§42 真夏日中の遠足?
サカイはカイドーに行く途中にある河川港。
カウフォードからの距離は十二離くらい。
七月二日周二、十の鐘が鳴った直後。
俺達は学校の門を出発した。
この時間を出発時間にしたのは、歩く速さその他を考えてだ。
アルの体力と速度、そして余裕も考えた上でのこと。
でも出る前から実は誤算に気づいていた。
今は夏の真っ盛り。
日本の夏程暑くは無いけれど、それでも気温は三十度近いだろう。
そんな中道路を歩くのはかなり暑くて辛い。
しかもそれぞれ着替えその他荷物を背負っている。
一応最新型ザックに長距離用サンダルで武装してはいる。
でも暑いのはどうしようもない。
本日の服装は私服、この辺で盛夏によく着られているヴァザという服。
具体的に言うと膝下くらいまである長いTシャツみたいなものだ。
袴状のズボンで腰を締めないだけ涼しいのだがこれでも暑い。
あと足下がスースーして微妙に頼りない。
下が褌的な下着一枚だしさ。
スカートとはこんな感じなのだろうか。
この国でスカートは見た事が無いけれど。
アルは厳しい顔で一歩一歩歩いている。
ペースは今のところ一定。
ただ口数は少なくなりつつある。
それなりにしんどい模様。
「次の距離標はまだか」
「まだまだじゃないかな」
ラインマインにあっさりそう言われたアルはちょっと苦い顔。
道を歩く目安として五離ごとに立てられている距離標がある。
カウフォードを出て割と早く一つめの距離標を通過した。
でも次の距離標にはなかなか到着しない。
まあ五離という事は五キロ。
今の歩き方だと時速四キロ程度なので、そう簡単には着かないよな。
俺や強靱種のラインマインとアン先輩あたりはまだ余裕はある。
ただヘラは結構しんどそう。
そしてアルとメルは共にかなりきつそうだ。
メルは体力はあるのだけれど暑さに弱いと自分で言っていたし。
「あ、水場よ」
視力がいいラインマインが真っ先に見つけた。
水場は木製のポンプがついた井戸を中心に、休憩所が整備された場所だ。
旅行者や馬車馬の為に道路と共に国が整備している。
更に売店があり、おにぎりとかフルーツとかを販売していたりする。
まあ道の駅のようなものだ。
東屋では何人もの人がそれぞれ休んでいた。
一足先に飛んでいったアン先輩がザックを下ろし頭から水を被る。
「うん、冷たいのだ。生き返るのだ」
俺達ものろのろと近づいて東屋の空いているところへ。
「休憩しようか。まだ時間はあるし」
ラインマインがそう言って、アルがはあはあしつつ口を開く。
「頼む」
やっぱりしんどそうだ。
それぞれのザックを下ろして休憩に入る。
「待っていて。いつもの作るから」
今回もあの乳性飲料も持ってきている。
軽食代わりのクッキーと共にラインマインの家から買って郵送して貰ったのだ。
ラインマインが自分の特大アタックザックから二つの水筒を取り出す。
一つの水筒に水を入れ、もう一つの水筒からあの白い液体を入れた。
そして水筒に蓋をして何回か振る。
「こんなものかな、はいアル」
アルはへたばりきった状態で水筒を受け取り口に運んだ。
一気に飲んではあっと息をつく。
「これを飲むと生き返るな」
横でメルがごくごくと一気飲み中。
「ごめん、無くなった」
「大丈夫、今回は三本送って貰ったし」
ラインマインは戻って来た水筒に新たに水と濃縮した乳性飲料を注いだ。




