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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第一章 不死者の王
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不死王・リッチー

散文的になって読み辛い事をお詫びします。

『あいつはどこから間違っていたのだろう。』


『いや、きっと最初から全てだ。』


リッチはオーウェンの剣を弾く。

骨だけの肉体とは思えない力と俊敏さでオーウェンの肩をメイスで思い切り殴る。

「ぐっ!」

オーウェンは殴られながらもエクスカリバーもどきを横一文字に振り…リッチの背骨に傷をつけた。


『お前があいつを殺した』


『理由?それはお前が一番良く知っているはずだ。お前はあいつを愛してはいたが同時に深く疎んでいた』


オベロンがメイスを躱し衝撃魔法を放つ。しかし。

「こいつ、アンチマジックシェルを張っているな。」

リッチに魔法が届かない。オベロンにリッチはメイスを振りかぶるが、それは徒労に終わった。


『俺を殺すのか。いいだろう』


『俺は貴様の王国に永遠の仇を成す存在となろう

貴様の王国に永遠の呪いあれ』


ミッシェルに向かうリッチだがミッシェルは杖に魔力を込めて殴りつけてきた。

リッチはそれを難なく躱すとメイスを横薙ぎに振るう。

「きゃっ!」

杖で防いだミッシェルだが、壁まで弾き飛ばされる。


『おい見ろサターンの墓だ!』

『サターンっていい女だったよな。』

『まだ埋葬間もないし、まだ使えるんじゃねぇの?』

『よし、俺はお宝でお前はサターンな。』


『……』


『なんだぁこのボロ切れ纏った奴は。』


『救えない輩はどこにでもいるのだな。呪われろ、クズども。』


三対一ですらものともしないリッチ。

千年近く生きた者とのキャリアの差…。剣技では優位に立つオーウェンだが、分が悪いと見るとリッチはすぐに魔法を唱え逃げる。

オベロンとミッシェルはリッチのシェルを解呪しないと攻撃が通らない。

リッチは解呪をさせまいと後列を集中的に攻撃してくる。

更に厄介なのは毒や呪いを重複し使って来る事だ。

ミッシェルは解呪と解毒に追われて回復が間に合わない。

オベロンが解呪を担当し出し、オーウェンはミッシェルとオベロンの盾となり…場はオーウェンとリッチの一対一の様相を呈してきた。


「はああああ!」

「ぬぅん!」


メイスとエクスカリバーもどきがぶつかり合う。

「なんというエクスカリバーよ!これだけ打ち合ってびくともせぬとは!」

リッチの目が驚愕に揺れる。

「我が友が打ちしエクスカリバーを超えたエクスカリバーもどきだ。」

「もどきとな!貴様の友は随分正直な男のようだな!」

くはっ、と笑うリッチ。次に来るのはメイスの打撃だった。


剣戟を交わすうちにオーウェンはある違和感を感じていた。

リッチの攻撃は確かに苛烈ではあるが…どこか投げやりなものだ。

確かにリッチは自分を見て攻撃してきているが、全く違うものを見据えている気がする。


『貴様は…不死者となったのか!』

『ああ。発動条件があったがな。強い怨みと対価としての自らと近しいものの命。お前は俺の大切なものを全て奪った。

次はお前のものを奪おう。』


「戦いの最中に余裕のつもりか!」

オーウェンの叫びがリッチの回想を破る。

がきっ!と音がし、リッチのメイスが宙を舞い…地面へ落ちた。

その光景を見てリッチはどこか儚い表情を見せた。


待ち望んだ瞬間なのか、それともそうでないのか。リッチ自身にも判断はつかない。

オーウェンはこの隙にエクスカリバーもどきを納刀しワイトスレイヤーを抜いた。


トドメを刺しに来たオーウェンを見るリッチの目が見開く。

あの手に持つ剣はエクスカリバーもどきではない。あれは…


「ワイトスレイヤー…!」


躱す間もなくワイトスレイヤーはリッチの身体を貫いた。


その瞬間…眩い光が謁見の間を貫き、全てが浄化されていく。


ーー


「何で世の中にはこんな不均衡が平然とまかり通るのかしらね。」


黒髪の少女が少年と話している。


「私が王様なら、皆が幸せに生きられる世界にしたいけどな。」


「俺みたいな墓掘人にそれを言うかね?世の中そんな甘くねぇよ。」


「んー…でもさ、もしもってあるじゃない?もしそうなるならきっと素敵だなって。」


「そうなりゃいいな、そうなりゃ。」


けどそんな甘い世界じゃねぇよ。お前だと寝首かかれるのがオチだ。と少年は少女に笑いかける。

「えー?その時はリッチーが守ってくれないの?」

「時と場合によるな。」

「うっわ最悪。」


「だが一つ約束してやるよ。お前が志半ばで逝ってしまったら、その時は俺がお前のその馬鹿らしい夢を見続けてやる、ってな。」


リッチの記憶がオーウェン、ミッシェル、オベロンに流れ込む。

サターンとの交流は昔からあったようで、サターンの夫とも昔から面識があったようだ。


「これ以上の兵の犠牲を避ける為にも不死者の兵団を作りたい。」


「リッチー。それは許可出来ないわ。死者は死者であり、この世の理から外れた兵団を作るわけにはいかない。」


「だがサターン、事実我々の兵達は傷付き疲れ果てている。無許可でも俺はやらせてもらうぞ。」


「…衛兵。ネクロマンサーリッチーを捕らえて反省房に入れなさい。」


「サターン!」


「ごめんね、リッチー。最近あんまり気分良くないの。そんな中で不死者の兵団なんて話は聞きたくないわ。」


暫くして彼の耳に入ったのは、サターンの陣中での没の報であった。


国葬の中、サターンの遺体は死後10日は経つのに全く傷んでいなかった。

これは墓掘人であったリッチーには見覚えのあるものだった。

高濃度のヒ素の中毒。

それだ。

リッチーはサターンの夫に詰め寄るがのらりくらりとかわされる。その態度は毒殺が事実と何よりも示していた。


それからの彼の人生は地獄だった。


ネクロマンサーの力を使いサターンを蘇らせようとしたが、サターンの力はリッチー以上であり魔力が足りず、どうやってもうまくいかない。

「俺には無理なのか!」

何度も何度も失敗し、やがて彼は自らに絶望していく。


サターンの夫が継いで求心力が無くなり滅茶苦茶になろうとしている王国に。

サターンの夢を叶える資格すらない自分に。

そして守ろうとした民から尊厳を奪われようとするサターンを見て…


彼は全てに絶望した。


その絶望は狂気となり、不死兵団を作り出し…戦いに敗れたリッチーは自らを含む一族皆殺しとなった。

皮肉にも彼の起こした戦争が王国の絆を深めたが…

反乱の後に不死者として蘇ったリッチーは、王国の王族を一人残して皆殺しにした。


その生き残った王族とは…


「これは…」

「王女様にそっくりじゃない…」

オーウェンとミッシェルが呟く。


サターンの遠縁の少女だ。

サターンに生き写しといっていい少女を殺すのは忍びなかったのだろう。

王国は彼女の産んだ子供達が活躍し、群雄割拠の時代を見事に治め、少女は女王となり善政を敷き王国の安定の足掛かりを作った。

それを見届けたリッチーはサターンの墓の横で長い長い眠りにつく。


気の遠くなるような時間の中でリッチーが覚えていた事。

それは。

誰もが安心して暮らせる王国を建国する事。


そしてじわじわと版図を広げていき、現在に至る。


全ては。幼い頃の約束を守る為に。


ーー


光が収束し…ワイトスレイヤーの剣の鍔に髑髏の徽章が浮かぶ。

これはリッチを封じたという証だろう。


「……。」


絶対的な正義というものは無い。だが。オーウェンもミッシェルもオベロンも思った。

この哀しい王の為に出来る事というのも自分達には何もないのだ。

自分達はリッチを倒す為にリッチを見ていたが、サターンの言葉を伝えた後、リッチは倒しに来た自分達を見ていなかった。

つまりは、彼にとって自分達という存在などどうでもよくなったのだ。


サターン自身がリッチを否定してしまったから。


それでも正々堂々戦ったのは、礼を尽くしたという事か。

搦め手を使い、倒されたふりをして逃げ出す事も。

或いはこの洞窟自体を爆発させてオーウェン達を葬る事も。

彼はそうしようと思えば出来た事だし、どこか散漫となっていた攻撃がオーウェンをきちんと向いていたら、オーウェンを倒す事も夢ではなかった。それをオーウェンは知っている。


「…なぁ。ワイトスレイヤーをサターンの墓の横に捧げてから帰ろう。

ミッシェル。王へは偽証を頼んでいいか?」

「いいわね。構わないわ。」


ふわりとオベロンが飛び、リッチの愛用していたメイスを手に取る。

「これはソルに渡せば儲かりそうだ。」

…俗っぽい妖精に二人は肩をすくめるのであった。


サターンの墓の横にワイトスレイヤーを立て、近くにあった壁の岩盤をオーウェンが小さく破壊し、文字を掘った。


『義に殉じた不死王・リッチー ここに眠る。』


と。


そして。ミッシェルは墓場へと続く道を封印した。

…もう二度と哀しい不死者の王が現れぬように。


リッチの忠実な配下であるグールのモルグは勇者達の後ろ姿を見送り、封印される洞窟へ自らの意思で残った。


「不死王国の夢も潰えたか…。リッチ様、せめてこのモルグめが貴方様の永遠の眠りをお守り致しましょう。」


静寂の世界に響くのは彼が歩む音のみ。

不死者の棲む洞窟は誰にも知られぬ陵となり、そこに眠るは始まりの王と不死者の王。

その墓守を行うは不死王の忠実な部下。

そして…不死王を封じた一振りの剣であった。


ーー


…これはワイトスレイヤーの魔力が消えゆくリッチーに見せた幻かも知れない…

「これは…夢か?」

リッチーは不思議な空間にいた。

そこには魔物も妖精も人間も住んでいて、皆が助け合って生きている。

暫時呆然としていたリッチーに背後から声がかかる。


「おい、リッチー。何してんだよ。さっさと行くぞ。」


そこにいたのは、サターンの夫…アマル。

「アマル…?お前は俺が殺したはずじゃ…」

「あー?死んだに決まってんだろ。不死者なんかになりやがって、ったく。」

「ほーんと。待たせてくれるわね。」

その横にいるサターン。

「行くとはどこへ?というよりここは一体どこだ?俺は一体何を…」

リッチーの前に兵団が来る。

「お待ちしておりました、閣下。」

そこにいたのは、反乱の時に不死兵団として共に戦った者達と…そして不死王国で配下だった者達だ。

全員がリッチーの前に跪いて言葉を待つ。


「お前たちは…。しかし一体何処へ向かうんだ?」


「決まってんじゃない。天よ。でも私達って大罪人だから、意外と地獄かもね。」

サターンの言葉にリッチーは納得したと笑った。

「俺達だけで行こうとしたんだけどよ、不死兵団はお前が来るまで待つと頑として聞かなかったんだよな。」

アマルの笑顔も昔のように…。サターンが好いた彼の本来の笑顔だ。

リッチーは不死兵団を振り返ると宣言した。


「全軍に告ぐ!我等不死兵団は最期の旅路へ向かう!先導は『始まりの王』サターン陛下!そしてアマル王!

殿はこの私、リッチーが務める!」


応!


と声が響き…行軍のラッパが響き渡る。


いつ以来か、こんな晴れた空は。

空はこんなに青く広く澄み切ったものだったか。


リッチーはそう思い太陽の暖かさを感じながら目を閉じ…ゆっくりと自己を喪失していった…。


ーー


胸にじんわりとした哀しみを負いながら洞窟を出た三人が目にしたものは…


「うぅ〜ん…も、もう許してくれぇ…」


大地を覆い尽くさんばかりに巨大化したレギオンに結界を破られ、悪夢に苦しむデービッド達の姿であった。


ピクピクとミッシェルの形の良い眉が震え頬が引きつる。

それを見てびくり、と身を震わすレギオン。

リッチーの記憶を見てセンチメンタルな気分になっていたのが台無しも良いところだ。

しかもだ。いみじくも勇者と聖女の仲間がレギオン程度に負けるか?しかもこの巨大化したレギオンは何だ?お前ら一体レギオンに何をやった?

聞きたい事は山ほどあるが、まずは大掃除をしなくてはならない。とミッシェルは杖を手にする。

「…逃げろ、レギオン…」

オーウェンが小さく呟くも…全ては遅きに失した。


「さ っ さ と 消 え ろ あ ほ ん だ ら ぁ ー ッ !」


…チリ一つ残さずレギオンは消滅し…

悪夢から解放されたデービッド達は帰りの道中ミッシェルの肩を揉み、媚び諂う羽目になったのであった…。


サターン、リッチー、アマルは、デービッド、ミッシェル、オーウェンのもうひとつの姿だったのかも知れません。


ただ彼らはどう転んでもリッチーにしかならないでしょうが。


リッチーはサターンを心から愛していますが、家族愛に近い感覚であり異性としてはサターンを見ていません。

なので『愛に殉じた』でなく『義に殉じた』と墓銘碑に記されたとお思い下さい。


リッチーが最後に見たものに対しての解釈は読まれる方にお任せします。


次節で一章のエピローグです。

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