§80 便利な乗り物だけれども
夜更けまで本を読みあさったので寝不足気味。
それでもちゃんと一の鐘で起きられるのはもう習慣としか言い様が無い。
そういう意味ではこの国は健康的だな、色々と。
普通は灯りが無いので夜更かしが出来ないから。
そんなこんなで食堂でちょっと遅めに朝食をかっ込んで実験室へ。
既に俺以外の全員が揃っていた。
「今日は遅いね、何かあったの?」
「いや、ちょっとこの本を読んでいたら遅くなった」
「その本が無くて作業が始まれなかったのだ」
「悪い、ちょっと気になる事が色々あったんでさ」
「まあいいのだ。それでは修理スタートなのだ」
そんな感じで活動が始まる。
アン先輩の修理魔法とは本来は別種の魔法である、
○ 密閉されていたり手が届かない場所でも作業が可能な空間操作魔法
○ 物質の状態を変化させるための組成変化魔法と熱魔法
○ 微小な操作もパワフルな操作も可能な力魔法
等いくつかの魔法の組み合わせ。
なお本人は組み合わせているという意識は全く無いそうだ。
あくまでも修理加工魔法だという認識。
今も金属パイプの中に隠された魔方陣の欠損部分を内部に飛び散った染料とかを用いて描き直している。
そして。
「直った」
メルがそう告げた。
「他に問題がある場所は」
「無い。これで完成」
「なら早速試してみましょう」
そんな訳で外へと持ち出す。
かなり重いのでラインマインとアン先輩二人メインに俺とヘラで支える感じで。
自転車を試したのと同じ学校内の歩道へ乗り物を置く。
形としてはスクーターのカバーと前後タイヤを外したような感じ。
ハンドルは回らず固定タイプでブレーキレバーが無い。
そんな感じだ。
メルはすっと座席に腰掛け、ハンドルを握る。
「大丈夫、動く」
ふっと乗り物が浮いた。
地上から二十指位の高さで止まる。
そのまま前にすっと進んでいって、百腕位先でターンして帰ってきた。
「魔力の消費はかなり低くて楽。多分アルでも乗れる」
「その前に私も乗ってみるのだ」
アン先輩がまたがる。
ふっとさっきより高く浮いた。
そして暴力的なまでの加速で前進!
派手にターンして戻ってくる。
「これは楽しいのだ。癖になりそうなのだ」
アルも挑戦。
メルの時より少し穏やかな動きだけれど、ほぼ同様に動いて戻って来た。
「これはいい。長距離移動しても疲れない」
「これは使えそうだね。私は魔力が無いから無理だけれど」
ラインマインの台詞に皆頷く。
「でもどうする。これを量産出来れば面白いけれど、頼む先をどうするか。荷馬車に頼むには大きすぎる」
アルの台詞。
確かにそうだなと皆で考える。
「カイドーだと近いですけれど、魔法物品を生産出来る委託先は無いと思いますわ」
「シルダか、せめてアムまで持って行きたい。でも遠すぎる。高速船も本来は運賃や荷受料金が高い」
どうすればいいかなと思った時だ。




