女子一同はハッとする。そうだった! 『ヤッタ、ヤッてないの問題ではなくて岬の運命に関わることだった』とようやく思い出す。


 そして彼女たちの視線の先にはこのところあまり見せなかった穏やかな表情をしたメイド服姿の岬と、圭子に締め上げられてすでに落ちているタクミの姿があった。



 


 

10月から書き始めて早3ヶ月、今年このお話にお付き合いくださってありがとうございました。年内はこの投稿が最後で来年の5日頃に新しい話を投稿します。この年末年始は異常に忙しくて、間が開いてしまい申し訳ありません。


それでは皆ざまよいお年を。来年もどうぞよろしくお願いします。

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