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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第一章 不死者の王
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レギオンと不死者の王

途中ちとシリアス入ります。

洞窟の入り口は…


大惨事。


の一言に尽きた。

黒焦げになった不死者達や爆発で影を残して消滅したゴーストの跡などの中にあるのは…

導管が剥き出しとなり祟り神のようになった『スチームくんMk-Ⅱ』の残骸。

ブスブスと煙を上げるスチームくんの惨状を見てデービッドとソルは涙を流す。

「スチームくん…痛かっただろう、辛かっただろう。」

「犠牲は無駄にはせんからの…。必ず蒸気車を完成させてみせるのが供養じゃ。」

「アンタら…。」


あまりの惨状にミッシェルが祈りを捧げ魂を天へと向かわせる。


「良かったわね、相当怨まれているわよアンタ。」

祈りと共に不死者達の怨嗟の声を聞いたミッシェルは顔をしかめデービッドに声を掛ける。

「科学の進歩に犠牲はつきものだ。諸君らの尊い犠牲を今日中は忘れない。」

虚空に向かい敬礼をするデービッド、ソル、トロイ。

「…皆めっちゃ怒ってる。知らないわよ、死霊を怒らせると怖いんだからね?」

ミッシェルの言葉にデービッドが「けっ、盆踊りでもすんのか?」と殊更揶揄し「死人は死人らしく大人しくしてろバーカ。」と挑発した。


「あーあ。」


ミッシェルは首を振るとオーウェンとオベロンの手を引き中へと進んだ。

「おい、ミッシェルどうした?」

「私達が用のあるのはリッチだからね。」


死霊達が渦となる。

「なんだありゃ?」

「さぁ…なんか嫌な感じはしやすね。」

「対死霊の装備をしておくか。トロイ、キヨミツブレードからコーティングをした刀に持ち替えるんじゃ。」

「へい。」

身構えるデービッド達。次の瞬間。


『この怨み晴らさでおくべきか!』


死霊達は塊となり実体化していく。

悪霊・レギオン。

恨みの顔をいくつも持つ醜悪なそれは一気にデービッド達へと襲いかかった。


ぎゃー!

と、デービッド達の叫び声が洞窟内に響く。

「レギオンには用はないわ。」

冷たく響くミッシェルの声。


「うらめしやー」

「ぎゃあああああああ!」


キャーキャーと叫び声を上げながら洞窟内外を走り回るデービッド達とレギオン。

…壮絶な追いかけっこは終わりそうにない…。


ーー


リッチの不死王国と名付けた洞窟内。ここは入っているだけで気が滅入るような所であった。

罠は無い。しかし。様々な墓が区画毎に綺麗に並び、忌日と死因が刻まれているのだ。

「生前名トロルキング 王国歴992年 子の月13日 勇者オーウェンのシールドバッシュにて頭部を痛打し死亡…」

「生前名 ゴブリン 王国歴991年 亥の月27日 聖女ミッシェルを襲おうとし杖で頭部を叩き潰され死亡…」

「生前名 オーガ 王国歴992年 丑の月14日 従者デービッドと対決し尻に槍を突き刺され死亡…」


古いものとなると、伝承の時代のものがある。

始まりの王・サターンに関係するものもあり、そこはもうギャグとしか思えない内容であった。


「生前名 ゴ・クドー 王国歴1年辰の月5日 サターンの魔法を受け消滅」

「生前名 チン・ピラー 王国歴1年辰の月5日 サターンの魔法を受け消滅」


死亡でなく消滅という物騒な単語。そして。


「生前名 サターン 王国歴13年卯の月4日 夫により毒殺」


「…はい?サターンに夫?」

ミッシェルが首を傾げる。オーウェンもオベロンもだ。

「サターンは女性だったのか?」

「いや、そんな記述はどこにもない。」

首を傾げる三人だが…そこに声が響く。


『誰ですか、もう…。ふぁ〜…。』


ゆらりとサターンの墓とされている箇所に陽炎が立ち揺れる。

そして陽炎の中から現れたのは…

緑なす黒髪も艶やかな女性だった。


『…あーよく寝ました…。久々に快眠ですね。』

ぐいー、と背伸びをする女性。グラマラスな肢体などではない。一見するとそれは細身の男性のように見える。

だが声が違う。声は女性のそれだ。

「あなたは…」

「まさか…」

「始まりの王・サターン…?」

『あれ?私を知っているんですか?』

目を丸くする女性に…三人は本日で一番の驚愕の叫びを上げたのであった。


ーー


「始まりの王・サターンがまさか女性だったとは。」

オーウェンがサターンを見る。

『別に隠していたつもりもなかったんですがね。当時は男性上位の社会でしたし女王に従うというのは後世の歴史家が納得しなかったんじゃないですか?』

サターンは当たり前の事のように言う。

王国史ではサターンは跡継ぎを残さずに死に、サターンの直系の子孫は絶えている。そこもひょっとしたら嘘なのかも知れない、と思うミッシェルだが、そこを聞くのはあまりに不躾だ。


『ところで皆さんに質問があるのですが…。ここは一体どこなんですか?

私は死に、その後に埋葬されたはず。仮に一国の王がこのような洞窟内に埋葬される事はあり得ません。』


サターンの問いにオベロンが答える。

「王国の外れの洞窟内だ。我々は不死者の王…リッチを討伐しに来た。」

『リッチ…。』

サターンは首をひねる。

『ひょっとしたら私に不死者の軍団を作るように進言してきたネクロマンサーかも知れません。

彼の名前はリッチー。私の仲間です。』

サターンはそう言うと眉を伏せる。

『彼には彼の正義があり、生きる者の為に死者の力を借りて何が悪いか、と言っていましたね。

しかし私は反対でした。死者は安寧の地にて眠りにつくもの。死後に生者に縛られるべきでない、と。』

サターンは、優しい男でしたし不死兵団も兵の損失を嫌ったという事でしょう、彼の言っている事は本当によく分かりますがね、と注釈をつけた。


『…もしその不死者の王が私の知るネクロマンサーだとしたら、彼に伝えて下さい。

時計の針は決して戻らないし止まりもしない、と。』


サターンは大欠伸をすると、墓に戻ろうとする。

「始まりの王・サターン。貴女がここに出てきた理由は何だったのですか?」

ミッシェルの言葉にサターンは寝惚け眼で言った。


『そこの勇者と貴女と入り口で騒いでいる方が私の力を受け継いでいるからですよ。その力に呼ばれただけです。

それじゃあおやすみなさい…。』


サターンが消え…オベロンは納得したように言った。

「サターンの伝承に残る神の力とは、破壊、創造、再生の力なのか。」

三神一体の力を個人が持つ。

サターンの夫がサターンを恐れて殺したという理由がよく理解出来る。


『全ての生殺与奪が一人に握られる』


これ程恐ろしいものはない。

サターンの治世時は問題のなかった王国の治安もサターン没後に荒れ果てたという事も納得出来るというものだ。

恐怖というタガの外れた人間がどのような行動に出るかというのは、彼らはよく知っていた。

サターン没後、暫く群雄割拠の時代となり乱世の覇者となった現代の王国…

サターンの血筋という王が国を治めサターンは祀られたが、サターンという人は実は孤独な王であったのではないか、と考えてしまう二人だった。


ーー


謁見の間…。死臭に満ち満ちた部屋にオーウェンとミッシェルとオベロンが入る。

「よく来たな、勇者。聖女。妖精王よ。」

リッチは骨だけと化した身体をオーウェン達に向ける。

「他にも客人がいたと思うのだが…。彼らはどうした?あの鉄塊の御礼を是が非でもして差し上げたいのだが。」

問うリッチにオーウェン達は言葉を返せなかった。


まさか、爆殺されたあんたの部下があいつを怨んでレギオンとなり、そのレギオンと追いかけっこしています…。


などとはとても言えない。


「…まぁ良い。貴様らを殺した後にゆっくりと返礼するとしようか。」

リッチは愛用のメイスを構える。

「不死者の王・リッチよ。始める前に一つ問うてよろしゅうございますか。」

「良かろう。」

ミッシェルは杖を足下に置いた。話の間は害を加えない。その証明のためだ。

いらざる事を、と思うリッチだが、その心だけは受け取る事にした。


「貴方は始まりの王・サターンに仕えたネクロマンサーでしたか?」


ミッシェルの質問にリッチは暫し考えた。が、やがて決意したように口を開く。

「いかにも。」

何処からそれを知ったかは知らない。だが、知られている以上隠すのも滑稽な話だ。

「だがそれを知りどうする?

我がサターンの配下だからといって不死王国の建立を許すわけでもあるまい。」

「ええ。勿論です。」

ミッシェルはリッチを向く。


「私達はサターンから貴方へ伝言を預かりました。」


その言葉にリッチは微かに眉をひそめた。

「ほう…。死者を冒涜するな、と?」

くっくっ、と笑い、如何にもあの女の言いそうな事だ。と思った。そして…

「その甘さがサターン自身の命取りになったのに、あいつはいつになれば気付くのだ。」

と吐き捨てた。が、ミッシェルの言葉は全く別の言葉だった。


「いえ。サターンは貴方がサターンの知るネクロマンサーだった時には

『時計の針は決して戻りはしないし、止まりもしない。』

と伝えて欲しい、と。」


リッチは、ふむ。と考える。

「…如何にもあの女の言いそうな事だな。我とて時計の針を戻したいわけでもなければ止めたいわけでもない。

我の望みは不死者達の安寧の世界を作る事。故に奴の見解と我は違う。」

「では問う。ならば貴様は何故サターンの亡骸を墓からこの洞窟へと移送させた?」

「サターン亡き後に権力争いが出た事は知っているだろう?

中にはサターンの亡骸を犯そうとする者も、サターンの財宝を狙う盗賊もいた。

我はサターンの配下であった故にそれを見るのが忍びなく止むを得ずここに移送した。」

オベロンの問いにリッチは淀みなく答えた。

「…それはワイトスレイヤーの存在を恐れたからではないか?」

「ワイトスレイヤーは恐るべき武具であっても、使う者次第では無用の長物だ。」

オーウェンの言葉にリッチはすぐに言葉を返す。

話しながら遠見でサターンの墓を確認するも荒らされた形跡もなければ棺に安置されているワイトスレイヤーも無事だ。


「不死者の王よ。これは妖精王としての勧告だ。今すぐ降伏し地中深くでサターンの墓を守りながら眠れ。」

「異な事を。それが出来ぬという事は百も承知であろう?それ故に討伐に来た貴様らが降伏勧告だと?笑わせる。」


リッチの瘴気が強くなる。


最早戦うしかない。と三人は覚悟を決める。が…

リッチの心というものをミッシェルとオベロンは痛い位に理解していた。


リッチはサターンに惚れ込んでいた。

男女の懸想でなく一人の人間として心酔し、一緒に王国の夢を見たのだろう。

サターンはリッチについて優しい男だと言いそれ以上の言及はしなかったが、リッチの夢とする不死者の王国は…


『サターンが夢見た王国の姿。』

『誰もが安心して暮らせる世界。』


そう考えたらしっくり来たのだ。


『時計の針は決して止まらない』

自ら時間を止めたリッチと、時間が進む事が無くなったサターン。


『戻りもしない』

サターンが夢見た王国は最早砂上の楼閣。それを作ったとしてもサターンが現実に見る事は無い。


「…愛する者を護りたい気持ち。我にも分かる。

その魂、出来れば救ってやりたいと思った…。

だが。最早戦うしかないようだな…。」


オベロンは悲痛な顔をする。


「不死者の王・リッチ。

我々がサターンに代わり、貴方の魂を永遠の安らぎへと導きましょう。」


ミッシェルも悲痛な表情をし、杖を手に取る。

オーウェンはエクスカリバーもどきを抜き、言った。


「リッチ。貴方の夢の為に泣く人間が大勢いる。

俺は人々を守る盾、そして人々を救う剣。

オーウェン、参る!」


リッチはマントを翻し叫んだ。


「来るがいい!我が首級を上げ見事勝利を掴んで見せよ!」


ーー


その頃ー


「うらめしや…おのれ…」


スチームくんMk-Ⅱの荷室に置いてあったミッシェルの結界の宝具を使い、デービッド達は結界を張った。

外には超巨大なレギオン…。

「ちっくしょー…こいつらどうしたものかな。」

「ミッシェル嬢やオーウェン殿みたいに消しとばす方法は我々にはありやせんからねぇ。」

「結界もあと12時間は持つじゃろ。その間に考えるとするかの。」

ソルは地中から粘土を出し土鍋を作る。

「そうだな、腹が減っては戦が出来ぬと言うし。」

デービッドは携帯用の薪を使い火を起こし土鍋の周りを固める。

「牛鍋でいいでやすかね?」

トロイはリュックの中から水と壊血病防止の野菜を取り出し、近くにいた不死者になって間もない牛のアニマルゾンビを捌く。

二時間後、そこには牛のスケルトンが出来上がり…お腹いっぱいになったデービッド達は焚き火を囲んで横になったのであった。

その顔は幸せ一杯という表情であり、先の不安など何も考えていない脳天気にも程がある表情だ。


自分達はこんな奴らに再度殺された上に苦しみを味わっているのか?

そう考えれば考えるだけレギオンの怨嗟は深く強くなる。


「おのれえええええええええええ!」


レギオンが益々巨大化していく。

知らず知らずのうちにレギオンを煽りに煽るデービッド達だった…。


主役そっちのけで話が進んでいますが…


主人公チームの強さは

オーウェン>オベロン≧ミッシェル>>>>ソル>>>>トロイ≧デービッド

位の差があります。なので決戦にいても足手纏いにしかならないでしょう(笑)


王国の歴史については機会があればきちんと書こうかと。

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