§97 お昼のおかずは自作です
結構食料品の買い物に時間をかけたつもりだった。
でも女子三人の買い物は全然進んでいなかった。
そんな訳で、
「先に宿に帰って色々用意しておくから」
という口実でさっさとこの場から逃げる。
口実というか事実だ。
このまま買い物を待っていると夕方になってしまいそうだ。
そうしたら折角釣った魚を味見する機会が無くなってしまう。
ご飯代わりのおにぎりを人数分食堂で買った後、クーラーボックス代わりの木箱を持って借りた部屋へ。
部屋はトイレと流しがついている十二畳くらいの広さの個室。
床はフローリングの上にゴザが敷いてある。
寝る時はこの上に布団を敷く方式だ。
さて、まずは痛みが早そうなカツオとサバからやるとするか。
父とその友達の英才教育?により、俺は幼稚園年長の頃から包丁を持って魚を捌くことを教えられた。
勿論母親には内緒でだ。
キャンプだの夜釣りだのしながら大人二人と魚を捌いたり料理したりした訳だ。
釣れないときは市場や直売所で買った丸のままの魚を捌いたりしてまで。
おかげで普通の魚なら多少大きくても捌ける自信がある。
まずは簡単なサバから。
頭を落とし内臓を取って三枚に下ろす。
内臓とか骨とか頭とかは別にして取っておく。
明日釣りをする時にこれをミンチにして寄せ餌にするから。
サバはこの新鮮さなら刺身でいけるな。
しめ鯖の方が好きなんだけれど慣れないとあの美味しさはわからないだろう。
半分は刺身で半分は揚げればいいかな。
サバを二匹捌いた次はソウダカツオ。
新鮮なうちならこいつも刺身で充分に旨い。
大きい分面倒だけれど基本は同じ。
ただ背中とかにあるウロコだけは包丁でそいでおく。
そして三枚下ろしにするところまでは全く同じだ。
更に腹骨をすいて、皮を剥いでと。
「何か慣れているな」
「父が趣味でこういう事を良くやっていたからさ」
そんな訳で刺身のサクをつくり、ついでに漬けもつくり、更にソウダカツオの半身を魔法で表面だけ熱を通してタタキにしたりして。
漬けのタレはちょっと味醂を入れた後、沸騰させて冷やして生姜とネギと刻んだしその葉と煎りゴマを入れ、ちょっとゴマ油も混ぜる。
この辺は父の友達がよくやっていたレシピ。
このちょっとだけ甘さがあるのがまた旨いのだ。
それらを氷箱で冷やして一段落。
次は鍋に油を入れ、サバを揚げる作業だ。
しその葉をサバの身にくっつけてその上に軽く衣をつけて揚げる。
何せアン先輩が温度調節等の魔法を自在に使えるから非常にやりやすい。
そんな訳で刺身、タタキ、漬け、揚げ物が完成。
とりあえず先にいただこうか考えていたところ、ちょうど女性陣が帰ってきた。
「何かいい匂いがしている」
「遅いのだ。一通り料理が出来てしまったのだ」
「つまりちょうどいいという事ですわね」
「お腹空いた」
そんな訳でご飯になる。
刺身のサクやタタキを改めて適当な大きさに切って盛り付ける。
漬けは丼にタレといれたまま。
揚げ物も取り敢えずはそのままで出してみた。
一応半分に切ったスダチも置いてある。
これを搾ってかけても美味しい筈だ。
ごはんはおにぎりを一人一個。
この国のおにぎりは大きいサイズなのでおかずの量を考えればこれで充分。
そんな訳でお昼ご飯開始だ。
それぞれ目当てのものを食べ始める。
ちなみに俺はソウダカツオの漬けから。
うん、出来は上々。
「生のお魚って美味しいんだね」
「私もこんなに一気に食べたのは初めてですわ」
「おにぎりのご飯に合う」
それぞれ刺身なりタタキなり色々つまんでいるが総じて好評な様子。
おかげで結構一杯あったおかずがあっという間に空になった。




