§55 図書館で本探し
この国の図書館は出版社と書店を兼ねた感じの存在だ。
自力で出版も印刷もして、他の出版社(≒図書館)が出版した本も含めて展示して、閲覧もさせるし販売もする。
カウフォードの学園図書館は入場無料だったがここは有料。
まあ正銅貨一枚だから高くはないけれど。
早速四人で中に入ってみる。
中はカウフォードの学園図書館と比べるとかなり雑多という感じ。
漫画や小説等の月刊誌まである。
「私はこの辺を漁るのだ」
漫画方面へとアン先輩は消えて行った。
ちなみにアン先輩は漫画好き。
それも男性と男性が愛し合うタイプの話が大好きだ。
特におっさん対おっさんが好みだと前に聞いた。
この世界には性に対する禁忌があまり無い。
せいぜい近親相姦を三代続けてとかいうのはやめましょう程度だ。
あと性行為は初潮を過ぎてからというのもあったかな。
その代わり性犯罪には無茶苦茶厳しい。
何せ魔法で犯行状況を確認出来るので言い逃れが効かない。
結果的には治安がいい。
でも時々、この国は本当にこれでいいのかわからなくなる。
あ、大分思考がズレてしまった。
今は持ち帰る資料の本選びだった。
面倒なので早速例のメモを取り出す。
『分類五三一、図解魔法技術逆引集Ⅰ~Ⅲ』。
場所と本の名前が端的に書いてあった。
ストレートかつドンピシャだな。
分類番号を頼りに本棚を探す。
本棚を見てすぐわかった。
何せ同じ本がずらりと一列ずつ並んでいる。
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲそれぞれで本棚一列ずつ。
これは売れ線という奴だな。
念の為見本と書かれている一冊を手に取ってみてみる。
最初の方で、明かりを灯すなんてのはどうだ。
『明かりを灯す』を索引で調べると、照明魔法のページを参照となっていた。
そんな訳で照明魔法のページへ。
うむ、なかなか詳しくてわかりやすいぞ。
見ると必要な魔力から助けとなる魔道具、魔方陣等がきっちり図解で載っている。
正直ベストセラーでかつお勧めというところが気にくわない。
でも確かに目的通りの本だな。
念の為同じ分野の別の本を手に取ってみて確認。
うん、やはりベストセラーだけの事がある。
何冊か類書を見たけれど一番わかりやすい。
そんな訳でⅠからⅢまでの三冊を取ってカゴへ。
他に必要な本はないかな。
メモにはないけれど何か気になるようなものは。
そんな事をやっているとアルと出会った。
「何か面白そうな本を見つけたか?」
「どれも興味深いけれど、中級学校生には高いな」
その台詞でふと気づく。
そう言えば俺、何も考えずに三冊本を入れたけれどこれいくらなんだろう。
値段は本の裏に書かれている。
さっと見て見ると、どれも一冊正銀貨二枚。
三冊で六万円だ。
気づかなかったけれどこんなに高かったのか。
「いや、値段に気づかなかったな」
「まあホクトは稼いでいるからそれくらいは大丈夫だろ」
まあそうだけれどさ。
「でもこの旅行の費用は会費で出すんだから、遠慮せず買った方がいいと思うぞ。女子も服を揃えていたしさ」




