天才とは
二人は、オリヴァー先生に対し怒りを見せているが、俺がこの状況で怒りをぶつけたいのはノエルとリーアムだ。
「ノエル、リーアム。お前達は、なんでこんなことを?」
この問いに対し、二人は邪悪な笑みを見せた。
「決まってんだろ。お前達が、腹立たしいんだよ。最初から鼻に付く奴だと思っていたが、期末試験で負けてから復讐の機会を探してたんだよ」
そんなくだらない事で、ここまでするのか。
「ちょうど良い協力者だったんだよ、この子達はね。だから、僕の仲間に加えたの」
オリヴァー先生が、笑いながら言うとノエル達も再び笑みを浮かべた。
「もういい。君達を、犯罪者とみなし、処罰する」
クロム先輩は、指輪に手を当てた。そして、深呼吸をすると続けた。
「大魔法 フレア・イリュージョン」
魔法を唱え、先輩は右手を前に出すと一気に、炎が炸裂した。
「ポイズン・ウェーブ」
オリヴァー先生も水魔法で対抗し、場は一気に戦場と化した。
「目つきの悪い一年二人は、俺が相手をする。君達は、オリヴァー先生を頼む」
そう言って、戦闘モードに入ったクロム先輩はノエル達の方へと走って行った。
「行くぞ! フロイ!」
アストは張り切っており、指を鳴らしていた。
「ああ。勝つぞ。アスト」
俺は、中級魔法 フーム・バースを唱えた。この魔法は、フライ・フーンが進化した魔法だ。難度は上がるが、威力は上がる。
「上級魔法 ヘル・バースト」
一方、相手のオリヴァー先生は攻撃魔法の上位であるヘル・バーストを撃ってきた。
まずい。この場合だと、相手の魔法の方が上手だ。押し負ける。
その時、横にいたアストが魔法を放った。
「中級魔法 テオ・ダイナ」
俺の飛ばした魔法と合わさり、混ざり合って一つになった。
そして、合成魔法 テーム・ダイバースなった。
これなら、押し合える。勝てるかもしれない。
俺は、魔法の衝突を眺めていた。しかし、現実はあまくない。
この間にも、オリヴァー先生は新たな魔法の詠唱をしていた。
「ミル・ハーオ」
詠唱の掛け声を聞き、対応を取ろうとした俺だが、遅すぎた。この魔法は、速度が売りの魔法だ。
避けれない。
その時、アストが俺の腹に飛び込み近くの壁際に吹き飛ばした。そのおかげで、魔法を回避できた。
しかし、俺は吹き飛ばされた衝撃で壁に体を打ち付けた。
「フロイ。ぼっさとしてんなよ。死ぬぞ」
「初級魔法 エル・ハーオ」
細長い魔力の塊が放たれる。しかし、魔力の塊は狙いの相手に届く前に粉々となって消滅した。
「こんなものか? 君達は俺を相手取るには、実力不足だ。出直しな」
太陽に照らされ、眩しく光るのはクロム・ラインハートだった。
「ザン・ハーオ」
詠唱をしたクロムは、右手を前にかざした。すると、魔法は正面にいたリーアムに避ける間もなく直撃し、彼の右肩に傷を負わした。
「エル・ハーオをこの状況で一から詠唱してちゃ、駄目でしょ。最低でも、今見たく省略詠唱で撃たなくちゃ。速度重視とは言えその技当たんないよ」
リーアムは、悔しそうに歯を噛んだ。
「説教垂れる余裕無くしてやるよ!」
後ろから、ノエルの放った魔法が襲い掛かる。
「フレイム・バリア」
突如、クロムの足元から炎が立ち、壁となった。
そして、ノエル放った魔法は業火に焼かれ消えた。
「くそ! 化け物め」
クロムはその言葉を聞き、笑いながら答えた。
「君達みたいな悪党に比べれば、ましだな」
「そろそろ、終わりにしよう」
クロムは、右手に宿す指輪に魔力を込めた。そして、詠唱を始める。
「大魔法 フレイム・バースト」
全てを焼きつくす為に生まれたとも思える炎が、リーアムに襲い来る。
「初級魔法 ワール・フロ―」
空中に浮かび上がり、炎を回避するために後退しようとするリーアム。
しかし、クロムの放った業火は止まることを知らず、迫ってくる。
「いやだ。死にたくない」
恐怖のあまり空中で体制を崩したリーアムは、地面に頭を強く叩きつけ倒れた。
それを確認したクロムは、リーアムに当たる前に、炎の勢いを殺し鎮火させた。
「チッ こいつは、いつも使えね。無能だ」
ノエルは、ため息をついて頭を掻きむしった。
「仕方ねえ。あれを使うか」
そう言って、ポケットから紙を取り出すと掌に乗せて、詠唱を始めた。
「まずいな。魔法陣を体に刻もうとしている。フロイ君達が作った物か?」
警戒を強め、相手を睨むクロム。
「食らいやがれ。終末の矢」
殺したいほど憎い相手であるクロムに狙いを定め、矢を放ったノエル。
この魔法陣は、オリヴァーから譲り受けたもので防御魔法を貫通するという能力がある。
しかし、クロムは能力を理解していない。つまり、矢で貫かれることは確定していた。あいつなら、避けずに魔法で受けると確信していた。
「ゼロ・インパクト」
矢で貫かれるはずだった。
矢がクロムの放った魔法と衝突した瞬間、跡形も無く消滅した。
この矢は、防御魔法を貫通し並大抵の魔法では受けきれないはずだ……
「どういう事だ? なぜ、矢が効かない?」
「答え合わせをするなら、俺の天武によって矢が打ち消されたって回答かな」
「天武だと……」
天武とは、神から人間に授けられる天使の武器。それを、人々は天武と呼んだ。
ひとつの個性。
「俺の天武は、魔力を打ち消す。意外と、便利なものだぜ」
「さて、戦いもお開きにしよう。これで終わりだ」
ノエルの元に歩み寄るクロム。ノエルは、恐怖し失禁してしまうほどだった。
「上級魔法 スリープ・フリーズ」
クロムの手から放たれた魔力の粒が、ノエルに降りかかる。そして、地面に座り込んでいた彼をそのまま凍らせた。
「二人は、大丈夫だろうか? こいつらを拘束したら、向かわなくては」




