ルネと地竜

人の魔法使いと大気が形を練った霊獣が、主従の契約を結び千年。
遙か遠い昔の大戦に於いて、霊獣は”死なない人”に敗北し、世界は人のものとなった。
「"死なない人"は死に憧れて、いずれ契約のタカが弛むでしょう」
原初の祀り巫女の言葉の通り、不老不死が輪廻を外れて擬似死を選ぶと、二つの名をもつ子が顕れる。

地竜のロシュフォールは、小さい薬売りの女の子にルネと名前をつけた。ひっそりと暮らすルネの家を雷と雪崩と土砂で押し潰し、ペンペン草も生えない荒地にしたのは銀糸の髪の魔法使い。
だからルネは南へと歩き出したのだ。まるで一生分をギュッと縮めたような人と人以外との出会いは、繋がり、こんぐらがり、捩れ、纏まり、どっしりとした道になる。
「人のはじまりは誕生だけど、私のはじまりは発生だった」
急激な変化はまるで終末への伏線のようで、ルネと地竜は北の最果てへ、太古の契約を紐解くために旅立った。