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46 エルフの村の異変

すみません、体調不良で予定した日の投稿が出来ませんでした。もうひとつの小説の方はストックがあったので何とかなりましたが、こちらの小説は書いては投稿しての自転車操業状態なのでどうにもなりませんでした。ウィルス性腸炎で2日間の絶食とおかゆ生活、本当につらかったです・・・・・・


皆さんも体調には気をつけてください。今回は短めです、たぶん次の投稿から平常運転に戻ると思います。

 サラナの案内で結界をくぐり村に向かうタクミ達、彼女が言うには『この結界はエルフでないとくぐる事が出来ない』そうだ。


 結界を抜けるときにサラナは両手を広げて森の精霊に祈りを捧げた。その声に応えるように大木や下草の生い茂る森の一部に通り道が出現した。


 この隠された通路に入ると村はすぐそこにあるらしい。サラナの言う通りに村の入り口が見えてきた。


 入り口には4人のエルフが立って番をしていたが、サラナに引き連れられたタクミ達を訝しげに見ている。


「止まれ、サラナ! なぜ人間を連れてきた?! お前は掟を破るつもりか!!」


 門番のエルフから警戒心に満ち溢れた声が飛ぶ。この世界のエルフは極端に人との交流を嫌っており、村に人を入れることなど普通なら許されないことらしい。


「待って、この人達は私の命の恩人です。森の異変を調べている時に突然魔族に襲われて、一緒にいた仲間は全滅しました。私も斬られて瀕死のところを助けてもらったんです。とにかく長老を呼んできてください」


 懸命に事情を説明するサラナ、はじめはその訴えに耳を貸さなかった門番達も彼女の必死な様子に只事ではないものを感じたようで、長老を呼んでくることに同意した。


 しばらく門の前で待っていると、数人のエルフがこちらへとやって来る。彼らの中にかなり年をとったエルフがいた。おそらくこの村の長老であろう。


「お待たせしてすまなかった、私がこの村の長老アドニスだ。事情は聞いておるので、中に入って詳しい話を聞かせてほしい」


 思いがけず長老から村に入る許可が出たことに安堵するタクミ達、サラナも恩人を村に招くことが出来て『よかった!』という表情をしている。


 エルフは森とともに生きる種族の言葉通りに、自然の樹木の上に丈夫な蔓を束にして回廊をめぐらして地上に降りなくても木の上に造られた家々を訪ねることが出来る。


 もちろん各家には地上の降りるための階段もついているが、近所に行く時にはほとんどこの空中の回廊を皆が利用している。


 家はログハウスのような造りで、木の枝を利用して2階建てや中には3階建ての所もあった。


 自然と共存して生活するその様子に調査員としての好奇心が疼くタクミだったが、今は先に用件を済ますことを優先した。


 一際大きな長老の家に招かれて客間に通される一行、部屋の中には座布団に似た敷物が置いてあり各自が座る。この世界に来て椅子に座る生活が続いていたので、久しぶりに日本的な部屋を見てなんだか心が和む一同だった。


 もっともタクミ達の中に本当の日本人は空しかいないのだが・・・・・・


「客人方、サラナを助けていただいたこと感謝いたしますぞ」


 長老の娘であろうか、女性のエルフが運んできたお茶を口にしている時に長老が改めて礼を述べた。


 それからサラナの襲われた経緯の説明とタクミ達が彼女を助けた詳しい話を一通り終える。


「ところで森の異変と言っていたが、いったい何が起こったのか教えてもらえるか?」


 サラナ達は『森の異変を調べるために結界の外に出た』と言っていた。タクミは魔族が現れたことといい、何か繋がりがある気がしていた。


「うむ、この森は精霊の力によって守られているので、めったな事で木が枯れる事はない。それがここ最近立て続けに何本も木が枯れ始めて、おかしいので若者を何人か調べに行かせたのだ。それがもし魔族の仕業となると、これは只事ではすまないであろう」


 そう語る長老は深刻な表情をしている。エルフの村は今まで魔族とは無縁だったために、全く備えをしていなかった。


 獣人達もそうだがこの世界の過去の歴史では常に人間と魔族の争いが続いてきた。したがって彼らは全く部外者でいられたのだが、どうやら今回はそうも言っていられない状況が迫っている。


「俺達もここに来る間に魔族に出会ってやつらの目的を知る事が出来たのだが、その目的はこの森にあるある装置を作動させることだ」


 タクミの言葉に長老は驚いた表情を見せた。この森にあるエルフが『古代機械』と呼ぶその装置の事はエルフしか知らない秘密のはずだ。それをなぜタクミ達が知っているのか・・・・・・


「客人方はなぜ古代機械の事を知っておるのだ?」


 長老の目は不穏な光をたたえる。秘密を守るためには事によってはこの者達の口を封じる必要も考慮に入れていた。


 タクミ達は長老の誤解を解くために、ラフィーヌのダンジョンを攻略した経緯や、そこでPMIシステムを発見してそれを作動させた事などを説明した。


「なんと! あの古代機械が他の場所にも存在したというのか!!」


 長老はタクミの話に先程以上に驚いている。もっともな事だろう、種族の宝としてこれまで秘密を守り通してきたものが『よそにもありますよ』と言われて、驚かない方がおかしい。


「俺達は別の世界からこの世界に召喚された、だからあの装置の使い方を知っている。魔族があの装置に手を出しているのは、同じものが魔王城にあるためだ」


 タクミは装置の概要を判りやすく説明した。そして自分達が作動させれば装置の作動責任者として自分を登録するので、魔族に狙われる事はなくなるはずだと付け加えた。


 長老はその話を聞いて考え込む。今まで平和に暮らしていただけに、魔族から狙われる事は避けたい。だがエルフの秘宝を赤の他人に明け渡してよいのか判断がつかない。


 散々悩んだ末にようやく彼は結論を出した。


「数日待ってほしい、村の者と話し合ってから結論を出したい」


 ようやく出た結論は問題の先送りに過ぎなかった。だがここで断られるよりはまだましと、タクミ達は前向きに考えるしかない。


 その間はこの村で滞在の許可が出て、タクミ達は隅の方の村人達に邪魔にならない所に自分たちのシェルターを設置した。


 村人達はそのシェルターを見て目を丸くしていたが、すでに長老にこの世界の者ではない事を明かしているので開き直っている。


 この日はすでに暮れかけているので、話し合いは翌日以降となった。


 夜の帳が降りる頃、タクミが回収してきたエルフの亡骸を村人に引き渡して弔いが行われる。


 村人の家族の者のすすり泣く声が聞こえ、村全体が悲しみに包まれる。エルフ達の死者を送る祈りや物悲しい歌声が響く中で、遺体は荼毘に付された。


 タクミ達は村人達からそっとはなれて各自のシェルターに引きこもった。彼らの最後の別れを邪魔したくなかったためだ。


 タクミのシェルターには春名が一緒だったがもちろん自重した。


「タクミ君、話し合いがうまくまとまるといいですね」


 春名の声に頷いてから『おやすみ』と挨拶をして目を閉じるタクミだった。

読んでいただきありがとうございました。次の投稿は日曜日の予定です。

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