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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第二章 ポティト農業祭
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ポティト農業祭前夜祭②

「あの機械の設計図を売ってくれ?いいぜ、金貨1000枚な。」


デービッドはエドウィンにあっさりと言った。

どうせ技術は出た瞬間から後発が練られるものだし、それにこのワイン製造機も元は伯爵の依頼のもの。

応用すべき技術やコスト面に見合わず採用するワイナリーも少ないだろうし、バスティはこの技術を伯爵家の臣民が作った(デービッドとしては非常に不本意だが)ものとして公表する、と言っていた。


オリジナルはロイ達が持つし、設計図も模写したものをバスティに渡している。

これからの世界のワイナリーの発展の為にも技術が練られていくならこんなもの幾らでも使えばいい。

デービッドはこの程度の考えだった。


エドウィンとの交渉の末に半額までまけてやり(ロビーの幼馴染の婚約者という事情も考慮したが)、契約書にサインをするデービッド。


『この技術はこの期日ののちに他言しないものとする。』


という一文が気になりはしたが、既に公開したものだしこれから他言しなければいいか、と思い黙っていた。

期日は農業祭のあと。特には問題のない事柄だ。


契約完了、とエドウィンとデービッドが握手を交わす。


「この契約金については農業祭の後に支払います。」

「だからあの期日か。」

「はい、大学生風情が金貨500枚なんて大金をポンと用意出来はしませんから。」

にこやかに語るエドウィン。


まだまだ問題点の多い設計図に大枚を叩くなんて問題点の解決に余程自信があるのだな、世の中には天才ってのがいるものだなぁ、と妙に感心するデービッドとソル。


「タンカートで服屋などのプロデュースもやっているのですよ。あとは飲食店など。」

「へぇ。」

意外としっかりした大学生だな、と思うデービッドだが…エドウィンの次の言葉に二の句を継げずに黙ってしまった。


「世の中口コミですから。

僕も多くの店を手掛けて働く人からお金を貰ってそのお金でお店を大きくし、お金を回しているんです。

エマは最初全く垢抜けない子でしたが商才がありまして近くに置いていましたが。でも僕も予想外でしたよ、まさか僕が結婚したいと思う程になるとは。」


デービッドさんにも都合のいい女を紹介しましょうか?と笑うエドウィンだが…デービッドは「丁重にお断りする。」とだけ言った。

トロイは目を糸のように細めそこから微動だにしない。

ソルは完全に興味を無くしたようでさっさとどこかに行ってしまった。

「俺は金さえ貰えたらそれでいいからよ。」

これ以上の話は無意味、とデービッドは立ち上がり…トロイもその後に続くのであった。


ーー


「同じ拝金主義者とはいえ、トロイとは大違いだな。」

胸糞悪い、とデービッドはソーセージを噛む。夕方になり肌寒くなってきたのでトロイに蜂蜜入りの暖かいレモネードを渡し、デービッドはホットワインだ。

「誰が拝金主義者でやすか。」

一緒にしてくれるな、とトロイは毛を逆立てる。かなり嫌だったようだ。


「虚業だよな…あいつのやろうとしてる事。」

「そうでやすね。我々とは最も縁遠いタイプでさぁ。」

決してそれがいけないわけではないし、お金稼ぎ結構。例えそれが実態のないものだとしても無からそれを作り上げていくのは錬金術みたいなものだ。


「ただよ、あいつの人生って何が残るんだろうな。」


オーウェンやケスラーのように人々を守る事。それは彼らが死しても功績が墓銘碑に刻まれる事だろう。

自分が死んだとしたら『よろず屋デービッド、幾許かの発明品を遺す。』であろうか。

意外と稀代の詐欺師とかだったりな、と笑うデービッドにトロイは微笑みながら言った。


「世間的な成功が必ずしも幸せに結びつくものではありやせんからね。

あっしらはあっしらの生きる道を両の足で踏み締めながら行けばええんでさぁ。」


その言葉にデービッドは「だなぁ。」と呟いてワイナリーのスペースに戻った。


ワイナリーのスペースにいたのはオーウェンとミッシェルに代わり、あのドルイド家の若い執事である。

「あれ?お前は…」

「ドルイド家の執事、ミロスラフです。」

最初にデービッドの補佐をやり、バスティと交代した執事だ。

そういや名前聞いたか?忘れていたな、と非礼を心の中で詫び、デービッドはミロスラフと握手をする。


「オーウェンとミッシェルのアホはどこに行ったんだ?」

「はい、御出でになられていると知られた伯爵様が、農業祭の勇者賞、聖女賞を決めて頂きたいと言われまして。」

その言葉にデービッドは複雑そうな顔をした。

「…あー。あいつらも大変だな。」

食べきれない程のご馳走を目の前に途方に暮れた二人の顔が思い浮かぶ。

…まぁバスティとアンがいるので、一口程度にまとめられているだろうが、大食いのオーウェンは兎も角ミッシェルはそんな食べたかな?と考えるデービッドだが、別にミッシェルが痛い目に遭うのは大歓迎だし知った事でない、と思い直した。


「しかしながら…執事長のバスティに聞きましたが、凄いものを作られましたね。」

「色んなものを逆手に取った結果だ。革命的な方法かと思ったが今にして思えば単なる廃品利用だった気もする。」

デービッドは苦く笑う。


ー革命とはロイが作った約束の白ワインや、ロビーが作った想いを込めたロゼワインの事を言うのだー


「俺もソルも小手先の技術を組み合わせていく方法で満足しちまった。技術屋の限界さ。餅は餅屋に限るぜ。」

「御謙遜を。皆言っていますよ。ワイン造りに革命を起こして十年以上時計を進めた、と。」

クスクス笑うミロスラフ。

「あと、デービッド様。伯爵様の命により、農業祭は私がデービッド様達をサポートさせて頂きます。」

「サポート、なあ。じゃがいも野郎は俺じゃなくてオーウェンとミッシェルに付け、と言ったんじゃねぇの?」

「おおっと。」

図星だったようで、ミロスラフは大仰に肩を竦めた。

「ま、堅いことは抜きだ。ミロスラフも一杯飲んで楽しみな。」

「恐れ入ります。」


テイスティングをし、少しだけワインを飲むミロスラフ。

その姿はどこまでも様になっている。


「(つーかよ、俺の周りって美男子多過ぎねぇ?)」


オーウェン、ロビーは凛々しいタイプのワイルド系だ。

ミロスラフ、エドウィンは中性的な容姿。

自分は十人並みか。

「赤毛ちゃん」と呼ばれる位童顔ではあるが…あまり嬉しくはない呼ばれ方である。


デービッドは母に似ており、顔の系統は完全に女顔だ。また体格も華奢であり女装してしまえばそれこそ女性と見紛う人間もいるだろう。

ミロスラフ、エドウィンのデービッドの第一印象はそれこそ可愛い少年と言ってよかった。が。

その容姿から話す言葉と内容のあまりのギャップ…それに評価は大幅に下降修正されたのであった。


暫くし…デービッドは腹部の違和感に気付いた。

頭はまだ入ると言っているが、胃袋はもう限界だと訴えかけている。


「なんだこりゃ…酔っ払ったか?」

デービッドはミロスラフに「もう休む」と言い、トロイとソルを連れてワイナリーの離れまで歩いていく。


腹部の膨満感はますます大きくなり、途中デービッドは何度か吐いた。

「大丈夫ですかい?」

トロイが懐紙を出してデービッドの口を拭く。

「おかしい、俺今日ミルクなんて飲んでねぇぞ…」

吐瀉物を見ると牛乳の匂いもする。

違和感はますます大きくなり…デービッドはワイナリーの離れの居住スペースで原因不明の膨満感と消化不良に一晩魘され続けた。

少し消化したと思ったら次が来る。

次が来たら胃の容量をオーバーし、逆流をする。

その繰り返し…。原因不明なだけにトロイとソルもどう対処して良いか分からず、ただ背中をさすったり胃薬を処方するのみだった。


翌朝訪ねてきたオーウェンとミッシェル。

ミッシェルに回復してもらうために昨日いきなり腹部の膨満感が出た、と症状を言うと…ミッシェルはバツが悪そうに笑った。


「ごめん。あれ私。」


「…は?」

ミッシェルは賞を決めるのに味を見なくては失礼だと思い、なんとか頑張って食べた。

が、胃はすぐに限界を迎える。それはオーウェンもだ。

しかし吐くには失礼だと考えたミッシェルはオーウェンと自分の胃袋に転送魔法をかけた。行き先はデービッドの胃の中。


…二人分の食糧が多量に胃に流し込まれるのならば納得…と思ったデービッドだが…


「ソル。オベロンから買ったリッチのメイスがあったな。」

「おう。」

ソルはデービッドにメイスを渡す。

嫌な予感にオーウェンとミッシェルは後退り…言い訳を始めた。


「で、デービッド。私もオーウェンも立場ってもんがあったし…ね?」

「流石に戻すのは失礼だったし、全ての味を見ないと評決なんて付けられないし…な?デービッド。許してくれ。」

デービッドはメイスを構える。


「言い訳なんていいんだよ。てめぇらこっちにケツ突き出して向けろ。それでチャラにしてやらぁ。」


何をされるか悟ったオーウェンは覚悟を決めて尻を突き出す。そこにデービッドの魂のフルスイングが炸裂した。


ばっちーん!


と炸裂音と共に

「いぎゃっ!!」

とオーウェンが短く叫び声を上げた。


その光景を見たミッシェルの目が絶望に染まる。

オーウェンが苦痛で叫び声を上げるなどほぼ無いと言っていい。破壊神討伐の時に利き腕を切り落とされた時ですら顔を歪めただけだったオーウェンが短くとはいえ叫び声を上げたのだ。

オーウェンは尻を押さえて蹲っている。ミッシェルの知る限り、こんな姿のオーウェンは記憶にない。


「さーて覚悟しな、ミッシェル。」

ぺしぺしとメイスを掌に当てるデービッド。逃げようとしたミッシェルをトロイとソルが抑える。


「すいやせんね、ミッシェル嬢。あっしらも大概には迷惑したので。」

「死にやせんぞ?ただ痛いだけじゃ。」


がっちりとトロイに腕を掴まれ、ソルが拘束魔法で動きを封じる。

突き出された尻…そしてそれを見下ろすのは凶悪なメイスを構え愉悦の光を瞳に灯すデービッド。


「いや…」


すう、とメイスを振り上げ…デービッドの身体が音を立てそうな位に捻られる。


「いやぁ…」


冒険中に何度も見た魔物に無理矢理犯される少女達の姿。その時の少女達の気分はこんなものだったのだろうか。

ミッシェルの目に涙が浮かぶ。


「嫌あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」


涙ながらに叫ぶミッシェルだが、デービッドは止まらない。怒りを…デービッドの魂を込めたフルスイング。それはミッシェルの尻を直撃し…


尻を粉砕されたとミッシェルが誤認する程の衝撃を与え。


その衝撃のベクトルはミッシェルの脳天を突き抜け。


同時にミッシェルの喉は空気と共に悲鳴を吐き出したのであった…。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


その声は遠く王都タンカートまで響き渡る程大きく悲痛なものであった。


「鬼…!悪魔…!」

しなを作って床にはらはらと涙を落とすミッシェル。まだダメージが回復しないのか尻を押さえて呻くオーウェン。

あぁスッキリした、と満足したデービッドに待っていたのは。


「てめぇ赤毛、聖女様と勇者様に何をしやがったぁー!」


「(えぇ〜…)」


殺気立ち離れに殺到してきたワイナリーの従業員の皆であった。


…わざと説明を遅らせたミッシェルが皆を止めるまでの間、デービッドは皆から壮絶なリンチを受け…

連日腫れた顔を晒す事になったのであった。


実はリッチのメイスの時点からこの発想はありました。


勇者、聖女、主人公の絡みは書いていて本当に楽しいです。

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