第28話 死
「......」
「お前を殺す」
「そうだね。そろそろ決着をつける時期かもしれないね」
ミカエル様がそう言うのと同時に、ルシファーと戦闘を繰り広げ始め、光の速度で繰り広げられている攻防を目で追うことが精一杯であった。
(なんなんだよあれは......)
はっきり言って次元が違う。先程までルシファーが俺に向かって攻撃を仕掛けて来たのが遊びだったのではないかと思ってしまうほどだ。でも、今ミカエル様とルシファーが戦っているのは、空中戦。
天使族が真骨頂を出すのは空中であることから、ここまで高度な戦いができているんだなとも納得できる。
(さて......)
「二人とも俺たちも仕事をしようか」
「えぇ」
「うん」
二人にも言ったが、まずは目の前の敵だ。ミカエル様が来てくれて状況が少し楽になったが、危険な状況には変わらない。目の前にいる悪魔も結局は、俺一人では勝てる相手ではない。すると、クロエが
「そう言えば、メイソンはなんでこいつらに略奪を使わないの?」
「使わなかったわけじゃなくて、使えなかったんだ」
「え?」
「いや、厳密に言えば使える状況が無かっただね」
そう、略奪を使うとどうしても一瞬の隙ができてしまう。だが、悪魔やルシファーと戦っていた際、そんな隙を見せてしまったら確実に俺かクロエのどちらかが戦闘不能になっていた可能性が高い。
「そう。今戦っても使えない?」
「そうだね。それに加えて略奪を使った対価が少ない」
「え、それってどう言う意味?」
「さっきまでの戦闘で悪魔が魔法を使った場面が一度もなかったことから、魔法とか技では無く、己の力のみで戦っている可能性が高いってこと。だから高いが少ない」
一回目に略奪を使うなら、こんなことを考えなくてもよかったけど、すでに一度手を合わせている。相手から盗めそうなものが無いのに略奪をする意味がない。
まずもって、略奪は万能なわけではない。使用する相手が魔法などを持っていなかったら弱体化はしないし、何なら略奪を使っている隙をつかれる可能性だってある。
「そうね。じゃあ今まで通りに戦いましょう」
「あぁ」
すぐさまルーナにアイコンタクトを送ると、すぐさま俺たちに守護を張ってくれる。そして、俺とクロエは同時に悪魔へ攻め込む。すると、悪魔が俺たちに向かって槍で攻撃を仕掛けて来たので、俺が全て受け流す。
そして俺が、魔剣を使ってうまく槍を上空に飛ばした時、クロエが悪魔の首元へ飛びついて斬り落とした。
(え? こんな簡単に倒せたけど......)
流石に驚きを隠すことが出来なかった。こんなあっさりと目の前にいる悪魔が倒せるなんて思いもしなかった。
「や、やったのよね?」
「た、多分......」
目の前には悪魔の死体がある。それなのに心がざわついてしょうがない。
(何なんだこれは......?)
でも、気のせいだろうと思い込んで、悪魔に背を向けて歩き始めると小さな音が聞こえた。
(何の音だ?)
すぐさま後ろを振り向くと、クロエの真後ろに悪魔が立っており、槍で突き刺そうとしていた。
「クロエ!!」
「え?」
俺はクロエの手を引っ張り、俺と場所を交換した。そしてその次には、俺の腹部に槍が突き刺さっていた。
「「い、いやぁぁぁぁぁ」」
二人の叫び声が聞こえる中、悪魔が槍を抜こうとしたのを見逃さず、魔剣に今使える最大火力の魔法、炎星を組み合わせて痕跡が残らないほど焼き尽くした。
(よし、これで悪魔は倒せたはず......)
腹部に刺さっている槍を引き抜くと、血が大量に出てきて意識が徐々に遠のいていく。その時、ルーナとクロエが駆けつけてきて
「ルーちゃん!!」
「わかってる」
ルーナが泣きながら光回復を施してくれる。だが、それ以上に血の出て行く量が多かった。
数分間ルーナが俺に光回復を施してくれているが、一向に治る気配がなく、すでに目の前も見えなくなってきていた。
「ル、ルーナ。もういい」
「い、いや!!」
「ルーちゃんお願い......」
先程よりも魔力を多く注ぎ込んでくれているのが分かるが、それでも治る気配は無く、徐々にルーナも顔色が青ざめて来ていた。
「ルーナ......。もう辞めろ」
「......」
ルーナは無言で俺に光回復を使う。
(もう無理だ)
自分が治らないことを一番わかっている。もうルーナの魔法じゃ治ることは無いということが。
二人の方を向くと、クロエとルーナは泣きながら何かを問いかけているのがわかるが、聞こえない。
(あぁ。俺ってここで死ぬのか)
なんでもっと素直にルーナとクロエに接してこなかったんだろう。でも、最後は自分自身で決めたことを成し遂げ慣れてよかった。
【英雄になるより、大切な人を守ることが最優先】
死ぬのは怖い。でも、見ず知らずの人を助けて死ぬより、今一番大切だと思っている人たちを助けて死ぬならまだいいじゃないか。
そう思いながら目をつぶると、うっすらと声が聞こえたけどそれを聞き取ることが出来なかった。




