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クラスごと異世界に召喚されたのだが、その中に『異星人』が紛れ込んでいる件  作者: 枕崎 削節


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101 審問官

本日2話目の投稿です。

「まずは名前と職業を名乗ってもらおう」


 完全に上から目線で尋問を開始する。その間に手持ち無沙汰だった圭子は騎士たちをきれいに片付けていた。怒りのためちょっと力が入り過ぎて全員が致命傷を負っている。


「貴様! このワシを誰だと・・・・・・グエッ!」


 容赦の無いタクミの蹴りがまだ起き上がっていない男の脇腹に炸裂する。地面を転がり回って苦しむ男、呼吸も出来ずにさぞや苦しい事だろう。だがタクミから見れば全くの自業自得だ。


「名前と職業は?」


「ク、クリモフだ。仕事は教会の審問官」


 苦しさに喘ぎながら何とか答えたその顔からは脂汗が滴り落ちている。


「そうか、さてお前は先程あの娘が魔族と関係したと言っていたな。ところでお前はもちろん魔族を見た事があるんだよな」


 精神的な重圧を掛けながら畳み掛けるタクミにクリモフの顔が引き攣る。


「勿論ある!」


「そうか、では魔族の特徴を言ってみろ」


 二人のやり取りの方向が全く見えなくて一体どうなるのかと固唾を呑んで見守る観衆、彼らは火あぶりを見に集まったのだが、どうやらもっと面白そうなものが見れそうだと期待している。惨い話だが、楽しみの少ない世界では処刑も一種の見世物という側面があるのは事実だ。もっとも大方の観衆は見に来ないと教会に対する反逆者の烙印を押されるので、仕方なくここに集まっているだけだ。


「魔族は頭に角が生えていて、皮膚の色が人と違っているのが特徴だ」


 概ね合っているようだが細かい部分の説明があやふやで、この程度の話ならば大抵の冒険者でも知っている内容だ。タクミは予てより準備していた作戦が上手くいくと確信する。


「そうか、中々良く知っているじゃないか、感心したぞ。俺たちはこの前魔族を討伐したんだが、そいつがお前の知っている魔族と同じかどうか教えてくれ」


 タクミはそう言って収納からついこの間集落を全滅させた時に倒したゴブリンキングを取り出す。ご丁寧にラフィーヌのダンジョンに居た魔族から剥ぎ取った服まで着せている。


「そうだ、こいつが神に逆らう魔族だ。下級の者ではあるが、私の目に狂いは無い!」


 様々なダメージからようやく立ち直って立ち上がり、胸を張ってそのゴブリンキングを指差すクリモフ。確かに彼が言う通りに頭に角があって、その肌は緑色に近い特徴を持っている。


タクミはまんまと引っかかったと心の中でほくそ笑んでいるが表情には全く出さない。


「そうか、こいつは魔族だったのか。どうりで倒すのに梃子摺るわけだな」


 独り言のように言いながら、その実観衆に聞こえるような大きな声でクリモフをバカにするタクミ、彼もかなり性格が悪い。


「まだいるぞ、こいつはどうだ!」


 タクミが取り出したのは本物の魔族の死体だ。ラフィーヌでまとめて討伐してうっかりギルドに引き渡すのを忘れていた。しかもその死体にはゴブリンキングが身に着けていた粗末な腰巻が巻かれている。


「いや、これは魔族ではない。こんな手には引っかからんぞ」


 疑心暗鬼に駆られて本質を見る事を忘れているクリモフ、したがってこんな簡単な手に容易く引っ掛かる。頭に捻じくれた角を持ち、その皮膚は青に近いが、その粗末な衣服に騙されている。


「そうか、これは魔族ではないか。なるほど、専門家の意見は尊重しないとな。ではこれはどうだ!」


 タクミはクリモフを持ち上げつつもバカにしたような笑いを浮かべている。そして最後に取り出したのはついこの間討伐したばかりのオーガだ。ご丁寧に一番偉そうな魔族が着けていたマントを羽織っている。


「これだ! これに間違いない! しかもこいつは魔族の中でもかなりの大物に違いない!」


 きっぱりと断言するクリモフ、だがタクミから見れば完全に馬脚を現しているし、少し離れた所にいる女子たちは彼を白い目で見ている。その大きな体と頭の2本の角、そして赤褐色の皮膚にまんまと騙された格好だ。


「さて、それでは答え合わせといこうじゃないか! この中で魔物に詳しい奴はいるか?」


 タクミか周囲にいる観衆に呼びかけると、手を挙げて身なりのいい男が彼の近くにやって来た。彼は観衆の前で自らの身分を明かす。


「私はこの街の冒険者ギルドのギルドマスターを務めるアシモフだ。自らの職に賭けて公正な判断を行う。一番初めに出された物は間違いなくゴブリンキングだ。そして最後に出された物はオーガだ。2番目のこの死体こそが間違いなく魔族だ」


 彼はそれぞれを指差してはっきりと証言した。この証言の結果クリモフの答えは見事に外れた事となる。


「ギルドマスター、感謝する。さて、この結果が示す通りにお前は魔族の姿を知らなかったことが証明された。これに関して申し開きはあるか?」


 タクミは残忍な笑みを浮かべてクリモフに問いかける。対するクリモフは狼狽し切って、何とかこの場を乗り切ろうと懸命に弁解の言葉を口にする。


「待ってくれ、これは何かの間違いだ! 神に誓って何かの間違いだ」


 冷や汗を大量に流しながら弁明するクリモフだが、観衆から彼の言葉を否定する野次が次々に投げかけられる。


「俺だってゴブリンとオーガくらいは知っていたぞ! お前は嘘つきだ!」


 その言葉で堰を切ったように観衆から『この嘘つき野郎!』『今まで騙していたのか!』との怒りの声が沸き起こり、観衆は柵を揺らして自らの怒りを訴える。



「お前は魔族を見た事も無いのに一体どうやってあの娘が魔族と関係を持ったと告発出来るんだ?」


 タクミがさらに畳み掛ける。今回亡くなった娘を告発したのはクリモフ自身だった。彼は彼女を街で見かけて一目で気に入り、自分の物にするためにでっち上げの告発をしていた。


「そ、それは・・・・・・」


 彼はタクミの質問に答える事が出来ない。それはそうだ、自分の欲望で嘘の告発をしただけなのだから。


「お前は嘘の告発で、魔族と関係があると言って無実の娘を殺した事になるが、何か申し開きはあるか」


 タクミは努めて冷静な声を出しているが、観衆はそうはいかない。彼らの中には友人、知人、家族をクリモフによって殺された者が居るのだ。クリモフに対して『この人殺し!』『ペテン師!』『こいつを殺せ!』などと声を荒げる者が出ると、集団心理で一気に火が付いて『殺せ!』『殺せ!』という罵声の嵐になる。


「何かの間違いだ。そうだ! これは間違いであって私の責任ではない」


「そうか、間違いならば人の命を奪ってもよいという事だな。今から俺が間違えてお前を殺すが構わないな」


 慌てふためくクリモフに対してタクミの氷のような返事が返ってくる。それに対して言い返す言葉が無いクリモフ。




 無言でタクミは彼を柱のある所まで連れて行き、そしてそこに横たわり冷たくなった娘を見せる。


「この娘に何か言うことはないか」


「すまなかった、心から詫びる。だから助けてくれ!」


「今までお前はそういう言葉に耳を貸したことがあったか?」


 何とか助かろうとタクミの懇願するクリモフ、だがタクミは彼の言葉に全く耳を貸さない。地面に引き摺り倒して腹に1発入れて動きを止めてから、その体を縄で柱に括り付ける。


「頼む、助けてくれ!」


 これから自分の身に起こる事を恐れて命乞いをするクリモフ。


「お前は勘違いしている。裁くのは俺ではなくてここに居る全員だ。岬、すまないがまた柱を立ててくれ」


 先程と同様にヒョイと柱を持ち上げて何の苦もなく穴に差し込む岬。


 つい先程まで裁く側として得意満面だった一人の男が、今は柱に縛られて観衆から憎悪の視線を向けられている。


 教会の権威を背にして好き放題の事をやってきた一人の男の哀れな最後の時が近付いていた。


「この偽者をどうするかは、ここにいる全員が決めるといい。ただしその前に可哀想なこの娘のために祈りを捧げよう」


 タクミの言葉に合わせて、その場に居る全員が祈りの言葉を口にする。命を助ける事は出来なかったが彼女は神に背いた罪人としてではなく、無実の罪で悲運の最期を遂げた犠牲者として丁寧に弔われる運びとなった。


 果たしてそれが彼女が味わった苦しみや恐怖、絶望に対してどの程度慰めになるのかわからないが、今のタクミたちに出来るのはそのくらいしかなかった。


「ギルドマスター、すまないがギルドまで案内してくれ。俺たちが居なくなったらこいつは好きにしろ」


 最早タクミはクリモフがこの先どうなろうと知った事ではないという心境だった。対照的にクリモフは命乞いの言葉を喚き散らしている。その声に観衆が果たして耳を傾けるかは彼の努力次第だ。


 広場からタクミたちが姿を消してすぐに人が出せるとは思えないような男の悲鳴がいつまでも続いていた。


 


 ギルドマスターの部屋でタクミたちはソファーに座って話をしている。ここまでは広場の喧騒も届いては来ない。


「今回の件は感謝する。あの男は余りにも非道で我々もどうにかしたかったのだが、尻尾を掴めずに手をこまねくしかなかった」


 頭を下げるアシモフに対してタクミはその件はすでに終わったことという態度を崩さない。娘を助ける事が出来なかった自分たちの力不足を認めるしかないし、彼女の事を思うと苦いものがこみ上げて来る。


「それよりもギルドは教会と対立しているのか?」


 国王派と教会派の対立は聞いていたので、タクミはギルドの立場を知りたかった。


「冒険者ギルドは国家からも独立した組織だ。どちらの味方もしないが、ただ私の個人的な感情では教会なぞクソ喰らえと思っているがね」


 明け透けに本心を明かすアシモフ。彼が言うには民衆の大半が教会に対して反感を持っているが、国に匹敵する武力を持ったその力が怖くて言い成りになるしかないそうだ。


「そうか、わかった。さし当たってはこの街の教会は潰しても構わないな」


 いきなり物騒な話をし出すタクミの態度にギョッとするアシモフ。


「俺はAランクなんて冒険者を初めて見たが、それがAランクの者の考え方なのか?」


「いや、俺たちの考え方だ。これだけの騒ぎを起こした以上は教会を敵に回したも同然だろう。だったらこちらから先に仕掛けた方が話は早い」


 あっさりと言い切るタクミの顔を呆然と見るしかないアシモフだった。


  








 

読んでいただきありがとうございました。感想、評価、ブックマークお待ちしています。次回の投稿は木曜日の予定です。

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