102 騒乱
前回の投稿ではたくさんのアクセスとブックマークをありがとうございました。100話を超えてますます頑張っていきたいと思います。
さてお話の方は、魔女裁判を論破したタクミたちがさらに行動をエスカレートしていくようです。どのような騒動になることやら・・・・・・
タクミたちはギルドで得た情報を元に審問の館と呼ばれている教会の付属施設に向かっている。
ここには少なくとも3人以上の魔族との繋がりが有ると告発をされて尋問を受けている被害者が居るそうで、女子たちがぜひ助けようと強く主張したために全員で向かっている最中だ。
「まあタクミがあれだけの騒ぎを起こしたんだから、最後まで責任を取らないとね」
圭子がまるで他人事のようにペロッと自分の責任をタクミに転化する。一番初めに手を出したのは誰だったかという事をすっかり忘れているようだ。これは彼女の生まれ持った特殊スキル『記憶消去』の成せる業に違いない。自らに都合の悪い記憶はは見事に無かった事にしてしまう恐ろしいスキルだ。ただし、彼女の場合このスキルが最も発動しやすいのは授業中なので、毎回テストの時に地獄を見るのはお約束となっている。
タクミをはじめとする全員が圭子の言葉に呆れたものの『ああまたいつものやつだ』と諦めて誰も突っ込もうとしない。周囲に気を使いがちな紀絵などは『一体どうすれば圭子のように自由に生きられるのか』という解決不能な命題について真剣に考え込んでいる。
そうこうする内に彼らはギルドで教えてもらった館に近付くが、館が見える範囲全てが異様な空気に包まれている。街の住民が大挙して詰め掛けて暴動寸前の危うい空気がそこいら中に漂っているのだ。
彼らは手に手に武器になりそうな物を持って詰め掛けており、その只ならぬ様子にタクミたちは危険を感じた。だが、住民の反応はタクミの予想外のものだった。
「おい! アイゼルの英雄が来たぞ!」
住民の一人がタクミたちに気が付いて周囲に呼びかけると、彼らは歓喜の声で一行を迎える。今まで街中の者がでっち上げだと分かっていながら、それを証明する手段が無くて涙を呑んで教会の横暴に従ってきた。
そんな状況でタクミが住民の前で圧倒的な力を見せ付けた上、公然と教会の嘘を暴いたのだ。住民たちは今回の件でついに教会に対する反旗を翻すことを決意し、その切っ掛けを作ったタクミたちを『アイゼルの英雄』と呼んでいた。
タクミたちが進む道を空ける住民たち、彼らは再びタクミたちがここに現れるだろうと信じて集まっていた。その表情は苦難の末に現れた救世主を迎えるかのようだ。年老いた老婆などは聖女の姿をした空に向かって祈りを捧げている。
「皆さんの期待をひしひしと感じます」
いつもは呑気な春名も住民たちの真剣な表情を見て『これは只事ではない』と分かっている。
「この際だから一気に街の大掃除をするべき」
美智香はすでに徹底的に解決する道を選択している模様だ。実はゴブリンキングやオーガの死体を使って嘘を暴くというアイデアを考えたのは彼女だった。さすがこのパーティーの頭脳である。彼女の考えは見事に審問官のクリモフを罠に嵌めた。そもそも街に居る者が魔族に出会う機会など有る筈が無いという読みが的中した結果だった。
館の門が近付くにつれて住民たちの怒号がタクミたちの耳に届いてくる。彼らはつい先程亡くなった娘の棺を大勢で担ぎ上げて教会の無法を口々に非難していた。
「この嘘吐きどもめ! 今まで犠牲になった者たちを返せ!」
「よくもお母さんを殺したな!」
「娘を返してくれ!」
特に家族が犠牲になった者たちの大きな怨嗟の声がそこら中に巻き起こっている。だが、その声はタクミたちの存在を見た途端にピタリと止んだ。
門の前に立つタクミたち、彼らは住民に向かって振り返る。
「この中にまだ捕まっている者が居ると聞いた。まずはそちらをを助けるのが先決だ。その後で俺たちが中のやつ等を引き摺り出してくるからそれまでここで大人しく待っていろ」
タクミの言葉に街を揺るがす程の大きな歓声が上がる。住民たちが門の前で抗議して中に入り込めなかったのは、館を守備する教会騎士団が100人程でこちらに向けて槍を構えていたせいだった。いつその槍が自分に向けて振りかざされるか分からない緊迫した状況にも拘らず、彼らは勇気を振り絞ってこの場に立ち続けていた。
そこにタクミたちが現れて、被害者の救出と騎士を排除して悪党どもの拘束をかって出たのだ。住民たちが沸き返るのは無理もない。
「じゃあ行くわよ!」
やる気満々の圭子だが、彼女を美智香が引き止める。
「ここは私に任せて」
彼女はタッチパネルを展開すると一気に全体を殲滅するための魔法を発動しようとする。だが、騎士たちが動くのも早かった。魔法使いが正面に現れたと見るや、弓を引き絞り一斉に美智香目掛けて矢を放つ。
「カキン、カキン、キン」
だが美智香に殺到した矢は悉くが空が展開したシールドによって彼女に届く前に弾き落とされた。
「空、感謝する」
短いお礼の言葉の直後に美智香はタッチパネルに触れる。彼女が放つは広範囲殲滅魔法『ハリケーンカッター』だ。かつてラフィーヌのダンジョンでヒュドラの首を2本もぎ取りそうになった高威力の風属性最上級魔法を発動する。
たちまち騎士たちが立っていた広い庭は暴風の渦に巻き込まれて、人が木の葉のように渦の中を回りだす。秒速100メートルを超えるような猛烈な風の渦とその中で凶悪に研ぎ澄まされた真空の刃が騎士たちをミンチに変えていく。
暴風が収まった後は無残な肉の塊に成り果てた物がそこに落ちているだけで、動く物は見当たらなかった。
「ヘルファイアー」
さらに美智香は闇の炎を召喚してその肉片すらも焼き尽くす。炎に飲み込まれた元人間だった物はたちまち燃え尽きて灰になって消えていった。
美智香は普段感情を表に表すことが少なく、その喜怒哀楽が非常に分かりにくい。だが、彼女はあのような無残な死に方をした娘に対する非道な仕打ちに心の底から怒っていた。放っておくと教会ごと燃やし尽くしかねないほどその怒りは頂点に達していたのだ。その結果この場に居合わせた騎士たちは彼女の手によって皆殺しの憂き目に会う事となった。
だが、その光景を目撃した街の住民に騎士たちに対する同情は全く無い。彼らも教会の威光を背に今まで無法の限りを尽くしていたのだ。その名称は教会騎士団ではあっても、実態はギャングの集団に他ならなかった。
「よし、中に入るぞ」
タクミの声で一同は館への侵入を開始する。まだ館内に騎士の残党が隠れている可能性があるので、圭子とタクミを先頭にして後ろを美智香が守るいつもの戦闘形態だ。圭子の横にはファフニールを背に乗せたシロもくっついている。
正面の大きなドアには鍵が掛かっており、タクミは全員を一旦後ろに下がらせてブラスターガンを構える。
「ドカーン!」
大きな爆裂音とともにドアは跡形も無く消え去り圭子とシロがまず館内に入って様子を確かめるが、1階のフロアーは誰一人姿が無い。
「まずは捕まっている人を先に救出するぞ。おそらくは地下に居ると思われるから階段を探そう」
広いフロアーを隈なく探してみるが、上りの階段はあっても下りは見当たらない。
「きっと隠し階段とかになっているはず」
美智香の意見を元に怪しそうな箇所を探してみるが中々発見に至らない。
「こういう時はシロちゃんにお願いするのが一番です! シロちゃん、階段のある場所を探してください」
春名の頼みにシロは『キャン!』と一声吠えて周囲を嗅ぎ回る。あちこちをウロウロした挙句に上り階段の下で立ち止まった。
「シロちゃん、ここですか?」
春名が聞くとシロは『キャン』とまた一声吠える。尻尾を振っているところを見ると、相当自信があっておやつを貰えると思っているようだ。
全員で周辺を探していると空が少しだけ壁の色が違う箇所を発見する。彼女がスキャンすると壁の中に魔法陣が隠されており、そこに魔力を流す仕組みになっていると判明した。試しに彼女が壁に手を当てて魔力を流してみると、木の壁が上にスライドしてそこにポッカリと地下に降りる階段が現れた。
「行くわよ」
圭子を先頭に慎重に階段を下りる一行、そして地下に降り立った彼らが眼にしたのは・・・・・・
読んでいただきありがとうございました。次回はタクミたちが地下で何を発見したかというところからお話がスタートします。そして彼らが辿り着く先には・・・・・・
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