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閑話 レオ再び心を折る

この話は閑話になります。

本編ではありませんのでご了承ください。


光月村に置いてかれ、姫様の元に戻る為に稽古に励むレオの小話です。

【別視点】レオナルド・ファレル


 俺は今光月(こうづき)村に滞在していた。エルミナ王国の護衛騎士として姫様に(つか)えていたのに、姫様に置いて行かれてしまった。全てはあの特別稽古と言われる立ち合いで惨敗(ざんぱい)してしまったからだ。



   ***



 くそ! なぜ当たらない。このターラという少年は本当に何も見えていないのか?


 最初はレンどのに(あお)られて頭に血がのぼったせいで(練習用武器)が乱れていただけかと思っていた。しかし冷静になったとしても結果は変わらなかった。


 俺は最後までターラに攻撃を当てることが出来なかった。最後にはターラに持っていた武器を飛ばされて敗北した。これが戦場であったら俺は死んでいただろう。いや、ターラが賊で、姫様が狙われていたとしたら俺は姫様を守ることが出来なかっただろう。


 敗北、敗北、姫様、死、死···。



   ***



「うわぁああ!!」


 俺は夢から覚めた。あれからいつも同じ夢を見る。賊を倒すことが出来ず、相手の剣が姫様に届いてしまう夢を···。


 いつまでも落ち込んではいられない。ここで俺は強くなるんだ。


 俺は光月(こうづき)道場と呼ばれる場所に向かった。子供達がやっていることを真似しようと準備をしていたら、ギルティに止められた。


「レオ殿、あなたには別メニューが用意されている。心配しなくてもあなたは強くなる。その前に死ぬかもしれないが···」

「え?」

「ニィヒ」


 ギルティが気持ち悪い笑みを浮かべた。



   ***



 最初の稽古から異常だった。武器を持たずにコボルトの群れに放りこまれた。


「違う! 自分の筋力だけに頼って逃げるな! そんなんじゃすぐに体力がなくなってコボルトの(えさ)になっちまうぞ!」


 何を言ってるんだ。こっちは最小限の力を使って逃げている。意味が全く分からなかった。ギルティは『気』を(あつか)えるようになれと言うが説明はそれだけだった。


 何匹もいるコボルトに追い回されてあっという間に体力が無くなり、倒れ込んでしまった。


 俺はギルティに助けられてそのまま意識を失った。



   ***



 別の日も同じだった。


 今回は『気』の流れについて説明があった。何だか魔力をコントロールするのに似ているが、それとは別に『気』というものがあるらしい。


 この日も何も分からずコボルトに(もてあそ)ばれて気絶して終わった。



   ***



 日々の稽古に『気』の流れを感じる為の稽古が加わった。なんとなく魔力とは別のものを感じることが出来た。


 こんなもの言われなければ感じることなんてできる訳ない。


 空いている時は全てこの稽古に時間を(つい)やした。


 

   ***



 今日もコボルトの群れに放り込まれた。


 いつもは2時間も経たずに倒れていたが、朝から始めて今はお昼を回っている。あきらかに俺の動きに変化が生まれていた。ギルティが筋力に頼るなと言っていた意味がようやく分かってきた。


 もう一つ変わったことがある。コボルトの動きが分かりやすくなったという事だ。これが『気』を感じるという事だろうか。それにより、無駄に避ける事が無くなった。



   ***



 コボルトの群れに放り込まれる稽古が無くなった。一日中倒れることなくコボルトから逃げ続けていたら、ギルティが「次のステップだ」と言って、道場に連れていかれた。


 道場には一人の子供が待っていた。


「レオ殿、今度は目隠しをしてこの子の攻撃を躱せるようになろう」

「え?」


 相手の子供は目隠し無しだ。殴り放題だった。次の日俺は顔がパンパンに()れていた。



   ***



 道場での稽古が始まって数日が経った。今日は相手が3人に増えていた。


 一人相手なら(かわ)すことができるようになったからだ。当然のようにボコボコにされた。俺はまた数日顔を()らすことになった。



   ***



 今日の道場はにぎやかだった。多くの子供達が見学に来ていた。俺は相変わらず目隠しをして子供の相手をしていた。


「おい何やってんだよ! しっかり狙っていけって!」


 見学してる子供達からのやじがすごかった。しかし、それは俺に向けられているものではなかった。俺の相手をしている5人の子供に向けられていた。


 あれから俺はずっとこの稽古を続けていた。なぜターラという少年に負けたのか今なら分かる。子供達から(かす)かな『気』を感じることができる。


 あの時の俺はきっとこの子達以上に無意識(・・・)に『気』をたれ流していたのだろう。


 ギルティの「止め!」の合図で稽古が終了した。


「レオ殿、やっと『気』の流れが分かるようになりましたな」

「はい。ありがとうございます」


 俺は嬉しくなった。これで胸を張って姫様に会える。そんなことを一瞬でも思った俺がばかだった。


「よし! 基礎ができたところで、本番に行きますか!」

「···え?」


 ギルティは説明が足りなすぎる。この日から俺の稽古は過酷さを増していった。姫様に会うのはまだまだ先の話になりそうである。


 こうしてレオはまた心を折られた。

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