第14話 魔王様は狼はお好きですか?
商人に馬車に乗せてもらい、リカルダ達はマフィスの村についた。
時刻はもう夕方。空が朱色に染まっている。
「ここがマフィスの村…?」
ウェルミナは前の光景を息を飲んでいた。
「戦争に巻き込まれたというのは、本当の事だったんだな」
焼け焦げた家に、無残に荒らされた作物。
自然豊かな美しい村と言われていたのが、デマかと思うぐらいに変わり果てていた。
「そうですよ。どうしてかわからないけど、沢山の魔道士を連れた冒険者がこの村を襲ったんですよ」
ルアの目に怒りがこもり、手をグッと握る締める。
「村の皆を虐殺していってね」
「そうなの…大変だったわね」
「…ええ、僕は冒険者を…」
とルアが言いかけた時だった。
「お前達が村の魔物を追っ払ってくれる冒険者か?」
ガサッ…ガサッッ…
村の横の森から体格のいい50代後半と思われる男が、木材を担いで出てくる。
「ガルムさん、何処へ行ってたんですか?村を盗賊に荒らされたらどうするんですか?」
「ガッハハハ!盗賊なんてこんな僻地にこねぇよ」
ガルムはリカルダに目を向ける。
「よく来たな!俺の名前はガルムだ」
「私はウェルミナよ。そして、こっちがリカルダっていうの宜しくね」
ずっと口を閉じているリカルダの代わりに、ウェルミナは自己紹介をした。
オオオオオッッオーン!
と村から狼の遠吠えが聞こえて来る。
「この遠吠えは…バオウルフ!」
「バオウルフ!また湧きやがったか!」
遠吠えを聞いた途端、ガルムの表情は一変する。
「こうして山をおりてきて、村の家畜を襲うんです」
ルアの目線の先に目を黄色く輝かせた狼、バオウルフが居た。
バオウルフ…狼の姿の魔物。山から人里に降り家畜を襲うとして、被害が絶えない魔物だ。
「早速だが魔物退治をしてもらえないか?俺の力では無理なんだ」
ガウガウッ!ガァアウ!
無数のバオウルフが村の中に居座っている。
「任せなさい!リカルダ、行くわよ!」
「わかった!」
リカルダはバオウルフの群れへと突っ込む!
「神速の一撃!!」
神速の一撃…目に留まらない速さの攻撃で相手の急所を狙う技。必ず相手を仕留めるという。
ザシュン!シュン!シュン!
リカルダは目にも留まらぬ速さで、バオウルフの首元を斬っていく!
ガァウッッ!ガガアアァ…!
リカルダの攻撃により、バオウルフ達が倒れて行く!
「凄い…この鎧買って正解だったかもしれない」
リカルダは鎧の性能に実感する。
動きやすく軽い。前より早く動けている…
ガアアアアアッッ!
バオウルフが雄叫びを上げ、リカルダに襲いかかる!
「リカルダ!」
すかさずルアが杖を取り出し、魔法を唱える!
「空気の氷結!!」
キッーン!ピキッ…ピキピキッ…
バオウルフの体が氷に包まれていく!
空気の氷結…敵の周りの温度を急激に下げ、相手を氷結させる技。使える魔道士は数少ない。
やがて、バオウルフは凍ったまま動かなくなった。
「大丈夫ですか?冒険者様」
「ああ…」
ガウガウッッ!
お礼を言っている間もなく、バオウルフ達が襲いかかってくる!
「おっと…!」
ザシュッ!
リカルダはバオウルフの攻撃を避け、斬りつける!
「ふぅ…」
フウィィィッッ!
突然、背後から感じた事のない、凄まじいほど殺気が伝わってくる!
(っ…なんだ。この殺気は…)
リカルダはあまりの殺気に後ろに振り返り、構える!
「ん?どうしたのですか?冒険者様?」
後ろには澄まし顔のルア。
(なんだこいつ…)
さっきまで、殺気が嫌なほど伝わっていた。が、リカルダがルアの方を振り向くと殺気が嘘のように収まった。
(早く終わらせて…こいつから離れた方が良さそうだな)
「ウェルミナ!早く終わらせるぞ」
「ええ!アンタ。意外にせっかちなのね」
ウェルミナはくすんだ赤髪を激しく揺らしながら、バオウルフに接近する!
「氷針!」
キィィィッン!!
ウェルミナのレイピアに冷気が宿る!
「フフッ、これが最後よ!」
ウェルミナは不敵な笑みを浮かべ、バオウルフを斬りつける!
ガアッァッ…!ガッッァッ…
とバオウルフは凍っていき倒れていった。
「これで、終わりかしらね」
ウェルミナは周りを見回す。
辺りにはバオウルフの姿はもうない。
「一件落着だな」
リカルダはルアの様子を気にしながら、言った。
(…何も起きなかったな。しかし…)
「ありがとうございます!これで、村が…」
ルアは言葉を途中で止める。
「これで、村が?何よ?」
「…後ろです」
「っ!(こいつは…!)」
リカルダとルアは目を開き驚いている。
ボタッ…ボタッ…!
透明の液体が上から落ち、ウェルミナに落ちる。
「キャアッ!何これ、ベトベト…!」
ウェルミナは後ろを向く。
そこには白い毛並みをした巨大な狼が、ウェルミナを見て佇んでいた。
口から大量のよだれが流れ落ちる。
「ガアアアアァッッァァッッ!」
あまりの大きな咆哮にリカルダ達は耳を抑える!
「ウルフファング…!なんでここに!」
ウルフファング…ウルフの王とされる幻の大狼。凶暴、獰猛。凄まじい攻撃で冒険者を仕留めにかかってくるという。
ウルフファングと遭遇してしまったリカルダ、ウェルミナとルア。
一体、リカルダ達はどうなるのだろうか?
次回も見てくれるでしょうか?




