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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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45 川を渡った先には

タクミ達は少しずつ先に進んでいます。今回岬のとある秘密が・・・・・・

 案内役の狼人族のおかげで、獣人の森を抜けて川に出たタクミ達だがここで思わぬ事態が発生していた。


 3日前にかなりの量の雨が降っており、川が増水していたのだ。


「普段は歩いて渡れるのだが、これほど水嵩が増していることは珍しい」


 狼人の青年はめったにないことに驚いている。彼はこのまま一旦戻る事を提案したが、タクミはしばらく何かを考える様子だった。


「この先エルフの村まで距離はあるのか?」


 青年に尋ねると彼は首を振った。


「エルフの結界はすぐそこだが、案内役のエルフがいないと中には入れない」


 その言葉に軽く頷くタクミ、彼はまだ何か考えている。


「この水量だとさすがに渡れそうもないけど、何かいい案があるの?」


 無言のまま考え込んでいるタクミに圭子が尋ねる。彼女は良く言えば行動派、悪く言えば短気なので、あまり考え込んで時間を無駄にしたくはない。


 その横で他の女子達もどうすればいいのか思案に暮れている。特にまだこのパ-ティーに入って間もない紀絵はタクミ達のやり方を見る機会が少なかったので、どうしてよいのかわからない。



 やがてタクミは決断したように顔を上げて、案内役の青年に向き直る。


「ここまでで案内は大丈夫だ。しばらくここに留まって様子を見たいから村に戻ってくれ」


 青年はその言葉に頷いて来た道を引き返す。その姿を見届けてから河原の石に座っていた春名がタクミに話し掛けた。


「タクミ君、その顔は何か考えがあるという事ですね」


 さすが付き合いの長い春名、表情だけで彼が考えている事までわかってしまう。


「まあな、あの青年には見られたくなかったから帰ってもらったんだ」


 そのままタクミは端末を操作してパワードスーツを展開すると森を指差した。


「美智香、なるべく大きな木を魔法で切り倒してほしい」


 その言葉に美智香が頷く前に、岬が収納から取り出したチェーンソーをスッとタクミに差し出す。


「岬、何でこんな物まで持っているんだ?」


 ガーデニング用品を武器に大立ち回りを演じた岬だが、まさかこんな物まで持っていると誰もは思わない。

 

「去年のクリスマスプレゼントに買ってもらいました」


 さらっとすごい事を言う岬、『どこの世界にクリスマスプレゼントにチェーンソーを買ってもらう女子高生がいるんだ!』と声を特大にして突っ込みたいが、彼女が役に立てて嬉しそうなすごく良い表情をしているので礼を言っておく事にした。


 彼女にとってはチェーンソーもガーデニング用品の中に含まれるらしい。どう見ても開墾作業とか林業という分野が相応しいのだが。

 

 タクミは再び森に入って、川幅を超えるような高い木を3本切り倒してきた。一抱えもある大木をパワードスーツの出力を上げて軽々と河原まで運び出す。


 その後ろで岬も一人で大木を担いで運んでいる。『一体彼女の限界はどこなんだろう?』と、呆れるタクミ達一行だった。


 実は岬は月世界人と言っているが、彼女の祖先は遥か彼方の惑星に住んでいた。だがその星が滅亡を迎える前に集団で新天地を求めて移住し、たどり着いた先が月だったのだ。


 元々の惑星は5Gという極限の高重力下にあり、その環境に適応するために体の組織が特殊に進化した種族だった。


 彼らが月に移住したのは約2000年前、かぐや姫の物語も彼らが地球との交流を求めてやって来た話が原典になっている。


 その月世界人だが、今は月の環境に慣れて低重力に適応した体になっているのだが、岬は珍しい先祖返りで高重力にも適応出来るかなり特殊な例だ。


 そのため地球やこの世界のような1Gの環境ではとんでもない怪力を発揮する。そして彼女が誰にも言わない秘密だが、その体重は230キロにも及ぶ。だから彼女はベッドの中で決してタクミの上には乗らないようにしている。乙女の秘密は守りきる所存だ。



 切り出した3本の木の枝を払って、タクミと岬がワイヤーで大木を束ねていくと即席の橋が完成した。 


 あとは橋を頭の上に抱えたタクミが加重をかけて川を渡り、向こう岸の足場の良い所に設置すれば完成する。


 女子達が無事に濁流の上に架かる橋を渡りきって向こう岸までやって来た。


「渡りきれたのはいいけど、ここからどうやってエルフの村を見つけるの?」


 圭子の疑問はもっともだ。エルフの村は結界に隠れていて、エルフでないと見つけられないと言われている。


「シロが何か手掛かりを見つけてくるだろう」


 人間には見えない物でもシロの視覚と嗅覚ならば何とかなるのではないかとタクミは考えていた。


「なるほど、この場はシロちゃんにお願いしてみましょう」


 春名はしゃがみこんで頭を撫でながら『手掛かりを見つけてね』とお願いすると、シロは一声『キャン!』と吠えてから先頭に立って歩き出す。


 しばらく森を進むと、突然シロは地面に鼻を擦り付けるようにして周辺の匂いを嗅ぎ出した。


「シロちゃんが何か見つけたようですね」


 春名の声に振り向いて『キャン』と一声上げたシロは、早足で森を進みだした。そして100メートル程進んだ所で立ち止まる。


 シロが立ち止まったその先に5人の人が倒れていた。いや人に比べて耳が長いところを見ると彼らがこの森に住むエルフに違いない。


 すぐにタクミが近づいて生命反応を確認する。5人のうち4人まではすでに死亡が確認されたが、最後の一人はかろうじて息があった。


「空、頼む!」


 まだ息が残っているエルフの女性に空が駆け寄って回復魔法をかける。剣で切りつけられた背中の傷が塞がって、流れ出ていた血が止まる。何度見ても空の魔法は奇跡のような効果を発揮する。


 危険から逃れたい本能なのか、うつ伏せになっている女性の指がピクリと動いてゆっくりと顔を持ち上げようとするのを、空が押し止めて話しかける。


「もう大丈夫、動けるまでもう少しそのままでいた方がいい」


 空の言葉が届いたようで女性は再び体の力を抜いて身動きしないで回復を待った。一行は彼女の様子を黙って見つめるしかない。


 やがて自力で起き上がった女性は空にお礼を述べるとともに、一緒にいた仲間の安否を尋ねる。だが、空が無言で首を振ったのを見て俯いて静かに祈りを奉げていた。


 タクミ達も彼女に合わせてそれぞれのやり方で黙祷する。最後に死者の魂が安らかに眠るための聖句を空が唱えて静かな祈りの時間は終わった。さすが生臭くても聖女様だ。


「皆様、仲間のために祈っていただきありがとうございました。また助けていただいた事にも感謝いたします。私はサラナ、近くの村に住むエルフです」


 彼女はタクミ達に頭を下げて改めてお礼を述べる。エルフらしい長く尖った耳と美しい銀髪が特徴の見かけは非常に若々しい女性だ。


「一体何が起こったのか話せるか?」


 タクミはサラナに事情を聞きだそうとした。ただ彼女にとっては目の前で仲間を失うという辛い出来事だったので、その事を今話せるかどうか確認した。


「はい、私達は村の外で起きている異変を調べるために結界の外に出てきたのですが、突然魔族に襲われて3人が攫われてここにいる4人が命を落としました」


 またここでも魔族というフレーズが出てきた。今更タクミ達は驚きはしないが、やつらもこの森にあるPMIシステムを捜そうという意図がミエミエだ。


「だとしたらここで話を聞くのは危険だ。もし可能ならばエルフの村で話をしたいのだが案内してもらえないか?」


 タクミは自分達も魔族に遭遇した事や、魔族よりも先にこの森に隠されている装置にアプローチしたいことなどをわかりやすくサラナに話した。


「わかりました、古代機械の事は長老の意見を聞かなければなりませんが、命の恩人を村に案内することは可能です。私に付いてきて下さい」


 彼女はそう言うと立ち上がる。大量の血を流しているのでまだ足元はふらついているが、何とか村まで歩けると主張した。


 4人の遺体はタクミが収納にしまって村で弔うことにする。


 こうしてサラナの先導でエルフの村に向かうタクミ達だった。


  

読んでいただきありがとうございました。感想、評価、ブックマークをお待ちしています。


次の投稿は水曜日の予定です。

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