59 馬車の中では・・・・・・
あけましておめでとうございます。年末年始の忙しさにだいぶ投稿の間隔が開いてしまいましたが、ようやく落ち着きました。
新年第1弾の投稿になります。岬の問題に何とか解決の目途が立ったタクミたちですが、その後一体どのような展開になるでしょうか・・・・・・
レンネベルクの街では事件は起きず、タクミと岬が結ばれた二日後に一行は街を出発した。
街道を進む馬車の中では、すっかり穏やかさを取り戻した岬に女子たちの質問の集中砲火が飛んでいる。
その内容はもちろん二人の夜のアノ事についてだ。岬は初めての日に続いて昨日もタクミと一緒に寝て、彼の色々な物をその体で吸い尽くしていた。
そのせいか、顔の色ツヤが良くて色白の肌がピンク色に染まったままだ。質問攻めにあって恥ずかしそうにしながらも、答えられる範囲で返答をしている。
圭子は御者席に座って馬車の操縦に専念しているのでこの話には加わっていない。本当は興味津々で色々聞きたいのだが、意地を張ってあえて何も聞かないようにしている。
車内にいる5人の女子のうちで美智香はポーカーフェイスを崩さずにあまり興味なさげにしているが、その内心は赤裸々に語られるあんな事やこんな事に興奮しまくっていた。
「それでタレちゃん、やっぱりその瞬間は痛いんですか?」
春名が生々しい事を聞き出そうとする。彼女はタクミに全てを許してもいいとは思っているのだが、生まれつきのへタレで痛い事が大嫌いのために、今まで決心がつかなかったのだ。
とにかく初めての時は痛みを伴うと聞いている彼女はその事が最も気掛りな点だった。
「少しは痛いですけど、それよりも幸せでいっぱいになりますよ」
岬は言葉同様に幸せでいっぱいの表情をする。あれだけ多くの死を振りまいたとは思えない天使のような笑顔だ。
「その少しの痛みがどの程度かというのが、私にとっては乗り越えるべきな大問題なんですよ!」
春名は気になって仕方ない核心部分だけに執拗に食い下がる。これさえクリアーすれば自分も晴れてタクミと結ばれるのだから真剣そのもの。彼女は自分のへタレ加減などどこかに置いて、ひたすら自分に我慢できるだろうかとその事を知りたがっている。
「きっと個人差がありますから一概にはどうとは言えないと思います。でもきっと春名ちゃんだったら大丈夫ですよ」
岬から具体的な回答が得られなくてがっかりする春名、だが痛みを数値化できない以上は答えが出る問題ではない。
「タレちゃんの次は私の番!」
突然空が爆弾を放り込む。彼女はタクミのお嫁さんに立候補しているものの、キス以外の事をしてもらえなくて欲求不満が限界に達していた。
「空ちゃんはやめておいたほうがいいです!」(春名)
「空の場合はお酒とエッチは20歳から!」(美智香)
「空ちゃん、無理はしないでください」(紀絵)
「空ちゃんにはちょっと荷が重いかもしれません」(岬)
女子たちが揃って空を引き止めようとする。
それにはれっきとした理由がある。空は身長145センチ、体重41キロでその体は全くのお子様体型で胸もペッタンコ。
彼女たちからすると『子供が背伸びをしてはいけない』という配慮だった。もっとも空の中身は女子たちの中では一番腐っている。
「私だって出来るはず!」
空は自らの可能性を主張するが、女子一同は強く首を横に振る。
諦め切れない空は必ずこの次の機会に試そうと心に誓うのだった。
一方その頃、タクミは一人で馬車の後ろを走っていた。毎日の訓練を口実に女子たちの話で精神が削られていくのを防ぐための逃げ道だ。
馬車のペースはそれほど速くないので楽に付いていける。精神的な苦痛よりもこちらの方が彼にとってはよほど楽だった。
馬車の中で交わされる彼女たちの会話のことは一切考えないようにして、心を無にして走り続けるタクミ。その姿はまるで修行僧のようでもあるが、二日続けて岬とやらかしている時点で僧籍は剥奪されている。
話は再び馬車の中に戻る。
「あのー・・・・・・私も今度チャレンジしたいと思います」
躊躇いがちに宣言するのは紀絵だ。彼女はタクミに危機を救われる以前から淡い恋心を抱いていたが、今ではその気持ちをハッキリと口に出来るようになっていた。
『タクミと結ばれる』そう考えるだけで心の奥底から熱いものが湧き上がってくる。その感情は彼女を突き動かしてタクミに向かって真っ直ぐに進んでいくことだろう。
「どうして紀絵ちゃんには反対意見が出ない?」
空が心から不本意そうに全員に問いかけるが、彼女に味方する者は一人も出なかった。わずかにシロだけが空の膝に乗って、体を伸ばしてその顔をペロペロと慰めるように舐める。
「もうすぐ昼食にするよ!」
御者台から圭子の言葉が響いて、一旦岬を中心としたガールズトークは終了を迎えた。
昼食はいつものように岬が用意した暖かい食事を取っている。アノ件については馬車の中で散々に話したので食事中は別の話題が中心となる。
「ここから先は王都への一本道だ。話によるとそれほど魔物は出ないし、治安も悪くはないらしい」
午前中は馬車の後ろを走っていたタクミは一度シェルターのシャワーを浴びてから食事を取っている。彼は地図を見ながらレンネベルグの街で仕入れた情報を元にこの先の道のりを説明する。
ここから王都までは馬車で3日の距離で、もう目の前といって差し支えない。
「私が一番前で警戒しているから安心して!」
圭子が空に次いで小さな胸を張る。彼女は空と違って身長は160少しあるので、見ようによってはボーイッシュだが、一緒に入浴する女子からはその胸は不憫そうに見つめられることが多い。
「そうだな、前方は圭子がいるから任せる。俺は引き続き後方の警戒をする」
タクミの指示に頷く一同、なお岬は当面魔物たちが出てきても戦闘は一切禁止されている。また血が騒ぎ出すと厄介なことになるので、今の状態が落ち着くまでは余程の事がない限りは春名や空と行動を共にする。
「それじゃあ準備はいい? 出発するよ!」
表面上は穏やかな昼食が済み、一同は馬車に乗り込み圭子の合図で出発をする。
馬車の中の女子たちはタクミがいることもあってアノ話題はもうしていない。というよりも午前中に全てぶっちゃけて彼女たちはもうお腹いっぱいだった。
その上本当にお腹いっぱいの春名などはすやすやと寝ているし、美智香は端末に仕込んである魔法を熱心に眺めている。
空はシロを抱きかかえて『お前だけが私の本当の友達』とブツブツ呟いているし、岬と紀絵はタクミの両側に陣取って体を密着させている。
思い思いの様子で過ごすのんびりとした馬車の旅は、圭子の一言で臨戦態勢へと移行した。
「前方で馬車が一台何者かに襲われているよ!」
すっかり寝込んでいる春名と戦闘禁止の岬を空に託して、タクミを先頭に美智香と紀絵は馬車から飛び出す。
タクミたちの前方では既に戦闘が開始されていた。馬車を守る数人の騎士が正体不明の黒装束の一団に襲われている図式が遠目からでも見て取れる。
空がシールドを馬車全体に展開したのを確認してから『行くぞ!』というタクミの声でまずは圭子がダッシュする。
それに続いてタクミが前に進み、体力に劣る二人は後から付いてくる。
「さて、どうやら賊は黒い方でいいのよね」
馬車を守る側と襲い掛かる側が必死に斬り合いを繰り広げる場に着いた圭子は、一応どちらが賊なのか確認をする。いざとなればこの場の全員をぶちのめしてから事情を聞けばいいかとも密かに考えている。
「貴様、何者だ!」
両者から突然現れた圭子に向かって声が飛ぶが、そんな事にはお構いなく圭子は黒い相手に向かってゆっくりと歩を進める。
「さーて、私の鬱憤晴らしの相手になってもらうわ」
指をポキポキと鳴らしながらニヤリとする圭子だった。
今年もこの小説をどうぞよろしくお願いいたします。




